総集編 The Battle of Digitalias

ここはサヤ刃術ジンジュツが誕生したと言われる

伝説の霊峰レイホウ 天空山テンクウザン

その上空に浮かぶは

天空寺テンクウジ総本山 原初の都ランサデーヴァ

そこには巨大な白い壁に沿うように

聖水が流れ落ち煉獄レンゴク 冥府大監獄ゲヘナプリズンの映像が

鮮明に映し出されている部屋"カエデの間"があった。

そして、カエデの間には

神に最も近い男と言われている菩提ボダイ

頬杖ホオヅエをつきながら映像を眺めていた。



菩提ボダイ

「おーおー。因縁の対決ってやつかねぇ。

まぁ...その因縁さえもハカられた訳だが...」



すると、片目に傷跡が目立つ

臣下シンカの1人がやってきた。



無憂児ムユウジ

菩提ボダイ様...

いつまでここにいる気ですか?」


菩提ボダイ

「サボってる訳じゃねーよ。

俺は楽しみにしてたんだ。

ラナンキュラスとジギタリアスの戦いをな。」


無憂児ムユウジ

「観察も良いですが

拳闘僧侶ラカン達をモテアソばないで下さい。

雷を降らせるのも大概タイガイにしないと。

それに...」



菩提ボダイは耳をほじりながら

あくびをしていた。


菩提ボダイ

「ふぁぁ...」


無憂児ムユウジ

菩提ボダイ様。」


菩提ボダイ

「分かってるさ。祈りの時間だろ?」


無憂児ムユウジ

「ぇえ。そうです。

天武人テンブジンらも待っています。」


菩提ボダイ

「もう少し待たせとけよ。」


無憂児ムユウジ

  はぁ溜め息


菩提ボダイ

「時間は有限だが緩慢カンマンだ。

それに...これが最後だからよ。」


無憂児ムユウジ

「最後?

まさか...誰かが菩提ボダイ様の加護を

見破ったのですか?」


菩提ボダイ

「アイツが気付かねぇ訳ねぇだろ。」


無憂児ムユウジ

「グッ...申し訳ありません。」


菩提ボダイ

「何故お前が謝る?」


無憂児ムユウジ

「それは...」



菩提ボダイ

「クックックック...

ほら、ラナンキュラスが解放するぞ?

どうせならお前も見てけ。

思惑シワクマミれた...

哀れな2人を」



作者 REN’sJackson

千刃花センジンカ帝国特務戦闘部隊テイコクトクムセントウブタイ〜ー

総集篇  The Battle ofバトル オブ Digitaliasジギタリアス



ラナンキュラス

『『天輪テンリン遠鳴トオナリキラメく閃光

ウレい•黄昏タソガレ一矢イッシに消えよ

ホトバシれ  トドロかせ

そして彼方カナタ御•名オン ナを刻め!!!』』


ジギタリアス

『『咲け•肉芽 ナノシード ブルーム!!』』


機械音

ーー声紋セイモン認証 完了ーー

ーーー対鞘花タイショウカ特殊魔装トクシュマソウ兵器ヘイキーーー

ーーー起動しますーーー


ラナンキュラス

『『紫苑シオン雷刃ライジン 葡萄染麒麟エビゾメキリン!!』』


ジギタリアス

め•傀驕壊操アトランティカ!!』



葡萄染色エビゾメイロの刀身に

イカヅチホトバシらせると

ジギタリアスに向けて叫んだ。


ラナンキュラス

雷迎招雷ヴォルテッカ!!!』


ジギタリアス

「ガッハッハッハ!!!!

イカヅチカタマリか!!!!!!

とんでもねぇサヤだな!!!!」



ジギタリアスは目をカッと見開かせると

背中から次々と巨大な鎖とイカリが10本飛び出した。

その内、4本の鎖は1つ1つが

人の顔ほどの大きさがあり

イカリに至っては1mを超える大きさだった。


ジギタリアス

「こんなイカヅチ口程にもねぇ!!」



鎖が次々と雷迎招雷ヴォルテッカツラヌいていく。


ラナンキュラス

「無駄さ。葡萄染麒麟エビゾメキリンが作り出した雷雲から

常にイカヅチが引き寄せられる

その鎖を伝ってシビれるがいい。」


ジギタリアス

「ガッハッハ!!!!!

効くかよ!!!!!!!」



ラナンキュラス

「何!?雷迎招雷ヴォルテッカが!!

消えていく...なんだと!?」



突如、霧散ムサンした雷迎招雷ヴォルテッカ

ラナンキュラスは驚きを隠せなかった。



ジギタリアス

「まさかこれで終わりじゃねーだろうな?」


ラナンキュラス

「そんな...馬鹿な...一体どうやって!!」


ジギタリアス

「あんまりがっかりさせんじゃねぇよ。

これからが楽しいのによぉ!!!!!

ウラァ!!!!!!!!」



次々に鎖とイカリ

とてつもない速さで

ラナンキュラスへ向けて飛んでくるが

ラナンキュラスの速度の方が

圧倒的に早かった。


ラナンキュラス

「そんな遅い攻撃、当たるはずがない」

剋刃ゴクハ 四十五シジュウゴ走雷ハシリカヅチ

降身雷フルミカヅチ!!』



雷速で次々と回避する度に

鎖とイカリは地面に突き刺さっていく。


ジギタリアス

「ウラァ!!!!!」


  ラナンキュラス心の声

((鎖は全部で10本...

小さい鎖には小さなイカリ

大きい鎖には大きいイカリがついてる。

全て、全て覚えてる!!!!))



全ての鎖が地面に刺さったのを確認すると

ラナンキュラスは飛び上がり

ジギタリアスにヤイバを向けて叫んだ。


ラナンキュラス

「神のイカヅチをもってお前を殺す!!!!」

天雷アマノイカヅチィィィィ!!!!!!』



紫電シデンホトバシイカヅチの光線が

ジギタリアスに向けて放たれた。


ジギタリアス

「まだまだ!!!呑みこめえ!!!」

因果喰インガグライ!!!!』



ジギタリアスは

地面にめり込んだ傀驕壊操アトランティカ

グイッと引っ張り天雷アマノイカヅチ

ジャラジャラと音をたててツラヌいた。

すると天雷アマノイカヅチがまたもや

消えてしまった。


ラナンキュラス

「吸収したのか...いや、違う!!

これは!!!」


ジギタリアス

「オラッッ!!!!!」



紫電シデンマトったジギタリアスと傀驕壊操アトランティカ

雷速でラナンキュラスへと突っ込んでいった。


ラナンキュラス

「この速さ!!!

雷速だと!?僕のイカヅチを呑み込んだのか!!」



次々と雷速で襲いかかる鎖とイカリ

ラナンキュラスは叩き落としていくが

叩き落としても叩き落としても

次々と傀驕壊操アトランティカが襲いかかってくる。


ラナンキュラス

「グッ!!!」


ジギタリアス

「おい、坊主。

気をとられんなよ?俺はこっち...だぜ!!!!!

ゾォオリャア!!」



一瞬の隙をジギタリアスは見逃さず

ラナンキュラスの後頭部に渾身の拳を叩きつけた。



ラナンキュラス

「グァァアァアァアァア!!!!!」


ジギタリアス

「まだまだ!!!!!」



ジギタリアスは更に空中で傀驕壊操アトランティカ

足場にして跳ぶとラナンキュラスに突っ込んだ。


ジギタリアス

「ゾォオリャア!!!!!!」


ラナンキュラス

「ガッ」



拳が勢いよくラナンキュラスの腹を打つと

大地が割れ地面から次々と水が噴き出した。


ジギタリアス

「雷速ってのは速くていいなぁ

今ならどんなイカサマもバレやしねぇ。

なぁ?坊主。」



ジギタリアスはシューッと身体から煙をあげて

マトった紫電シデンが消えた。


ジギタリアス

「って聞こえてねーのか?

まさか、気を失ったんじゃねーだろうな?」



そう言ってラナンキュラスの首を持ち上げた。



ラナンキュラス

「気なんか...失うわけ...ないだろう...

こんな攻撃...訳なんてない...さ...」


ジギタリアス

「そうだな。しっかりと葡萄染麒麟エビゾメキリン

握ってやがる。

気を失ってた方が幸せだったのによ。」



傀驕壊操アトランティカ

ジャラジャラと音をたてて

ラナンキュラスにイカリを向けていた。


ジギタリアス

鞘花ショウカと闘うのは久しぶりだ。

どんなもんかはよく分かってらぁ。

ちょっとやそっとじゃ死なねぇからな。

だが、そのための対鞘花タイショウカ特殊魔装トクシュマソウ兵器だ。

ただ、俺のはもっとすげえがな。

鞘花ショウカだって簡単に殺せる。」


ラナンキュラス

「死ぬのは...お前...だ...

僕に触れて...タダで済む...と...思うな...よ」


ジギタリアス

「死ぬのはお前だ坊主

俺はサヤなんかに興味はーーー」


ラナンキュラス  食い気味に

降身雷フルミカヅチィイイ!!!』



ラナンキュラスはジギタリアスの手を掴んだ。


ジギタリアス

「何!?」



ドーンッとイカヅチがラナンキュラスと

ジギタリアスに落ちる。


ジギタリアス

「ガガガガガガ!!!!

効く...ねぇ!!!!!ガガガガガガ!!!」


ラナンキュラス

雷迅虞ライジングーーー』

「まさか!!ウグッ!!!」



ラナンキュラスは離れようともがくも

イカヅチに打たれてもなお

ジギタリアスはその手を離さなかった。



ジギタリアス

「離すわきゃぁねぇだろう?」

貪喰ドングライ!!!』



するとイカリがラナンキュラス目掛けて

一斉に襲い掛かった。



ラナンキュラス

「その...よう...だね...!!」

雷迎招雷ヴォルテッカ!!!』



紫電シデンカタマリが目の前に現れて

ジギタリアスに襲いかかる。

そして、次々とラナンキュラスの身体は

イカリツラヌかれた。


ラナンキュラス  ・同時に叫ぶジギタリアス

「ァアァアァア"ア"

ァアァアァア"ア"ァア

ァアァァアァアァア"ア"ア"ア"

ァアァアァア"ア"

ァアァアァア"ア"ァア

ァアァァアァアァア"ア"ア"ア"!!!!!!!!!」



ラナンキュラスのイカヅチによって

次々と鎖が溶けていくと

ジギタリアスはそれを目のハシトラえた。


ジギタリアス

「こんなッ!!!イカヅチなんぞ!!」

虚無喰キョムグライ!!!!』


ラナンキュラス

「アガッ!!!」



ジギタリアスは傀驕壊操アトランティカの鎖を

全て消すと改めて鎖を背中から出した。


ラナンキュラス

「自動...再生...いや、再召喚か!!」


ジギタリアス

「ォォォォオオオ!!!!」

因果喰インガグライ!!!!』



傀驕壊操アトランティカ

ラナンキュラスのイカヅチを全て呑みこむと

ジギタリアスは紫電シデンマト

雷速で距離を取った。


ラナンキュラス

「はぁっ...はぁ...ウグッッ...」



身体中に穴が開き血がドバドバと流れる。

ラナンキュラスはゆっくりと膝をついた。


ジギタリアス

「まさか...それで死なねぇのかよ...」



ジギタリアスも雷速を解き膝をついた。


ラナンキュラス

「ア...イ...ビーを殺したお前...を...許さない...」

癒雷イヤシカズチ



ラナンキュラスは弱々しく呟くと

紫電シデンが身体を覆って

傷を癒していった。


ジギタリアス

「嘘...だろ...その傷でも...治せるのかよ...」


ラナンキュラス

鞘花ショウカに...とって致命にアタイする

過度の傷は...命を削って...癒す...

