第4話 ジェントルメイデン

 無事15分遅れの授業を受け今俺たち一年D組がいるのは自習室(フランスには自習する場所は決められている)、この200人位は入れそうな教室(?)の最後列にいた。


「やっぱ自習ってやることないな~」

「ヴァル気持ちは分かるがせめてマンガをもってこればよかったんじゃねーの?」

「学校の許可が下りているけど生徒を監視している先生達の前で読める勇者ではないのでパス~」

「なんじゃそりゃ」


 許可が下りているなら遠慮なく読めばいいのに、どうせ取られないんだし。


「あはは顔に出てるぜ淵。要はお前みたいに先生から変な目で見られたくないってことさ」

「はっ?俺がいつ変な目で見られたんだよ?」

「いや…今お前の手元にある本を見てから言ってみろ」


 サーシャが言ってる本は、今俺が読んでいるのはかの有名なあのス〇イムに転生してしまった物語のラノベである。


「それのどこが変なんだ?」

「いや変なところしかないと思うぞー」

「俺っちも同意だね~」

「僕もだね」

「えぇ…そこまで言うか?」

「「「そこまで言う必要があるほどだよ!!」」」

「おいそこの三人うるさいぞ!」

「「「すみませんでした」」」


 そりゃあんな大声でツッコんだら注意されるはわな。かわいそうに(w)…


「プッ…ドンマイお前ら」

「「「(誰のせいだと思ってんだ!)」」」


 彼らの射殺するような眼差しが俺に向けられたため、言いたいことがすぐにわかった。でも怒られたのは絶対に俺のせいじゃないから勘違いはしないでおくれ君たち。


「ハァ…このままじゃ一生気付かないと思うから言うが、ぶっちゃけると変な目で見られて注目を集める理由は二つだ。お前の本の表紙が刺激的すぎることと日本語を使っているからだ」

「……あー確かに」

「いや確かにじゃないと思うんだけど、っていうか気づくな遅くない淵~」

「二コラですらそれぐらいのことは気付くというのに…」

「おいヴァル俺をそんな憐れむような目で見るな」

「いや実際憐れんでるんだよ」

「っていうか現実的に考えろよ、下着姿の女子が蜂蜜食ってる表紙があったら誰だって白い目で見られるだろ」

「…これ一応服なんだけど…」

「そんなことを聞いてんじゃない!」


 なんでラノベを読んでたらこんな話になったんだろう。っていうか表紙がちょっと変なのは認めるけどそこまで言うかな?う~ん世の中は理不尽だ。


「っていうか最悪変態にすら見えるんじゃない?」

「マジで?!」

「お前本当警戒心ゼロだな…」

「グッ…何も言い返せません」

「あはは淵の馬鹿~」


 変態は言い過ぎだと思う…とまあ、こんな感じに自習の授業を過ごしていたらあっという間に予鈴が鳴った。というわけで残り一時間でこの監獄から解放だぜー(実際監獄みたいな建物)。

 そして最後の授業――――――


「俺は信じてたぜ淵…お前は最後に絶対にやらかす男だとw」

「サーシャ黙れ」

「あははははははは、はっひっひオエッ…腹筋が崩壊するw」

「ヴァ…ヴァル…俺っち…でも…笑って…ないんだからw」

「二コラちょっと鏡で自分の顔を見てみろ、笑いをこらえて顔がトマトになってるぞ」


 ――――睡魔に負けて先生の目の前で爆睡しました。そして現在幼馴染にからかわれています。


「今回は百パーセント俺に非があるから罰を受けることについてはしょうがない」

「先生も耐えられなかっただろうね、自分の授業で聞いていない生徒がいると。しかも目の前で寝てるときたら大噴火だよ」

「俺っち達は噴火の被害を受けないために真からちょっと離れたしね~」


 これが幼馴染という…多分全世界に存在している幼馴染って絶対腐れ縁。


「ついでに僕は淵がどういう被害を受けるか頭の中で考えてた」

「ヴァル…そんなことせんでええわ」

「俺もだな」

「俺っちも~」

「全員かよ?!えっ、何君らなんかテレパシーらしいものでもできるの?!」

「「「いやいや幼馴染特有の能力だからお前ともできる」」」

「えぇぇ、俺もできるの?!っていうか能力って言ってる!」


 拝啓、お父様、お母様、友達に化け物が数人いました。


「ついでに俺は先生が淵の名前を全力で叫ぶと思ってた」

「俺っちはチョークを投げて起こすかと」

「僕は放置して授業を取らせないかと」


 普通ならそこらへんだよな。俺もそう思う。だがあの人はの先生、そして我々が授業を受けていたのは化学室。そう俺を起こすためにあの人は――――


「まさか隣の部屋から変な色をした液体が入っている瓶を調合し始めるとは思わなかったよ」

「その後まるで愉悦に浸かっているような笑顔で淵に近づいて」

「そのまま出来上がったものを淵にぶっかけるとは…」

「体に害があるものではなかったけど、なんかめちゃくちゃ寒くなって思わず奇声を上げてしまったよ」


 多分ハッカ油に似たものをその場で調合して俺にぶっかけたのだ。科学の授業で寝ないように努力しよう…


「あの人絶対にサイコ」

「サーシャそれは言い過ぎ。っていうか普通に寝た俺が悪い」

「まぁね」

「そだね~」

「ドンマイ淵。っと校門についたな、んじゃまた明日な」

「おうまた明日」

「俺っち達も行くよ~じゃあね淵~」

「それじゃ淵また明日ね」

「じゃあな二コラ、ヴァルまた明日」


 二コラとヴァル以外は別方向なのでここでお別れ。サーシャは父親の車で帰って、ほかの二人はトラムウェイ(近距離特化の都市移動用列車、一キロ以下で一回停止)で帰るし俺は徒歩で全員帰宅手段はバラバラ。イヤホンを出して音楽を聴きながら帰ろう。


「あの!」

「………………」


 なんか女子が人を呼んでるな。


「そこのあなた!」

「…………………………」


 可哀そうに、こんなに呼ばれてるのに気づかれないなんて。


「そこの黒髪の人!」

「……………………………………」


 おい黒髪の人、呼ばれてるぞー。


「ッ!!ジェントルメイデン!!」

「だからそのあだ名は言わないでって言ってるでしょう!ってかさっきから読んでたの俺?!」


 帰ろうとしたら知らない女子につかまりました。






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