すでに死んでるけど、タタリ神ちゃんに好かれすぎてやばい

シャナルア

第1話 「すき」

屍の山を築いた。


この世に正義は無く、あるのは邪悪のみ


空は赤く濁り


命はただはて、亡骸が積み重なる


それでも自分という存在だけがただ浮かんでいた。


魂だ


霊となって体は屍の山の一つだった。


いくさだった


ただの農民だったのに


桑から槍を持たされて


戦えと命じられ


闇雲に突っ込んで


無意味にしんだ


未練


そう、未練だ






を残して死んだ


お嫁さんがほしかった


でもこんなふうに死ぬなら、いなくて良かったなとも思う


ふよふよ


ふよふよ


散歩していると、


なにかに出会う


美しい


そう思った


ただし


この世のものではない、とすぐに気づいた。


黒髪の長髪


黒の衣をまとい


おしろいのように白い肌


生気は感じられない


美しい幻想のような透き通る何か


ウツシヨ(現世)に、このような者はいない


カクリヨ(あの世)の者であることは明白だ


自分の方を見た


「すき」


すき?


確かにそういった。


そして、両の手を俺に向けて差し出した。


「これ、金」


その手から、溢れんばかりの小判が出てくる


見たことが無い大金


目がくらみそうだ


「すき、うけとって」


うけとれない


これは君の金だ


なにせ俺は死んでいる


無意味だ


「ん? ん?」


女は首をかしげる


「なにがほしい?」


おれに尋ねた


その前に聞きたい


君は何者だ?


「わたし?」


そう


きみだ


「かみさま」


神様?


「たたりのかみさま」


祟り


タタリ神さま


「なにがほしい?」


また尋ねた


おれは答えあぐねた。


「わかった」


タタリ神はいった。


「えらい人、の、いのち」


彼女は、笑顔だ


「このたたかいをはじめた、ひと」


くっく、と笑う


「きみ、ころした、ひと」


やめてくれ


おれはそういった


うらんじゃいるが、君に殺してほしくない


そう訴えかけた


「……」


少し黙ると、


タタリ神はこういった。


「やっぱり、すき」


頬をあからめて


ええ……


正直、現世でもここまで女性から好かれたことは無かった。


それが、おれとタタリちゃんとの出会いだった。








――――――――


評価よろ!!!






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る