そして...削る命...が無くなった時...初めて死ぬんだ。」


ジギタリアス

「元々、傷を...与えるのも...

苦労する鞘花ショウカが傷を負えば

命を...削って癒すってかよ。

何でも...ありじゃねぇか...

奇遇だな......神滅適合者ラグナロク

そりやぁあ同じだ!!!!!!!!」



ラナンキュラス

神滅適合者ラグナロク...だと?」


ジギタリアス

対鞘花タイショウカ特殊魔装トクシュマソウ兵器にも

二種類有るんだよ!!

神滅シヴァ神滅シヴァ以外か!!

神滅シヴァを真似て作ったのが

対鞘花タイショウカ特殊魔装トクシュマソウ兵器だ!!!

だがオリジナルの神滅シヴァ

戦闘用に改良した対鞘花タイショウカ特殊魔装トクシュマソウ兵器神滅シヴァ

鞘花ショウカと同等!!

鞘花ショウカと敵対する異国の神が生み出した神具シングだ!!

ォォォォオオオ!!!!!!!!!!」

魂喰タマグライ!!!!』


ラナンキュラス

「なんだ...と?傷が...」



ジギタリアスは傀驕壊操アトランティカ

自身の胸をツラヌくと

傷がみるみる癒えていった。


ジギタリアス

「そして!!神滅シヴァの強大な力を

普段は抑制してるが神滅適合者ラグナロク

それを操る事が出来る!!!」


ラナンキュラス

「まさか!!!!!!」


ジギタリアス

「ぁあ。そうだ。

これから本当の力を解放してやるよ。

ラナンキュラス。

これでシマいだ。」


ラナンキュラス

「本当の力...だと!?させるか!!!!!」

雷迎招ヴォルテッーー』


ジギタリアス 喰い気味に

『『最大輪マキシマ!!!!!!!!』』



機械音

ーー声紋セイモン認証 完了ーー

ーーー対鞘花タイショウカ特殊魔装トクシュマソウ兵器ヘイキ神滅シヴァーーー

ーーー起動しますーーー


ジギタリアス

  大海ノオリカルコ 支配者 •ヴァルカン!!』



ラナンキュラス

「これは...」



十本もの鎖とイカリ

ドロドロと溶けて空中に霧散ムサンすると

巨大な丸い門が空中に五つ出現した。


ラナンキュラス

「なんて凄まじい刃汽ジンキ...

これほどまでに強大なのか!!!」


ジギタリアス

「ガッハッハ!!!

どうだ坊主!!!!

これが神滅シヴァの本来の能力チカラ

"最大輪マキシマ"だ!!!」


ラナンキュラス 心の声

((神滅シヴァについては

レンゲイとアナスタシアから聞いてたが...

詳細は分からなかった...

これが神滅適合者ラグナロク...))


ジギタリアス

「さぁ!!!こっからが本番だ!!!」

女王喰いの復讐戟アンズリベンジ!!』



ジギタリアスの背後に浮かぶ五つの門から

幾千もの白く輝く槍が出現し

一斉にラナンキュラスに襲い掛かった。



ラナンキュラス

「グッ!!まずい!!!!」

降身雷フルミカヅチ!!』


ジギタリアス

「ガッハッハッハ!!!

坊主!!!逃げれると思うか!!!!!!」



ラナンキュラスは自身にイカヅチを落とし

雷速状態になると

射出された様々な形の武具を

前に進みながら次々とけていく。


ラナンキュラス

「勢いが衰えない。

まさか... 無限射出ムゲンシャシュツ!?」


ジギタリアス

「まだまだまだまだ!!!

ゾリャリャリャリャリャリャリャリャー!!」


ラナンキュラス

「グッ!!

葡萄染麒麟エビゾメキリンでも斬れないこの硬さ...

なら!!直接お前を叩くだけだ!!

導雷フルゴーラ!!!!!』



ラナンキュラスは上空に葡萄染麒麟エビゾメキリンを向けると

ジギタリアスに真っ直ぐイカヅチが落とされた。

そして、その一瞬のスキをみて

更にラナンキュラスは斬り掛かった。


ラナンキュラス

「フフッ。まだ、終わらないよ。」

雷迅虞斬ライジングサン





ジギタリアス

ニィッ不気味に笑う!!効かねぇよ!!

ゾリャァ!!!!!!!!!」



ラナンキュラス

「なに!?直撃したはず!!

グッグァァア!!!」



ドドドドドドドと女王喰いの復讐戟アンズリベンジの猛攻が

ラナンキュラスに襲い掛かった。


ラナンキュラス

「グァァア!!!!!」


ジギタリアス

「この姿を見せて殺し損ねた奴はいねぇ。

あの女の所まで俺が連れて行ってやるよ!!

なぁ、ラナンキュラス!!!」


ラナンキュラス

「ガハッ...」



ラナンキュラスの身体は血に染まっていた。


ラナンキュラス

「なんて...威力なんだ...グフッ」


ジギタリアス

「おーおーおー。

まだ息があるとはなぁ!!

大したもんだ!!!坊主!!!

女王喰いの復讐戟アンズリベンジの猛攻に耐えるたぁ

イカヅチ鞘花ショウカだけはある。」


ラナンキュラス

「僕は...絶対に...お前を許さない!!

アイビーを殺した...お前を!!!!!!

僕は許さない!!!!!!」


ジギタリアス

「何かと言えば、またあの女の話しかよ。

はぁ。分かった。俺の負けだ。

真実を言ってやりゃあ。」


ラナンキュラス

「何だ...と?」



ジギタリアスはラナンキュラスの背後に

一瞬で移動すると耳元で囁いた。





ジギタリアス

「アイビーは生きてる。」



ラナンキュラス

「何...!?

それは...本当か!!!!」





ジギタリアス

「嘘だ。」



そして音もなくラナンキュラスの身体を

白金シロガネの武具がツラヌいた。



ラナンキュラス

「ガッッッッ!!...貴様」


ジギタリアス

「クックックック...

ガッハッハッハガッハッハッハ!!!!

ンなわけねーだろうが!!!!!

バカが!!!!!!

本当に甘っちょろいな坊主!!!

ほら!!よっ!!!!!!!!」



ジギタリアスはラナンキュラスを蹴り飛ばすと

女王喰いの復讐戟アンズリベンジの無限連射で

更にツラヌいた。


ラナンキュラス

「貴様あぁあぁあぁあ!!!

ガッ!!グッ!!ガハッ!!アグッ!!

アガッ!!グァァア!!!!!」


ジギタリアス

「...まだ生きてやがるのか...ん?

傷が塞がってやがる...何をしやがった。」


ラナンキュラス

「グッ...言ったろ...お前を殺すと。

全てを賭けてお前を殺す!!!!」


ジギタリアス

「言ってろ!!!坊主!!!!」

女王喰いの復讐戟アンズリベンジ!!』


ラナンキュラス

帝釈天ノ刃ヴァジュラ!!』



ラナンキュラスはイカヅチを落とし

葡萄染麒麟エビゾメキリンのない刀へと変化させた。


ジギタリアス

「ゾリャァァァァア!!!!!」



ラナンキュラスは次々と

五つの門から飛び出す様々な武具を

斬り裂いていった。


ジギタリアス

「ほう!!何でも斬れるってわけかい!!」


ラナンキュラス

帝釈天ノ刃ヴァジュラは雷速で振動するヤイバ

どんな硬さがあろうとも

帝釈天ノ刃ヴァジュラの前では意味などない!!

降身雷フルミカヅチ!!』



ラナンキュラスは自身の身体に

イカヅチを落とした。


ジギタリアス

「雷速状態からの攻撃!!!

おもしれぇ!!!これならどうだ!!!」


ラナンキュラス

「何!?」



ジギタリアスも雷速状態となった。


ジギタリアス

  大海ノオリカルコ 支配者 •ヴァルカンから生まれる武具は

全て因果喰インガグライの性質を持つ!!

つまり!!雷撃を武具が受ければ

坊主のイカヅチさえも隷属レイゾクされる!!

喰らったもん全てが俺の支配下だ!!」


ラナンキュラス

「なんて、厄介な能力チカラだ!!」


ジギタリアス

「遊ぼうぜ!!!ラナンキュラス!!」

賭博悪喰ロイヤルフォーチュン!!』



  大海ノオリカルコ 支配者 •ヴァルカンから

武具が射出されるとジギタリアスの手に収まった。


ラナンキュラス

「受け止められないよ。」



雷速で振動する帝釈天ノ刃ヴァジュラ

ジギタリアスの武具を真っ直ぐ斬り落としていった。


ジギタリアス

「なるほどな!!」



もう一方の手を伸ばしたジギタリアスに

新たな武具が飛んできた。

それを掴むと間髪カンパツいれずに

ラナンキュラスを攻撃した。


ジギタリアス

「ガッハッハッハ!!

どんなもんが来るか分からねーが

武具には困んねーんだよな!!」


ラナンキュラス

「全て斬り裂くのは変わらない!!」



ジギタリアスは武具が斬られる度に

新たな武具を  大海ノオリカルコ 支配者 •ヴァルカンから飛ばしてもらい

雷速同士の超雷速攻防戦を繰り広げていた。


ラナンキュラス

「真っ直ぐ斬られないように

受け流しながら戦って!!いるのか!!!」


ジギタリアス

「当たり前だろうよ!!

俺の武器を斬り裂くヤイバ

警戒しねぇ!!訳が!!!ねぇ!!!

神が生み出す!!最高硬度の貴金属だからな!」


ラナンキュラス

「最高硬度...不倒不苦痛イージスオブジーザスも!!かい!?」


ジギタリアス

「そんなもんも!!あったなぁ!!」


  ラナンキュラス心の声

((斬り裂いても斬り裂いても

武具が次々と出てくるのか...

僕じゃ無ければこの硬度...

恐らく斬り裂く事さえも不可能

敵側にこんな危険な能力チカラがあるとは))


ジギタリアス

「なんだ!!動きが鈍ったぞ!!

