第17話 くだらない理由の正体

 ヤンのゲーム没収が作戦成功のためになると言ったら、くだらないと視線で訴えてきたマティルド。俺もそう思うからこっちを見ないで……どちらかと言うと、俺もゲームを常人よりする方だと思う。でもそんなことなど、ヤンといたら吹っ飛んだ……あいつは、ある意味ゲームに巣食う魔人だ……今でも思い出したら身震いするよ……


「しょうもないと思うのは俺にも理解できる。でも、女の子のマティルドには分からない……」

「どうしてよー、男女差別を訴えるわー」


 マティルドが可愛く頬っぺたを膨らましてちょい怒状態になる。マティルドは知らないけど、彼女には非公式だっがファンクラブがあるんだよね。これだけで、マティルドファンは絶叫するほど喜ぶだろう...彼らにとっては女神同然だからな、少しだけ共感できるよ。なんで俺が知っているかって?知り合いに一人めっちゃマティルド、

 マティルド言ってたやつがいたけど、無視していたから今になるまで思い出せなかったんだよ。


「いやこれは男女差別とかではなく、経験の話だよ」

「どういうこと?」


 こてっと首を傾けて聞いてくるマティルド。


「マティルドは女の子だから、男の子のヤンの家に泊まることはなかっただろう?年頃の男女が一つ屋根の下は色々と駄目だからね」

「確かに、この年齢だと異性の家にお泊りに行くなんてできないわよね。でもそこのどこに問題が?」

「俺は……ヤンの家でことがある……」

「……ごめん、それが今の話とどういう関係性があるか私にはわからないわ。淵君の顔を見たら何か深刻そうなのは分かるけど…」


 そう深刻な事態に直面してしまった……ヤン以外だったらこうはならなk……よく考えてみたら、他の皆もヤンみたいに曲者だったわ。全員同じくらい個性が強いからね……

 思い出して欲しい…俺はさっき、ヤンはゲームを巣食う魔人と称した…それは彼があまりにもゲームをやっているから故に言ったのだ。そして、今の作戦に必要な物はヤンの類まれた知識。そして、その知識を発揮させるためには睡眠が必須。さらにヤンを眠らせるためにはゲームという盾を破らなくてはいけない。

 そのための没収だが―――――


「……さっき…ヤンは睡眠の時間を削ってゲームをしていると言った……だから、普段学校では陽キャクラスのコミュ力を発揮しないから俺と同じくらい言葉を発しているだろう……だから、彼を寝かせつけるために作戦を立てている……」

「えぇ、そこまでは分かるわ。でもゲームを没収するところのどこが危険なのかが分からないの」

「ヤンは………ゲーム中毒を通り越して――――――ゲーム依存症に陥っている。そして一度だけ、彼の家に泊まった時、二日連続徹夜でゲームをやっていて―――」

「待って待って。そもそも二日も徹夜を続けてゲームをした貴方達がおかしいわ」


 適切なツッコミが入ってくる。確かに俺もそれ自体おかしいと思う。でも、深夜テンションとか、友達の家へのお泊りで、親不在っていう最高のシチュエーションに燃えて思わず二徹してしまったのだ……今なら思う、そもそもあいつの家に泊まりに行ったことが過ちであったことを……


「そこはいいとして、問題はその後だ。流石に二徹は衛生面的にヤバいと思って、ヤンをゲームから注意を逸らそうと思って、彼が持っているコントローラーを取り上げると――――――我を失った獣の様に、俺に飛び掛かってきて全力でコントローラーを取り返しに来たんだ」

「ッ!!まさか、ヤン君のゲームを没収することが危険というのは――――――

「そう、お察しの通りヤンからゲームを没収する、もしくはゲームのない場所に閉じ込めると、まるで禁断症状を起こしたかのように襲ってくるんだ」


 その凶暴性の第一被害者の俺が言うんだ、あいつの家にはもう二度と泊まらない……命がいくつあっても生き残れない。ヤンの家に泊まりに行かせる奴の検討はもうついている。そして――――


「彼のゲーム機器に関してだが、ヤンの家に泊まってもらう人員に盗んでくるようお願いして、外で待っている俺がそれを回収、そして二日間預かっているというわけだ。それにある意味ゲームを人質に取っているようなものだから、より協力的なってくれるだろう」


 幼馴染にあまりこういう手を使いたくないが、いい機会だ。ヤンのゲーム依存症も少しはマシになるかもしれないし……決して諦めていないよ?本当に思っているからね。


「纏めるとこうなるね。まず、俺が一人ヤンの家に泊まらせてゲーム機器を俺に預ける。その人は二日間、ヤンを二日間普通の生活をするよう見張らなくてはいけない。次に、ゲームを人質に持っている+マティルドのお願いで協力するよう頼む。もう、ヤンが断ることはないだろうけど……そして、最後に三人で集まって作戦決行だ」

「なんか、ヤン君を強制的に協力させようとしているのは、私の気のせい?」

「気のせいだよ、ヤンは自分の意志で手伝ってくれるだろうから、これは強制的ではなく半強制的に手伝ってもらうんだ」


 内容はあまり変わらないけどね。俺とヤンの付き合いさ(現在はあまり良くない)、広い心で許してくれるだろう。


「自分で半強制的って言っちゃてるし……」


 頭を抱えながら呆れるのはいいけど、マティルドも反対していないからこれは共犯だよ?

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