第15話 友達と友達になろう

 お店に長くいたため、周りに他のお客さんはいないが、だからと言って絶叫していいわけでもない。

 むしろ一日で友達になるのがそんなに珍しいかい?考えてみたらわかる。友達全員が別のクラスにいたとして自分は独りぼっち、そういう状況下で必要となるのは話し相手。そして、そこでターゲットとするのは自分の横にいる生徒。そして、その子と仲良くなればクラス内でぼっちは免れる。よって、一日で友達を作ることは可能である。相手を不快にすることがなければ、信頼関係は自ずとついてくる……もう、マティルドが些細なことで驚くのは慣れたから、スルーという選択肢を取らせてもらおう。


「そうだ一日だ。一日だったらすぐにアシル君攻略に取り掛かれるだろう?」

「アシル君の攻略ッ!!……え、えぇそっちの方が好都合よね。でも本当に一日でアシル君の友達と友好関係を築けるの?だって淵君、私たちそもそもアシル君の友達は誰かすらも知らないのに」


 アシル君の攻略と言ったから照れたマティルドが、半信半疑っていう顔で聞いてくる。そう、俺とマティルドは、アシル君の友達が女の子か男の子すらも知らない。でも、ある程度のケースは想定できるから可能なはず。もし違ったらその場で考えればいいし、他にも手札はある……後、使いたくないけど最終手段が。


「大丈夫だよ。友達になる日に知るから、それで偶然を装って近づく」

「その日にって、すごいわね……淵君が友達になるの?」

「まっさかー!俺は高校では君とほとんど喋ったことないし、今日相談されるまで名前すら知らなかったんだよ?君がいきなり彼氏無しで俺に近づいてきたら、変な勘違いをされちゃうよ」

「そうよね、じゃあどうやって友達になるの?」


 今日はてな顔をした人物は今日で二番目ですね。断言できるね、イケメン男子のはてな顔より美少女のはてな顔の方がご利益があると。惚れないけどね。友達になる方法ね、マティルドではなく俺でもないと来たら第三者の介入が必須だ。そこで第三者は一体だれか?


「協力を求める、俺の知っている人物の中で君と接点がある人か、逆にアシル君の友達と接点がある人を」

「失礼だと思うけれど、淵君って友達あんまりいなかったわよね?その少ない人脈からどうやって私とアシル君のパイプ役を務めてくれるの?」


 ズケズケと言ってくれるねー。友達があんまりいないのではなく、マティルドが友達多いの。だから決して少ないわけではなく、普通なのである……多分。でも一つ間違っていることがある。確かに俺は、高校では友達の数がマティルドに比べたらあまりいない。だが、人脈については話が違う。何度も、ジェントルメイデンとして活動している俺は、依頼人すべての連絡先を持っている。そして、その中に必ずマティルドかアシル君のどちらかと接点を持っている人がいると踏んでいる。そして、俺の推測が正しければ今回はマティルドと接点のある人物を俺は知っているはず。


「最初にマティルドと会った時、俺が誰かを見つけるために、ジェントルメイデンには噂があるって言っていたよね」

「確かに言ったわね、でもそれが今話している内容とどういう関係が」

「関係はないが、その後にマティルドは俺を特定する時に、頭がよかったからと、同時に『それだけではないけどね』って言ったよね?」


 驚いている顔は肯定していると同等だよ。マティルドはもうちょっと感情を表に出さないよう注意しなくてはいけないな。っていうか、バレたらまずいことでもあるのか?


「俺の推測が正しければ、君の友人の中の一人からヒントか答えを渡されたんじゃない?」

「ッ!!……本当に全部お見通しね。淵君が超能力者と言われても今なら納得できそうだわ」

「納得するな。そんで、誰かを言わないのはあれか?俺が最初にジェントルメイデンは誰かを言うなって言ったからか?」

「………もう、隠してもそうでバレるから白状するわ。そうよ、貴方について語ったのは私の親友なの。でも、本名ではなくヒントをくれたの。だからお願い、彼女を罰さないで」


 ちょっと待ってほしい。俺がいつ、ジェントルメイデンの正体を言ったら罰するって言ったっけ?まぁ、大勢の人たちがいきなり押し寄せてきたら流石にするけど、今のところ直積的被害は受けていないから別に何もしないのに……そんな風に思っているのに、美少女に許しを請われると罪悪感が芽生えてくる。


「別に何もしないよ。でも、ジェントルメイデンに関しての情報を漏らしたからグレーゾーンだね。名前を教えて、罰として彼女に今回のパイプ役を担ってもらう」

「ッ!!ありがとう、淵君」

「感謝されることはした覚えがないね。それより、マティルドの親友の名前は?」

「素直じゃないんだから……私に、ジェントルメイデンの情報を教えてくれた親友の名前は――――――


 数多くの恋愛相談を受けてきたから、推測で誰が誰と関係を持っているかなんて一々覚えられない。そもそも、俺は友達の数は聞くけど、友達が誰かは聞かないし。いったい誰なんだろう?忘れていたらスマホの連絡先一覧を見なくてはいけないし。


「—――――――ヤン・リー君よ」

「ここで、お前が出てくるんかーーーーーーい!!!」


 全く予想外の奴が出てきた。まさかのヤンの名前がここで聞けるとは……予想外過ぎて全力でツッコんでしまったよ、あんなに店内では静かにって言っていたのに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る