考え!!事!!か!?」


ラナンキュラス

「グッ!!やはり!!

ここで殺す!!ジギタリアス!!

ハァァァア!!!!

グッ!?何!?」



ラナンキュラスは女王喰いの復讐戟アンズリベンジによる

無限射出された武具の残骸に囲まれ

逃げ場を無くしていた。


ジギタリアス

「ガッハッハッハ!!

みんな気づかねーんだよ。

女王喰いの復讐戟アンズリベンジを闇雲に

撃ってたわけじゃねぇ。

俺が戦いやすい様に戦場を構築したんだよ。

お前みたいな雷様カミナリサマ相手を

身動き取れなくするには

逃げ場を無くすしかねぇからな!!!

さぁ!!パチン指を鳴らす音!!」



ガガッと武具が射出されて

ジギタリアスの背後が武具で埋め尽くされた。

すべてのヤイバが内側に向いており

ラナンキュラスは文字通り囲まれてしまった。


ジギタリアス

「さぁ、ステージは整った。

インファイトしようぜ!!!!!」



更に射出されたグローブの様な武具をはめると

両拳リョウコブシを叩きつけジギタリアスはニィッと笑った。


ジギタリアス

「デスマッチと行こうじゃねぇか!!!」


ラナンキュラス

「望むところだ。

その武具も帝釈天ノ刃ヴァジュラ

斬り裂くまで...だ!!!!」


ジギタリアス

「お前の太刀筋はだいたい

頭に入った!!!ゾリャ!!」


ラナンキュラス

「何!?はじかれた!?」


ジギタリアス

「ガッハッハッハ!!!!

終わりだぁぁぁあ!!!ゾリャァァァァア!!」



ジギタリアスは帝釈天ノ刃ヴァジュラを弾き

ラナンキュラスの顔面へと拳を叩き込んだ。


ラナンキュラス

「ガッッッ!!!!

負ける訳には!!!!行か...ない!!!」


ジギタリアス

「ウォォオオオ!!!」


  ラナンキュラス心の声

((なん...て...怪力...だ))


ジギタリアス

「ゾリャァァァァア!!!



ラナンキュラスは吹き飛ばされ

背面に並べられたヤイバ

その身をツラヌかれた。


ラナンキュラス

「グァハッ!!!!!」



ドッと口から血を吐くと

ラナンキュラスは薄れる視界で

ジギタリアスを睨んだ。


ジギタリアス

「ガッハッハッハ!!!

殴り合いで俺が負ける訳ねぇ!!

ガッハッハッハ!!!!!

しかし、あの日からどう変わったか

楽しみにしてたが

まだ、女の幻を見てやがる!!!!

そんなヤイバで俺が斬れると思ってんなら

めでてぇ奴だな!!!!!!」


  ラナンキュラス心の声

((身体が...動かない...僕はここで...))


ジギタリアス

「仲間の事なんて なんも考えてねぇ!!

お前の誇りは

あの夜から消えちまったんだよ!!」


ラナンキュラス

「仲...間...誇り...」



その時、ラナンキュラスは

敵と仇をタガわぬ事だ。という

葡萄染麒麟エビゾメキリンの言葉を

思い出していた。


ラナンキュラス

「グッ...ゴハッ...

ハァ...ハァ...葡萄染麒麟エビゾメキリン...

君の...言う通り...だね...」


ジギタリアス

「何言ってやがる...」


ラナンキュラス

「男として...アイビーの仇を取る

だが、八刃花隊ハチジンカタイの隊長として

ジギタリアスを倒す。

どちらも...僕である事には...変わらない。

だが...今は...例え、憎き仇が目の前に居たとしても

僕は......

千刃花センジンカ 八刃花隊ハチジンカタイ隊長として

仲間を守る!!!!!!

それが!!!僕の誇りだ!!!!!!!」


ジギタリアス

「何!?急に刃汽ジンキ量が跳ね上がった!!」


ラナンキュラス

「力を貸してくれ!!!葡萄染麒麟エビゾメキリン!!!!」


ジギタリアス

「何!?!?グッッ!!空気中に電撃がホトバシる!!

グッ!!近づけねぇ!!!!!グッッ

おいおい...周りの武具が溶けてんじゃねぇか...

それに...この刃汽ジンキの上昇率...

まさか!!!鞘花ショウカの"千年万花センネンバンカ"か!!おもしれぇ!!!

その賭け!!乗ってやるよ!!!!」


ラナンキュラス

千年雷煌センネンライコウ麒麟武甕槌•キリンタケミカヅチ!!!!』


ジギタリアス

共喰トモグライ無敵幽霊戦艦フライングダッチマン!!』



イカヅチが降り注ぎ雷鳴が轟く。

紫電シデン煌めく雷雲がラナンキュラスに向かって

一気に収束シュウソクする。

バリバリバリッとラナンキュラスの足元から

逆さイカヅチが枝分かれする様にホトバシると

葡萄染エビゾメ色の麒麟キリンが雷雲をマトい降臨した。


ラナンキュラス

「こんなところに呼び出してすまない武甕槌タケミカヅチ

さぁ、共に逝こう。」



ラナンキュラスは武甕槌タケミカヅチを撫でると

キッとジギタリアスをニラんだ。

一方、ジギタリアスは

  大海ノオリカルコ 支配者 •ヴァルカンにより展開された五つのゲートが一つになると

水門全体を不気味な霧が包んでいった。



ラナンキュラス

「なんだ...これは...一体何処だ...

どこに消えた...ジギタリアス!!」



すると何処からともなく声が反響して聞こえる。


ジギタリアス

「ガッハッハッハ!!!

良かったなぁ!!!そのキリンちゃんがいてよぉ!!

じゃなかったら今頃沈んでたぜ!?」


ラナンキュラス

「なんだと!?姿を見せろ!!!ジギタリアス!!」


ジギタリアス

「そうカッカすんな坊主。

よーく見ろ」


ラナンキュラス

「何!?」



少し霧が晴れるとラナンキュラスの視界に

無数の髑髏ドクロ兵団と

波にまれ今にも沈みそうな

白金シロガネに輝く巨大な戦艦が見えた。

ジギタリアスはその船首に立ち

ラナンキュラスを見下ろしていた。


ラナンキュラス

「フフッ...空間転移に巨大戦艦...死者の兵か...

何てめちゃくちゃな能力チカラだ...」


ジギタリアス

「有利な戦場で有利に戦況を運ぶのは

当たりめぇの話しだ。

タイミングが良かったみてぇだな。

どうやらエリカの千年万花センネンバンカ

空間の外で暴れ回ってやがる。

まぁ...見たところお前さんの千年万花センネンバンカ

場所を選ぶ必要はねぇみてぇだがな。

ちなみに...まさかとは思うが

雷雲をマトって浮いてんのか?それ。

ガッハッハッハッハッ!!面白れぇ!!!!

さぁ!!!!見せてみな!!ナーベルクの雷神レイシェン!!

おめぇの千年万花センネンバンカ能力チカラをよぉ!!」


ラナンキュラス

「フフッ。

言われなくてもそのつもりさ。

全力の貴様を全力をって制す。ハッ!!!」



ラナンキュラスは帝釈天ノ刃ヴァジュラをグッと構えて

武甕槌タケミカヅチハシらせた。



  ジギタリアス心の声

((消えた!!雷速か!?))


ラナンキュラス

「ハァァァア!!!!!」



雷速で距離を詰めるとジギタリアスに斬り掛かった。


ジギタリアス

「あめぇんだよ!!!」



ラナンキュラスの動きに合わせて

ジギタリアスは拳の武具で

タイミングよくカウンターを繰り出した。


ジギタリアス

「ウォオオオオ!!!」


ラナンキュラス

武甕槌タケミカヅチ!!!」


ジギタリアス シビれる様に

「な!?ガガガガガガガガガガガッッツ!!」



ラナンキュラスは武甕槌タケミカヅチごと突進し

ジギタリアスをすり抜け海の上を駆け抜けていった。


ジギタリアス

「グッ...どういう...こと...だ。」



シューっと煙をあげるジギタリアスは

口から煙を吐きながらラナンキュラスを見た。


ラナンキュラス

武甕槌タケミカヅチの雷撃を受けても

まだ、人の形を保っているのか...」


ジギタリアス

「グハッッ...お前さんが通るたび

海面が蒸発しやがる...。」


ラナンキュラス

「海面だけじゃないさ。」



そう言うとジギタリアスの武具を指さした。


ジギタリアス

「どんなに溶けようが...また!!

付ければいいこった。」



ジギタリアスは無敵幽霊戦艦フライングダッチマンから

射出された拳の武具を再び装着した。


ジギタリアス

「それよりも...その千年万花センネンバンカ

どうなってやがる。坊主ごと俺をツラヌいたろ?」


ラナンキュラス

「教える訳無いだろう?」


ジギタリアス

「クックックック...そうだろうよ...。」



そして、ゆらっとジギタリアスは船ごと消えてしまった。


ラナンキュラス

「何!?武甕槌タケミカヅチ!!!」



ラナンキュラスは武甕槌タケミカヅチ

空中を駆け上がり辺りを見渡した。

そしてまたもや

反響した声が空間に響く


ジギタリアス

「なんだぁ?消えた事に驚いてんのか!?

ガッハッハ!!」


ラナンキュラス

無敵幽霊戦艦フライングダッチマン...幽霊戦艦という事か...

だが!!!葡萄染麒麟エビゾメキリン

何処までもお前を追う!!!!!」

麒麟チーリン導雷フルゴーラ!!!』



ラナンキュラスは帝釈天ノ刃ヴァジュラを天高く掲げると

紫電シデン麒麟キリンが一気に下へ駆け降りていった。


ラナンキュラス

「そこかぁぁあ!!!!!」



するとザバーンッッと波が割れ

突如、ラナンキュラスの足元から

無敵幽霊戦艦フライングダッチマンが現れると

雷速で様々な武具が発射された。


ジギタリアス

「もらったぁあ!!!!」


ラナンキュラス

「グッ!!雷速!?!?」



麒麟チーリン導雷フルゴーラと武具が衝突し

激しい爆発が巻き起こった。


ジギタリアス

「グッ」


ラナンキュラス

「逃すかぁあ!!!!!!ハッ!!」



武甕槌タケミカヅチイナナ

ジギタリアスへ向けて突進した。


ジギタリアス

「バカが!!!自ら突っ込んでくるなんてよぉ!!」


ラナンキュラス

「ウォオオオオ!!!!!」


  ジギタリアス次のセリフまで

「ゾォリャリャリャリャリャリャ!!!!!!」



無敵幽霊戦艦フライングダッチマンから

猛烈な武具が発射されるが

ラナンキュラスと武甕槌タケミカヅチ

全てすり抜けていく。

そして帝釈天ノ刃ヴァジュラを振り下ろしたその瞬間


ラナンキュラス

「これで終わりだぁ!!!ジギタリーーーー」


ジギタリアス 喰い気味に

「バカが!!!!」



ガキンッと音がしジギタリアスの武具が

ラナンキュラスの帝釈天ノ刃ヴァジュラを受け止めた。


ラナンキュラス

「フッ。何度も言ってるだろう?

帝釈天ノ刃ヴァジュラは雷速で振動する刀

そして、武甕槌タケミカヅチイカヅチ

その武具さえも溶かす。

それに、忘れた訳じゃないだろ?

僕に触れてタダでーーー

ッッガハッッ!!」



突然、背後から腹部をツラヌかれ

ゆっくりと後ろをラナンキュラスが見たのは

広大な海に広がった十隻ジュッセキ無敵幽霊戦艦フライングダッチマンだった。


ラナンキュラス

「グハッッ...あれだけの技を放つ船が...

もう十隻ジュッセキだと...」


ジギタリアス

「そんじょそこいらの神滅適合者ラグナロク

一緒にしてくれんなよ?

俺は!!海王水軍 大提督ダイテイトク!!

ジギタリアスだぁぁあ!!

ゾォリャァア!!!!!!!!!」


ラナンキュラス

「何!!??グァァア!!!!!」



ジギタリアスはラナンキュラスと武甕槌タケミカヅチ

鋭く尖った武具の上に叩きつけた。

無数の武具にツラヌかれたラナンキュラスだったが

すぐさま雷速で駆け抜け上空へと距離をとった。


ラナンキュラス

「はぁ...はぁ...ゥグッ」


ジギタリアス

「その態勢から逃げ出す...か。

それに、致命傷にも達してねぇ。」


ラナンキュラス

「はぁ...はぁ...」



更にジギタリアスはラナンキュラスを

ジッと見つめると不思議そうな顔で

口を開いた。


ジギタリアス

「おい、戦闘刃術ジンジュツの達人のくせに

剋刃ゴクハも使わねぇのはなんでだ?」


ラナンキュラス

「使う...までも...ないからさ...」


ジギタリアス

「ガッハッハッハ!!

なんだそりゃあ!!

ぁあ...そういう事か...

使わないんじゃねぇ。

千年万花センネンバンカを発動したら使えねぇのか!!」


ラナンキュラス

「それは...どうかな?」


  ラナンキュラス心の声

((無敵幽霊戦艦フライングダッチマンの射出速度は雷速。

それにあれほどの数...

そして、未だに動く気配を見せない髑髏ドクロ兵...

いつまで僕の身体が持つか...時間との勝負!!))


ジギタリアス

「それによぉ。

その千年万花センネンバンカ...

移動してる時は物理攻撃が効かねえ。

何故なら...お前さん自身が移動するその瞬間だけ

イカヅチになってるからだ。

だから剋刃ゴクハを使った所で意味がねぇ。

全ての刃術ジンジュツ

焼き焦げるからな。

移動以外でも相当な電圧をマトってやがる。

だから、使いたくても使えねぇ。

そうだろ?坊主?」


ラナンキュラス

「はぁ...はぁ...はぁ...どう...かな?」


ジギタリアス

オノレ自身がイカヅチになる。

そんな技にリスクがねぇ訳がねぇ。

長くは持たねぇのは明白だ。

クックックック。

あと、どんくらい持つんだろうな?

ラナンキュラス!!」


ラナンキュラス

「貴様...に...は...関係ない!!!!!!!」


ジギタリアス

「見えるぜ?お前さんがイカヅチから戻れずに

消えて無くなるのがなぁ!!!!!!

無敵幽霊戦艦フライングダッチマン!!面舵いっぱいハードアポート!!」



無敵幽霊戦艦フライングダッチマン銃口ジュウコウ

一斉にラナンキュラスに照準を合わせた。


ジギタリアス

女帝喰いのクイーンオブ復讐因果戟アンズリベンジ!!』


ラナンキュラス

「グッッッ!!!!」


ジギタリアス

麒麟キリンに乗って来いよ!!

逃げたっていいんだぜ!?

俺の武具は尽きる事を知らねぇんだからよぉ!!!!!」



ラナンキュラスは武甕槌タケミカヅチハシらせ

雷速で大きな弧を描き空中を駆け抜けると

ジギタリアスに向かって突撃していった。


ジギタリアス

「さっきからそう来るしか脳がねぇ野郎だ!!坊主!!」


ラナンキュラス

「そう思ってくれてるなら!!正解さ!!!」

麒麟チーリン雷迎招雷ヴォルテッカ!!!』


ジギタリアス

「ガッ!!何!!?」


  ラナンキュラス同時に

「ゥオオオオオオオオオオオオオオオ」


ジギタリアス 同時に

「アガッアガッガガガガガガガガガガガ」



ラナンキュラスは武甕槌タケミカヅチと共に

イカヅチへと変化し

ジギタリアスの身体を何度も何度もツラヌくと

次第に紫色の球体が出来上がっていった。


ラナンキュラス

「終わりだぁああぁああ!!!!!」

  超放電スパーキング!!!!』

雷迅虞斬ライジングサン!!!!!!!』



ラナンキュラスはその球体を

上からバリバリと紫電シデンホトバシらせながら

イカヅチを帯びた帝釈天ノ刃ヴァジュラで斬り裂いていった。


ラナンキュラス

「ハァァァァァア!!!!!」


  ラナンキュラス心の声

((アイビー...これでヨウヤ

君の仇を...討つことができる...))


ラナンキュラス

「ジギタリアス!!!!!!!!」



ラナンキュラスの帝釈天ノ刃ヴァジュラがジギタリアス近くまで

到達したその瞬間





ラナンキュラス

「アイ...ビー?」





ラナンキュラスは帝釈天ノ刃ヴァジュラをピタッと止めた。

すると、それを見逃さなかったジギタリアスは

鎖の武具でラナンキュラスを一瞬で縛り

猛烈な殴打オウダを連続で喰らわせた。



  ジギタリアス同時に

「ゾォリャリャリャリャリャリャリャリャ」


  ラナンキュラス同時に

「オゴゴゴゴゴゴゴッッツ」


ジギタリアス

「ゾォリャァア!!!!!!」


ラナンキュラス

「ガハッッッッツ」



ジギタリアスは鎖ごと砕くと

ラナンキュラスと武甕槌タケミカヅチ

渾身の拳で吹き飛ばした。


ジギタリアス

海呪投影デビジョン

無敵幽霊戦艦フライングダッチマンの基本能力の一つだ。

最も嫌う場所をこの空間に投影し

この髑髏兵ドクロヘイに最も逢いたい者を投影する。

人によって見える景色も逢いたいもんも違うが...

まさか...気付かなかったのか?坊主。

ここは...ジオザ海峡だ!!!スゴウ平野の大戦の場だ!!

数年ぶりの感想はどうだ!!!!???なぁ!!

髑髏ドクロ兵と分かってても

アイビーは斬れなかったみてぇだな!!!

ガッハッハッハッハッ!!!!」



ジオザ海峡とは

ラミオラス帝国の北に位置する海峡。

そして数年前のスゴウ平野の大戦で

ラナンキュラス率いる八刃花隊ハチジンカタイ

当時、海王軍の団長だったジギタリアスが対峙した場所であり

更に副隊長であったラナンキュラスの恋人アイビーが

ジギタリアスに殺された場でもあった。


ラナンキュラス

「そ...んな...」



ラナンキュラスは走馬灯の様に当時を思い出していた。





アイビー

「ラナンキュラス!!!!」


ジギタリアス

「仲良く死にな。」


アイビー

「ガッッ」



アイビーの腹部をイカリツラヌくと

その先端は真っ直ぐラナンキュラスが

落ちていった所までグングンと伸びた。

同時に鎖が、ジャラジャラと

アイビーの腹部を通過していく。

アイビーは血反吐チヘドを吐きながら

叫び声を上げると

そのままラナンキュラスのいる海中まで

吹き飛んだ。


アイビー

「アガゴゴゴガゴガゴゴゴカ」



鎖が通過するたびに内臓はかき回され

痛みで頭が白くなっていく。

そして海水が体内に一気に流れ込んでいった。

すると海中で光が微かに見える。



ラナンキュラス

「アイビー!!!!!!!」



アイビーは目を開けると

そこにはラナンキュラスがいた。


アイビー

「ラナン、、いいの、、」


ラナンキュラス

「しっかりするんだ!!」



ラナンキュラスの鎖は消えていたが

アイビーの腹部には

まだ巨大な鎖が貫通していた。



アイビー

「ラナーーー」


ジギタリアス被せ気味に

「楽にしてやる」



ジャラジャラジャラジャラと音がすると

鎖がジギタリアスに帰っていく。

その反動でアイビーも引き寄せられていった。

しかし、アイビーは声などあげなかった。

もはや痛みさえも感じていなかった。


ラナンキュラス

「やめろぉぉぉお!!

これ以上、、彼女を傷つけないでくれ!!」


ジギタリアス

「ガッハッハ!!

勝つことを諦め女を選ぶとは!!」



ジギタリアスは引き寄せたアイビーを

海に投げ捨てるとラナンキュラスは

傷だらけの身体で海へと飛び込んだ。


ラナンキュラス

「アイビー!!!!!」


ジギタリアス

「死体が欲しいのかボウズ

そんなにその部下が大事か?

っと、、、ロージアから通信刃術ツウシンジンジュツだ。」



ジギタリアスはめんどくさそうに応答すると

何やら話していた。

そしてしばらくすると口を開いた。


ジギタリアス

「おい。ボウズ。慈悲ジヒをくれてやる。

ちゃんとトムラってやんな。

野郎共!!!出航だ!!!」



ラナンキュラスは海中で

アイビーの亡骸ナキガラを受け止め

海から顔を出すと

ジギタリアスに向かって

喉から血が滲むほどに叫んだ。


ラナンキュラス

「僕が!!必ず!!!お前を!!!!

殺しに行く!!!

必ず!!殺しに行く!!!!

ジギタリアスゥゥウ!!!!!」



そして、現在

ラナンキュラスは胸を押さえ

息を荒げていた。



  ラナンキュラス次第に強くなる

「はぁ...はぁ...はぁ...」


ジギタリアス

「ん?顔色が、えらくワリィじゃねぇか!!」


ラナンキュラス

「貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...

貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...

貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...

貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...

貴様ァァァァァアア!!!!!!!!!!

これ以上!!!!アイビーを!!!!!!

愚弄グロウするなぁぁぁあ!!!!!!」


ジギタリアス

「ガッハッハッハッハッ!!!パチン指を鳴らす音 

来い!!!!!」

屍喰シニグライ髑髏兵団ドクロヘイダン!!!!』



ジギタリアスは指を鳴らすと

無敵幽霊戦艦フライングダッチマン十隻ジュッセキもろとも

ゆらりと姿を消した。

海中からゾロゾロと骨をキシませながら

髑髏の大群がラナンキュラスの元へと向かっていく。

そして、近づくにつれ

髑髏兵ドクロヘイの顔は次第に髑髏兵アイビーへと変わっていった。


冷めた声で



覇気のない声で



心のない声で



ラナンキュラスの名を呼んでいた。



髑髏兵アイビー

「ラナン...ラナン...ラナン」



ラナンキュラス

「やめろ...やめろ...やめてくれぇえええ!!!!」



髑髏兵アイビー

「ラナン...ラナン...ラナン」



ラナンキュラスは武甕槌タケミカヅチマタガったまま

両耳を塞ぎ顔を沈めた。


ラナンキュラス

「アイビー...すまなかった...僕は...君を...」


髑髏兵アイビー

「ラナン...ラナン...ラナン」


ラナンキュラス

「助けられ...なかった...」


髑髏兵アイビー

「ラナン...ラナン...ラナン」


ラナンキュラス

「すまない...すまない...すまない...すまない」



するとドーーンッと武甕槌タケミカヅチイナナきと共に

イカヅチがラナンキュラスに落ちた。


ラナンキュラス

「グッ...そうだね...葡萄染麒麟エビゾメキリン

これは君が僕に見せた雷影ライエイなんかじゃない。

ジギタリアスが生み出した薄汚れたシカバネだ。

よくも...僕にこんな手を...こんな手を!!武甕槌タケミカヅチ!!!」



ラナンキュラスは武甕槌タケミカヅチハシらせ

帝釈天ノ刃ヴァジュラを構えた。


髑髏兵アイビー

「ラナン...ラナン...ラナンキュラス」


ラナンキュラス

「これ以上!!!!アイビーを愚弄グロウするな!!

ジギタリアス!!!!!!!!!!

ハァァァア!!!!!!!!!!!!!」



ラナンキュラスは髑髏兵アイビーに向けて

帝釈天ノ刃ヴァジュラを振り下ろした。






髑髏兵アイビー

「愛し...てる」






髑髏兵アイビーのその言葉に

ラナンキュラスは振り下ろした帝釈天ノ刃ヴァジュラ

止めてしまった。


ラナンキュラス

「アイ...ビー」


  ジギタリアス喰い気味に

「馬鹿が!!!!

無敵幽霊戦艦フライングダッチマン!!面舵いっぱいハードアポート!!」

女帝喰いのクイーンオブ復讐因果戟アンズリベンジ!!』

「ぶっ放せ!!!!!!!!!!!」



無敵幽霊戦艦フライングダッチマン全艦による

一斉射撃と

髑髏兵アイビーによる猛攻が

ラナンキュラスに襲い掛かった。


ラナンキュラス

「僕...僕は...グッグァァァアァアアァアァアア!!」



波のように髑髏兵団ドクロヘイダンがのしかかり

ラナンキュラスに襲いかかる。


ジギタリアス

「隊長として俺を斬るとか言ってたよな?

それがどうだ??ガッハッハッハッハッ

女1人にこんな戸惑いやがって!!!パチン指を鳴らす音

幻喰ユメグライ遊覧船風ゴールデンハインドォォ!!』



そう言ってジギタリアスは指を鳴らすと

突如、無敵幽霊戦艦フライングダッチマン

ラナンキュラスの真横に現れ突進した。


ラナンキュラス

「真横!?グハッッ」


ジギタリアス

「それで終わると思うな。

悪夢はこれからだぜ!!!!」



九隻キュウセキもの巨大な無敵幽霊戦艦フライングダッチマン

入れ替わり立ち替わり様々な方向から

ラナンキュラスに突撃しては消えていった。


  ラナンキュラス次のセリフまで

「アガッ!!ゥグッ!!!ガハッ

グッッッツ!!ゴハッ!!!オグッ

カッハッ!!グウゥッ!!オガッ!!」


髑髏兵アイビー

「ラナン...ラナンキュラス」



崩れていく髑髏兵アイビーたち

血反吐を吐き続けるラナンキュラス

それを真剣な眼差しで見ているジギタリアス

限界を超える痛みの中で

ラナンキュラスは

頭蓋ズガイが割れていく髑髏兵アイビーを見た。


  ラナンキュラス弱った心の声

((ジギタリアスは...強い...

おそらく...ラミオラスの中でも...屈指の強さだろう。

僕は...鞘神サヤガミに選ばれた鞘花ショウカなのに

葡萄染麒麟エビゾメキリンの想いにも応えられぬまま

僕はこのまま死んでいくのか...

ダメだ...ここはみんなが安全に...帰れる退路...

だから...まだ死ぬわけには...))



すると攻撃が止まった。


ラナンキュラス

「ガハッ」



ラナンキュラスは最後の一撃で

ジギタリアスのいる無敵幽霊戦艦フライングダッチマンの甲板へと打ち上げられると

武甕槌タケミカヅチが鼻息を荒くし

ジギタリアスを威嚇していた。


ジギタリアス

「ほぉ。この連撃の中でも葡萄染麒麟エビゾメキリン

離さず、武甕槌タケミカヅチからも落馬しないとはなぁ。

だが、刃汽ジンキが尽きたのかどうかは知らねぇが

もはやイカヅチになる事さえも出来ねぇみてぇだな。

わざとセーブしてんのか?坊主。

いや、それとも...葡萄染麒麟エビゾメキリンの意思か?

まぁ、今更だけどよ。んなもん。」



黒焦げた身体に血まみれのジギタリアスは

ヨロヨロとラナンキュラスに近づいていくと

それにならって髑髏兵団ドクロヘイダン

甲板に次々と上がっていった。


ジギタリアス

「もう武甕槌タケミカヅチを操る気概キガイもねぇのか?

...つまんねぇ幕引きだぜ。

海王軍副団長としてせめてもの慈悲だ。

この手でホウムってやるよ。」



ジギタリアスが腕を伸ばすと

巨大な斧が射出され片手に収まった。


ジギタリアス

悪喰ワルグライ海皇ノ戦斧ワイダーンギャリー!!』


ジギタリアス

「このオノはなぁ。海呪投影デビジョンの投影効果により

最も愛した人間を俺自身に投影出来る慈悲のオノだ。

高密度のオリハルコンであしらわれてるこの世で最も硬い武器。

無論、イカヅチでも溶けやしねぇ。

1億ボルトものイカヅチ

溶けねぇって事は

お前さんのイカヅチを斬れるって事だぜ?」


ラナンキュラス

「なん...だ...と!?」



すると、ジギタリアスの身体が

ユラッと霧に包まれて行く。


ジギタリアス

「ほぅら、段々変わって来たろ?

なぁ?誰が見えてんだ?母か?父か?

兄か?それとも...」


ラナンキュラス

「フフッ...相変わらず...君は美しい...ね...アイビー。

それに...ゥグッ...なんでココに...君が...」


ジギタリアス

「クックックック。またアイビーかよ。

あっちもこっちもどこいっても

俺の髑髏兵団ドクロヘイダンがアイビーに見えやがる!!!

坊主...お前はそれほどまでにその女を...フンッ

見てみなぁ。この髑髏兵ドクロヘイをよ。

アイビーが笑ってやがる。クックックック」



するとラナンキュラスは怪訝ケゲンな顔でジギタリアスを見た。


ラナンキュラス

「なんだ...と?

もう一度...言ってみろ...」


ジギタリアス

「だから言ってんだろ坊主。

海呪投影デビジョンは投影する能力チカラ

人によって見えるもんは違うってよ。

お前さんの場合は初めから

アイビーにしか見えてねぇんだろ?

今もそうだろうが!!!ガッハッハッハッハッ!!」


ラナンキュラス

「フフッ。...そうか...」


ジギタリアス

「何?」


ラナンキュラス

「...ジギタリアス」



そう言うとラナンキュラスは武甕槌タケミガヅチ手綱タヅナ

グイッと引っ張った。






ラナンキュラス

「アイビーが...見えてるんだね?」



ジギタリアス

「......何?」



ラナンキュラス

「フフッ。

初めからそうさ。

人によって...見えるものが違うなら...

お前には何が...見えてる?

ゴホッゴホッ...

ジオザ海峡とアイビーが見えるんだろう?

最初にお前は僕に言っていた。

ジオザ海峡だ...とね。

グッ...まさか...

お前にとって"最も嫌う場所がジオザ海峡"で

"最も逢いたい者"が"アイビー"...なの...かい?

笑わせるな!!!!!」



  ジギタリアス遮る様に

「俺の能力チカラ

お前さんの景色を見てるだけだ!!

別に不思議な事なんてねぇんだよ!!!」



ジギタリアスは目を見開き

ラナンキュラスをガッと睨んだ。


ジギタリアス

「くだらねぇ!!!!

どうでもいいんだよ!!!

そんな事はよぉ!!!

的外れもいいこった!!!!

今は殺し合いだろうよ!!!坊主!!

仮に見えてたとしても

お前さんには関係ねぇ!!

俺はラミオラスの将軍で!!

お前はナーベルクの将軍!!!!

敵にゃぁ変わりゃしねぇんだからよ!!」



ジギタリアスがそう叫ぶと

ラナンキュラスと武甕槌タケミカヅチの身体を

髑髏兵団ドクロヘイダン

ワラワラと押さえつけた。


ラナンキュラス

「グッ...そうさ...関係ない...どんな事があっても...

お前が...アイビーを殺した事には変わりない。

それを許す事は出来ない!!

ジギタリアス...確かにお前は強い。

だが...僕はお前に負けて

ここで倒れる訳にもいかない!!!

僕は!!千刃花センジンカ 八刃花隊ハチジンカタイ隊長 

ミシェール=ラナンキュラス=バンジャマン!!

例え僕の命と引き換えても!!!

お前を殺して!!!

僕は!!仲間の退路を守る!!!!!」



生気セイキが再び戻ったラナンキュラスの眼前には

髑髏兵アイビーの姿はなく

アキレイ、ジジ、ツバキ、プラム、リナリア、アナスタシア

ジニア、キキョウ、クーワ、レンゲイ、チョウラン

オルケイディアといった千刃花センジンカ隊士達が投影されていた。


ジギタリアス

「グッ!!!!何をする気だ!!!!!!

このオヨんで雷撃だと!?

グッ!!ガッハッッ!!!!」



ラナンキュラスは尋常では考えられないほどのイカヅチ

マトっていた。

そして、帝釈天ノ刃ヴァジュラを握りしめ

自身の胸をツラヌくと

武甕槌タケミカヅチイカヅチに変わり

ラナンキュラスをツラヌいた。


ラナンキュラス

「ガハッ!!

我が命をって大悪タイアクチュウす!!!!!

イカヅチよ!!!タマシイよ!!!!!

冥府の世界へイザナいたまえ!!!!!!!」


ジギタリアス

「グッ!!!」


  ラナンキュラス死ぬ気で叫ぶ

雷霆ノ贄エルトールソーアァァァァア!!!!!』



ラナンキュラス 心の声

((葡萄染麒麟エビゾメキリン...すまない。

みんな...後は頼んだよ。))



ジギタリアス

「おいおいおいおい...なんて刃汽ジンキ量...

なんて電圧...

自分からイカヅチになりやがった!!!

お前さんが死んだら元も子もねぇだろうに!!

クックックック...少しアナドってたか...

本気で死ぬ気でいたのかよ...

坊主!!!!!!」



凄まじい轟音とイカヅチ

無敵幽霊戦艦フライングダッチマンの空間を走り抜けた。

ラナンキュラスの身体は徐々にイカヅチと化していく。

そしてジギタリアスはイカヅチに向かって

海皇ノ戦斧ワイダーンギャリーを振り下ろした。


ラナンキュラス

「ォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


ジギタリアス

「ォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」





  ジギタリアス心の声

((強くなったじゃねぇか。





ラナンキュラス))



ドーーーーンッと轟音が鳴り響き

水が干上がり、辺り一帯が光に包まれた。






アイビー

「ラナン?

ねぇ、起きて!!ラナン!!」



ラナンキュラス

「ん?...朝...かい?」


アイビー

「ううん。違うけど...」


ラナンキュラス

「じゃぁ...もう少し寝かせてくれ...

なんかずっと悪夢を見てた気がして

よく眠れなかったんだ。」


アイビー

「悪夢?」


ラナンキュラス

「そう。君が死んでしまう悪夢さ。

取り残された僕は永遠に君の面影を追い続けてたんだ。」


アイビー

「ウフフ!子供みたいね。相変わらず。」


ラナンキュラス

「フフッ。君のいない世界に僕は興味ないからね。」


アイビー

「もう。ラナンったら。

私が死んだってラナンには沢山の仲間がいるじゃない。」


ラナンキュラス

「寝言はベットの上でしか聞かない事にしている。

フフッ。さぁアイビー。隣においで。」



ラナンキュラスは

自身のベッドにアイビーを引き寄せた。


アイビー

「どうしたの?」


ラナンキュラス

「いや、なんだろう...懐かしいなって。」


アイビー

「うん。あたしも懐かしいなって思う。」


ラナンキュラス

「え?」



そう言うとアイビーはラナンキュラスを抱きしめた。


アイビー

「紅茶の香り...。」


ラナンキュラス

「そうだね。」


アイビー

「花の香り...。」


ラナンキュラス

「そうだね。」


アイビー

「ラナンキュラスの香り。」


ラナンキュラス

「...毎晩君を抱き締める度に

思い出すんだ。

この戦争が終わったら

僕は君と旅に出て...」


アイビー

「世界中を周る。」


ラナンキュラス

「小さな家を建てて

そこで紅茶を育てて売るんだ。

そして家に帰れば」


アイビー

「私が夕飯の準備をして待ってる。

大きなパイ生地に白いシチュー。」


ラナンキュラス

「君によく似た男の子と」


アイビー

「ラナンによく似た女の子」


ラナンキュラス

「それが、僕達の夢...」


アイビー

「...そうだね。」


ラナンキュラス

「アイビー...覚えているかい?」


アイビー

「何?」


ラナンキュラス

「君の誕生月、2人で行った海をさ。」


アイビー

「うん。覚えてる。」



ラナンキュラスは天井を見つめながら

思い出していた。

潮風が香る夜の海岸線を。

紫色のオープン魔進マシンで駆け抜けたあの特別な日を。



アイビー

「ねぇ!見て!!ラナン!!

とっても綺麗!!」



アイビーは月明かりで

照らされた青白い海を指差して

ラナンキュラスに微笑んだ。


ラナンキュラス

「フフッ。

それでも君の美しさにはカナわないさ。」


アイビー

「ウフフッ。ラナンったら」


ラナンキュラス

「ちょっ!!アイビー!!」



助手席にいるアイビーは

ラナンキュラスに抱きついた。


ラナンキュラス

「あ、危ないだろ?

君に怪我をさせるわけにはいかないからね。」


アイビー

「フフッ。

怪我なんてしないわ。

だって、何があっても

イカヅチより早く助けに来てくれるんでしょ?」


ラナンキュラス

「フフッ。そうだね。

イカヅチよりも早く抱きしめに行くさ。

そうだアイビー。

今日はここの海岸線一帯は

君だけのものだ。

望みとあれば何でも出来る。

君の望みはなんだい?」


アイビー

「ラナンと砂浜を歩きたい。」


ラナンキュラス

「それだけでいいのかい?」


アイビー

「うん。」


ラナンキュラス

「分かった。」



ラナンキュラスはハンドルを切ると

砂浜に車を停めた。


アイビー

「わーーー!!すごーい!!」



そこに待っていたのは砂浜一面を埋め尽くす

数千のキャンドルライトと

イロドり豊かな花々だった。


ラナンキュラス

「少し、歩こうか。」



ラナンキュラスはアイビーの手を引き

しばらく砂浜を歩いた。

さざ波が優雅な音色に乗って

潮風が吹き抜ける。

ラナンキュラスは遠くを見つめると

口を開いた。


ラナンキュラス

「風が気持ちいいね。」


アイビー

「そうね。とっても心地いい」


ラナンキュラス

「時折、思うんだ。

風になりたい。ってね。」


アイビー

「どうして?」


ラナンキュラス

「風になって、君とどこまでも

遠くへ行きたい。」


アイビー

「ウフフッ

イカヅチ鞘花ショウカなのに

面白い事を言うのね。」


ラナンキュラス

「フフッ。そうだね。

でも、イカヅチで運んだら

君がシビれるだろ?」


アイビー

「そんな事言ったら、

出逢った日から私はずっと

ラナンにシビれてるわ。」


ラナンキュラス

「フフッ。

それをなんて言うか知ってるかい?」


アイビー

「なんて言うの?」


  ラナンキュラス耳元で囁きながら

「恋。って言うのさ」


アイビー

「ウフフッ。ラナンったら。」



すると、ラナンキュラスは

アイビーの手を取り

白いテントの中へとエスコートした。

中に入ると中央には白いテーブルと椅子

冷えたシャンパンが用意されていた。

ラナンキュラスはアイビーの椅子を引くと

シャンパンに手をかけ栓を抜き

グラスに注いだ。


ラナンキュラス

「君とこうして過ごせる事に感謝する。

また、来年も一緒に過ごそう。

おめでとうアイビー。」


アイビー

「ありがとう...ラナン。」


ラナンキュラス

「乾杯。」


アイビー

「乾杯。」



2人はグラスを合わせると

シャンパンを口に運んだ。

しばらく談笑したあと

ラナンキュラスは

アイビーの手を引き

砂浜へと連れ出した。


ラナンキュラス

「せっかくだから

もう少し歩こうか。」


アイビー

「うん。」



ラナンキュラスは

アイビーが転ばぬように

腰に手をかけてゆっくりと歩いた。


アイビー

「...凄い綺麗。

青白く光る海に、沢山の花とキャンドル...

なんか、天国みたいだね!」


ラナンキュラス

「フフッ。

天国?相変わらず君は面白いねアイビー。

僕らが一緒に入る墓標の周りには

沢山の花を咲かせよう。」


アイビー

「...うん。」


ラナンキュラス

「海の近くだと花が枯れちゃうだろうから

ミズウミの近くにでも建てようか。」


アイビー

「そうだね。...ん?ちょっと待って

それってーーー」


  ラナンキュラス遮る様に

「アイビー=へデラ=ポーチス」


アイビー

「え?」



ラナンキュラスはヒザマズ

アイビーの左手を取った。


ラナンキュラス

「死が2人をワカつまで

共に過ごそう。





結婚してくれアイビー。」



アイビー

「...ラナン。私...ラナンにーー」


  ラナンキュラス遮る様に

「YESと言ってくれないのかい?」


アイビー

「もちろんYES...」


ラナンキュラス

「分かってるさ。

心配しないでアイビー。

この戦争が終わったら

ハネムーンついでに旅にでよう。

その先で式をあげよう。」


アイビー

「...うん。」


ラナンキュラス

「よし。今日から君は僕の婚約者だ。

結婚式には

バンジャマン家も他の貴族達も呼んで

盛大に祝おう!!」


アイビー

「うん!!みんな呼ぼ!!」


ラナンキュラス

「ありがとうアイビー。愛してる。」


アイビー

「いつもありがとうね。ラナン。

私も愛してる。」



アイビーはうなじをさすりながら

ラナンキュラスを見た。


ラナンキュラス

「うん?どうしたんだい?」


アイビー

「ううん。何でもない。」



そして、ラナンキュラスは

ポケットから指輪を取り出して

アイビーの指に

大きなダイヤモンドの指輪をはめた。

それは、月明かりと海に照らされて

青く、青く輝いていた。


アイビー

「マリンブルー...すごく...綺麗...。」


ラナンキュラス

「君にこそ相応フサワしい。」


アイビー

「ありがとう...ラナン」





そして現在

アイビーとラナンキュラスは

天井を見上げていた。


ラナンキュラス

「つい最近の出来事なのに

遠い昔のように感じるのは何故だろう...」


アイビー

「遠い昔の事だからよ。」


ラナンキュラス

「フフッ。何を言ってるんだい?」


アイビー 遮る様に

「ラナン。あなたは戦わないといけない。」


ラナンキュラス

「え?何を言ってッッ」



景色がグルンッと変わり

光あふれる世界に2人は立っていた。


ラナンキュラス

「ん?どう言う事だ...ここは...」



神妙シンミョウな顔で

アイビーはラナンキュラスを見ていた。


アイビー

「ラナン。思い出して。」


ラナンキュラス

「思い出す?一体何を?」


アイビー

「あなたはジギタリアスと...」


ラナンキュラス

「ジギタリ...アス?

グッ...ジギタリアス?

やめろ!!やめろ!!やめろやめろやめろやめろぉお!!」


アイビー

「ラナン!!!!!!」


ラナンキュラス

「僕は...僕は...」


アイビー

「聞いて。」


ラナンキュラス

「...アイビー...アイビー!!!!!!」


アイビー

「あなたに伝えたい事があるの。」


ラナンキュラス

「はぁ...はぁ...伝えた...い...事?」



アイビー

「私は...アイビー=へデラ=ポーチス」



ラナンキュラス

「どう...したんだい?」





アイビー

「...じゃない。

私はアイビー=へデラ=フォックス」


ラナンキュラス

「なん...だ...と?」





アイビー

「そう。ジギタリアスの娘よ」





ラナンキュラス

「嘘だ!!!!!!嘘だ!!!!

これはジギタリアスの神滅兵器シヴァか!!!

グッ!!これほどまでに僕を!!!

アイビーを!!!!」



アイビー

「最後まで聞いて!!!!ラナン!!

あなたは葡萄染麒麟エビゾメキリン能力チカラ

魂が冥府の世界へ来てる。

まだ分からないの!?!?

葡萄染麒麟エビゾメキリンはあなたを生かそうとしてる!!

なのに!!!!あなたは死にたがってるの!!!

しっかりして!!!ラナンキュラス!!!!!

あなたは神に選ばれた鞘花ショウカなのよ!!」


ラナンキュラス

「アイビー...僕は...」


アイビー

「生きて!!!生きるのラナン!!!!

お願い...だから...。」


ラナンキュラス

「アイビー...」



ラナンキュラスは周りを見渡すと目を細めた。


ラナンキュラス

「冥府の世界...雷霆ノ贄エルトールソーア能力チカラか...

じゃぁ、本当に君は...もう...いな...い...

でも待ってくれ!!!本当にジギタリアスが父なら

何故君を殺したんだ!!!!!!

何故、娘を...」


アイビー

「あの日の全てを話すわ。

お願い。葡萄染麒麟エビゾメキリン。」



そう言うと景色がまたもやグルンッと変わり

ラナンキュラスの前に映像が浮かび上がった。





数年前、ジオザ海峡

ラミオラス帝国 海王水軍"トリトン"の

巨大戦艦"藏亜10クラーケン"内部通路


  アイビー息を切らしながら

「はぁ、はぁ、はぁ...」



アイビーは奥の通路を曲がると

奥の扉をノックした。


アイビー

  コンコンコン不規則なリズムで叩く


ジギタリアス

「誰だ。」


アイビー

  コンコンコンコン不規則なリズムで叩く


ジギタリアス

「ん?」


  コンコン不規則なリズムで叩く


ジギタリアス

「この...リズムパターン..馬鹿やろうが!!」



ジギタリアスは周囲を確認すると

急いで扉を開けた。

すると、光彩刃術を解いたアイビーの姿があった。


ジギタリアス

「アイビー!!!」


アイビー

「シッ!!」


ジギタリアス

「ここは大丈夫だ。早く入れ!!」


アイビー

「そう。なら良かった。」


ジギタリアス

「おい!なんでここに来た!!

お前は潜入任務だろうが!!!

ソープワイトとロージアにバレたら

どうする気だ!!!」


アイビー

「分かってる...だけど...」


ジギタリアス

「お前の任務はラナンキュラスと八刃花隊ハチジンカタイの殲滅だ!!

お前がおびき出して俺らが潰す手筈テハズだろうが!!

長年の苦労を無駄にする気じゃねぇだろうな?」


アイビー

「分かってる...分かってる...だけど父さん...」



するとアイビーは自身のうなじを

ジギタリアスに見せた。


ジギタリアス

「...おい。まさか...」


アイビー

「うん。」


ジギタリアス

「こいつぁ... 氷紋華ヒョウモンカ...お前...いつから...」


アイビー

「少し...前から...。」


ジギタリアス

「こんなに...くっきりと...」



ジギタリアスは全身から汗が拭きだし

うろたえていた。


ジギタリアス

「アイ...ビー」



氷紋華ヒョウモンカとは

裏切らぬように制約を結び

目的を達成した後

消える紋様モンヨウのことを指す。

制約違反した場合、内側から氷の種が芽吹き

胸を氷柱ツララツラヌかれる。

その時点で術者に制約違反が瞬時に伝わる。

制約違反まで色の濃さが警告を示しており

アイビーの紋様モンヨウ

くっきりと青白くなっていた。

しかし、この術の恐ろしさは

一度発動すれば術者以外は

解除する事ができない点である。



アイビー

「父さん、私から最初で最期のお願い聞いてくれる?」



ジギタリアス

「最初で最期のお願い...だと?

まさか...俺らを裏切ったのか!!!!!

なんでだ!!!!アイビー!!!!」


アイビー

「だって私...」


ジギタリアス

「だってじゃねぇ!!!!

氷紋華ヒョウモンカは破れぬ誓いだ!!

それに発動まで時間がねぇー!!!!

すぐにでも発動しちまうじゃねぇか!!

待ってろ!!!俺の傀驕壊操アトランティカ

隷属レイゾク出来るか試してやる!!!」


アイビー

「いいのよ。もう。」


ジギタリアス

「よくねぇ!!!!」


アイビー

「芽吹けば最期。どうせ殺されるなら

ロージア様じゃなくて父さんがいい。」


ジギタリアス

「やめろ...俺には...出来ねぇよ...」


アイビー

「お願い!!!!

芽吹いたら裏切りがバレる!!!

そうなったら海王軍はどうなるの!?

トギリや他の部下達も処刑されるの!!!!」


ジギタリアス

「だったらなんで!!!!!

俺達を裏切るようなマネをしたんだ!!!!」



アイビーは涙を浮かべて笑顔で答えた。





アイビー

「だって...好きになっちゃったんだもん。」



ジギタリアス

「なに!?

まさか...ラナンキュラスをか!?」



アイビー

「うん。」



そのはっきりとした声に

ジギタリアスは呆気アッケにとられた。


ジギタリアス

「ふざけん...じゃぁ...ねぇ...

大切な娘を...大切な一人娘を殺してぇ親なんかいねぇ!」


アイビー

「ワガママだって分かってる。

でも、私をロージア様の手で殺させないで!!!

あんな奴に殺されるくらいなら...私は!!!!」


ジギタリアス

「馬鹿野郎が...。

強情なのは...俺譲りかよ。」


アイビー

「父さんは海王軍のみんなが好きでしょ?

私の事を父さんが殺せば

ロージア様だって処罰は下さない。

今まで通りやっていける。

今私に出来るこれが最善の策なの。」


ジギタリアス

「...ロージアはお前が裏切る事を

見据ミスえてやがったのか...アイビー。

いつ氷紋華ヒョウモンカを刻まれたんだ?

実際に会ったのか?」


アイビー

「分からないけど...突然浮かび上がったの。」


ジギタリアス

「時限式刃術ジンジュツタグいだな。

それほどの実力者は...

ゲイジュか...いや、ベロニカ...それとも...」



すると、戦艦が大きく揺れ始めた。



アイビー

「グッ!!父さん!!」


ジギタリアス

「来たか...ラナンキュラス...」


アイビー

「もう時間がない。

外に出れば恐らく観られてる。

だから、容赦なく私を殺して!!!!

出来るだけ残忍に!!!!!!

ロージア様に見せるの!!忠誠を!!!」


ジギタリアス

「...出来ねえ。俺にそんな事...」


  アイビー震える声で

「やるしか...ないの...やるしか...」


ジギタリアス

「怖ぇだろうに...震えてんじゃねぇか...」


  アイビー震える声で

「怖...く...ないよ。」



アイビーは震える手で

自身の身体をギュッと抱きしめていた。

娘のその様子を見ていたジギタリアスは

胸が張り裂けそうな想いを

必死で抑えながら悲しげな目で見つめていた。


ジギタリアス

「ラナンキュラスには...なんて言うつもりだ。」


アイビー

「何も言わない。

私は八刃花隊ハチジンカタイ副隊長として、

父さんは海王軍の団長としてあくまでも居て。

だけど、あんまりやり過ぎちゃダメだよ?

ラナンも強いけど...

きっと父さんには敵わないからさ。今はね。

それにもし、真実を知ったら...」


ジギタリアス

「ラナンキュラスには黙ってろって事か?

氷紋華ヒョウモンカの事もロージアの事も。」


アイビー

「ラナンと父さんは敵同士。

きっと氷紋華ヒョウモンカの事を知れば

ラナンはロージア様に挑む。

そしたら絶対にラナンは死んじゃう。

だから!!!

その事は...言わないで。」


ジギタリアス

「...恐らく挑む。そして、死ぬ。

アイビー...それでいいんだな。」


アイビー

「うん。

ラナンキュラスには生きてほしいから」


ジギタリアス

「いずれはぶつかるぞ。」


アイビー

「分かってる。

だけど、今はまだ...」


ジギタリアス

「俺が強く...してやる。」


アイビー

「え...?」


ジギタリアス

後生ゴショウの頼みだろ?

普段だったらぶん殴ってるが

お前にも時間がねぇ...

俺にも選択の余地なんてねぇ。

心配するなラナンキュラスは...任せておけ」


アイビー

「ありがとう。」



そう言うとジギタリアスは

パイプをくわえ天井を見上げた。


ジギタリアス

  フゥーー煙を吐く

アイビー。氷紋華ヒョウモンカが発動する前に

泡盛アブクサカンで治癒を始めろ。

それと、薬毒系の刃術ジンジュツで痛みを緩和カンワし続けろ。

二重詠唱は出来るな?麻痺させれば幾分マシだろうよ。

凍りつく事もねぇ。」


アイビー

「分かった。

もう、時間がないから今かけておくね...。」

照刃ショウハ 三十八サンジュウハチ 泡盛アブクサカン

照刃ショウハ 四十一シジュウイチ 芍薬甘草プロポ フォルフィン



アイビーが胸に手を当てると

身体中から泡が吹き出し身体を包み込む。

そして、緑色に光る煙が

スッとアイビーの鼻に入っていった。


アイビー

「私ね、父さんにも助かって欲しい

ラナンキュラスにも助かって欲しいの。

ワガママばかりでごめんなさい。

あともう一つ。」



ジギタリアス

「なんだ」


アイビー

「私の遺体はラナンキュラスに。」


ジギタリアス

「お前...それほどまでに...アイツを...」


アイビー

「うん。すごく大事にしてもらってる。」


ジギタリアス

「そうか。幸せだったのか。」


アイビー

「うん。」


ジギタリアス

「...もう行け。」



アイビーは背を向けて扉に手をかけたその瞬間

ジギタリアスの方を振り向いた。





アイビー

「あなたの娘に生まれて良かった。」



その言葉にジギタリアスは

溢れる涙を抑える事が出来なかった。



ジギタリアス

「馬鹿野郎!!!ゥグッ...ゥグッ!!

俺もだぁ...お前の父さんになれて...良がっだ!!!

こんな世界に...ゥグッ...産んじまって...!!

ごべんなぁあ!!!

ごべんなぁあ!!アイビー!!!!!」


アイビー

「父さんの夢。応援してる。

一足先に、母さんの所に行っーーーー」





次の瞬間、パリンッとアイビーの胸から

氷柱ツララが飛び出した。



ジギタリアス

「アイビー!!!!!!!!!」


アイビー

「ガハッ...」


ジギタリアス

「アイビー!!待ってろ!!その氷を砕いてやらぁ!!

ゾォリャァア!!!!!!」



ジギタリアスは何度も何度も氷を砕いた。


ジギタリアス

「はぁ...はぁ...これで...ラナンキュラスにも

別れの挨拶が...できる...だろうよ...」


アイビー

「ありが...とう」


ジギタリアス

「行くぞ...ゾォリャァ!!!!」



ジギタリアスは血塗れのアイビーを抱えると

戦艦の天井を突き破って看板へと飛び出した。



ラナンキュラス

「何故逃げた先にこんなにも伏兵が、、

まさか、、追い込まれたのか、、

それに、、何故ここにお前がいるんだ!!」



ラナンキュラスは手に汗を握り締めながら

目線の先にいる男を睨んでいた。



ラナンキュラス

「海王水軍 大提督ダイテイトクジギタリアス!!!!!」



そして映像がバチンと消えてしまった。



ラナンキュラス

「アイビー...君は...」


アイビー

「ラナン...怒らないの?」


ラナンキュラス

「何をだい?

君がラミオラス帝国のスパイだったことかい?

それとも名前すら違った事かい?嘘をついてた事かい?」


アイビー

「...全てよ。」


ラナンキュラス

「フフッ。女の嘘は許してあげるものさ。

それに、僕が気にすると思うかい?

だって、君は...最後まで僕を...僕を...」


アイビー

「ラナン。」


ラナンキュラス

「なんだい?」


アイビー

「もう、私の事はいいから。

私の事はもういいから。」


ラナンキュラス

「何を言ってるんだ...

僕は、君を永遠に愛す。

例えこの身が滅びても。」


アイビー

「ウフフッ。相変わらず...嬉しいなぁ...」


ラナンキュラス

「当たり前さ。」


アイビー

「ラナン...」


ラナンキュラス

「なんだい?」


アイビー

「父さんの事は...恨まないで...」


ラナンキュラス

「...ぁあ。もし恨んだら君が悲しむだろ?

それに...全てはロージアが仕組んだことだ。」


アイビー

「ロージアとは...戦っちゃダメ。」


ラナンキュラス

「何故だ!!!

君を追い詰めたのはロージアじゃないか!!!!

僕はそれを知らずに

何年も君の父さんを恨み続けた!!」


アイビー

「ロージアは次元が違うの!!!

絶対に戦わないで!!!!」


ラナンキュラス

「僕は許せない。

君の人生を苦しめたのはアイツだ!!!!」


アイビー

運命の終末ディステルニドン...

きっといつか分かるわ。」


ラナンキュラス

「君までその事を...」


アイビー

「ウフフ」



アイビーは悲しげに笑っていた。



アイビー

「最期にもう一つ...」


ラナンキュラス

「最期?」


アイビー

「一番、大切なことよ。」



すると、アイビーはゆっくりラナンキュラスに近づいていった。

しかし、伸ばした手はすり抜けた。


ラナンキュラス

「アイビー...」



アイビー

「ラナン...」





アイビー

「…私のことは忘れて下さい。」



ラナンキュラス

「僕には...出来ないよ。」


アイビー

「前に進んで。

鞘花ショウカとして世界を守るの。

だってラナンはみんなの王子様でしょ?

私が愛した人はそういう人よ。」


ラナンキュラス

「僕にはまだ!!!君が!!!」



ラナンキュラスはアイビーの方を振り向いた。

その瞬間





アイビー

「ごめんね。ラナンキュラス」



ラナンキュラス

「ァ...ァ...」



今にも消えてしまいそうなアイビーが

ラナンキュラスの頬に手を当て

互いに涙を流しながら

そっと、口付けをした。





アイビー

「さようなら。世界で一番愛し...た...ひ...」





アイビーは光に包まれ





ゆっくりと





消えていった。





ラナンキュラス

「アイビィィィィィイ!!!!!」






そして場面戻り、カエデの間


無憂児ムユウジ

「これは一体...。」


菩提ボダイ

氷紋華ヒョウモンカ...もちろんアイツの仕業だ。」


無憂児ムユウジ

「まるで菩提ボダイ様の様な...」


菩提ボダイ

「問題はそこじゃねぇんだよ。」


無憂児ムユウジ

「と言うと?」



すると菩提ボダイは両目を閉じて

片手で祈り始めた。


菩提ボダイ

三世諸仏サンゼーショーブツ 依般若エーハンニャー波羅蜜多故ハーラーミーターコー

得阿耨多羅トクアーノクターラー 三藐三菩提サンミャクサンボーダイ



そして、カッと目を見開いた。


菩提ボダイ

『『 天賜宝武 シャカ... 如来六叶ニョライリッカ!!』』

三世天明サンゼテンミョウ!!!!!!!』



無憂児ムユウジ

「これは!!!」



  神々コウゴウしく両目が金色コンジキに輝くと

断片的に映像が流れ始めた。



無憂児ムユウジ

「どう言うことでしょうか...菩提ボダイ様」



断片的に映し出された映像には

ラミオラス帝国の軍艦に取り囲まれ

血を流すジギタリアスの姿があった。



菩提ボダイ

「ぁあ。この物語の結末だ。

いや、始まりかもしれねぇな...トギリ」





作者 REN’sJackson

千刃花センジンカ帝国特務戦闘部隊テイコクトクムセントウブタイ〜ー

総集篇  The Battle ofバトル オブ Digitaliasジギタリアス (完)






おまけ






冥府大監獄ゲヘナプリズンから脱出したジギタリアス  一行イッコウ

地図にも記されていない南国

宴と海賊の島"アイカ"の入江にいた。

アイカは彩豊かな花々が愛らしく咲きほこり

潮風が心地よく吹き抜けると

花びらが舞い上がるとても美しい島だった。

ここに住む者達は

ならず者や訳ありな者ばかりだが

ジギタリアスをシタ

陽気で明るい者達ばかりだった。

ジギタリアスは世界中で

海賊行為を繰り返しながら旅をしては

戦争孤児や行き場のない者を船に乗せ

アイカに連れて行った。

そして、トギリにとっても故郷である。

そう、ここはジギタリアスが支配する国

海賊国家アイカである。



トギリ

「おっさん。なんで帰ってきたんだ?

そんな身体ならシンシャドゥールに

行った方が良くねぇか?

俺が治すよりもちゃんとーーー」


  ジギタリアス遮る様に

「ガッハッハッハッ!!

分かるだろ?坊主?」


トギリ

「...分かりたくねぇよ。」


ジギタリアス

「見ろ坊主。あそこのヤシの木の傷

覚えてるか?」


トギリ

「覚えてねーよ。」


ジギタリアス

「俺ははっきり覚えてらぁ

坊主がガキだった頃

身長が伸びる度にあの木で測って

わざわざナイフで切り傷いれたんだからな。」


トギリ

「そうだっけか?」


ジギタリアス

「あの頃の坊主は生意気な坊主だったなー」



そう言うとジギタリアスは

懐かしむ様に空を見上げた。


トギリ

「ふざけんな。

いつまでも坊主扱いすんじゃねーての。」


ジギタリアス

「ガッハッハッハッ!!」



ジギタリアスは大笑いした後

大きな溜め息をついた。


ジギタリアス

「ふぅーーーー。

俺からすりゃぁ、

あの頃となんら変わんねー

生意気な坊主のままだ...」


トギリ

「...おっさん。」


ジギタリアス

「何だ?坊主」



トギリ

「本当はおっさーーー」


  ジェシカニーパ遮る様に

「いやぁーん!!真珠めっけ!!!」



ジェシカニーパ

「ウノ、ドス、トレス、クワトロ、シンコ、チンコ、あっ違った。セイス!!

6個の真珠めっけ!!!いやーん!!

素潜り最高!!オカマの登場!!!

おっ待ったせ...ぇえええ!!!!??」


トギリ

「うるせーなースイ...ちげぇな。

ジェシカニーパか。」


ジェシカニーパ

「ピンポンタンポン!!

さっすがねギリちゃん!!んーーバッ❤︎」


トギリ遮る様に

「汚ねぇ!!!」


ジギタリアス

「ガッハッハッハッ!!

相変わらず面白れぇ女だ!!」


ジェシカニーパ

「ねぇ!見てみて!!

ゴリッゴリ真珠が取れたの!!!

ゴリッゴリ!!!!」


トギリ

「で?スイセはどうした??」



そう言うとジェシカニーパは

神妙な面持オモモちになった。


ジェシカニーパ

「出てきたくないそーよ。」


トギリ

「そうか。」


ジェシカニーパ

「だってジギおじちゃまが...」


トギリ

「だってよ?おっさん。」


ジギタリアス

「ガッハッハッハッ!!

お前らは昔から勘だけはいいな!!」


ジェシカニーパ

「女の勘は当たるのよ。」


ジギタリアス

「なぁに。最後に見たかったのさ

お前達とこの景色をな。」


トギリ

「何だそれ。景色ぐらいーー」


ジギタリアス遮る様に

「俺はラミオラス帝国を去る。」


ジェシカニーパ

「え...本気なの?」


トギリ

「どう言う意味か分かってんのか?」


ジギタリアス

「ぁあ。」


ジェシカニーパ

「なるほど...セシーに

嫌な役目負わされちゃった。」


ジギタリアス

「おっと。説得なんか意味ねぇぞ?」


ジェシカニーパ

「説得?する訳ないじゃないの。

ジギおじちゃまが聞く訳ないもの。」


トギリ

「去るってことは

神滅シヴァも返してもらう事になる。

それは...死ぬって事だ。」


ジギタリアス

「返す訳ねぇだろ?」


ジェシカニーパ

「ラナンキュラスと戦って死んだ事にしても

神滅シヴァがないんじゃ信用されないわよ。

っていうかラミオラス帝国最強の神滅適合者ラグナロク

死ぬ訳ないでしょ。

ロージア様には見え見えの嘘よ。」


ジギタリアス

「だから俺は帰らねーんだよ。

ラナンキュラスも育った。

トギリもスイセも育った。

俺の役目は終わった。

俺は俺らしく自由に生きる。」


トギリ

「...自由に?」


ジェシカニーパ

「まさか...」


トギリ

「ナーベルク帝国にいくつもりか!!」


ジェシカニーパ

「国を裏切るの!?!?」


ジギタリアス

「行くかよあんな地獄みてぇな国。

表は華やかだが裏は相当やばいのは

お前らも分かってんだろ?

皇族と六大貴族は大罪人。

世界を変えた悪魔の血族だ。

あの国は潰さなきゃなんねぇ。

だが...その役目はお前達がやれ。

これから俺はアイビーが育ったこの国で

生きていきたい。

そして、アイカと同じ墓に入って

アイビーとアイカと親子3人で

また暮らしてぇんだ。」


トギリ

「おっさん...。」


ジギタリアス

「海王水軍はお前が継げ

奴らも文句ねーだろうよ。」


トギリ

「みんな、おっさんをシタってんだ。

おっさんについてくだろうよ。」


ジェシカニーパ

「そうね。だからわざわざ

みんなをここに呼んだんでしょ?」



ジェシカニーパがそう言った瞬間

海王水軍の面々がぞろぞろと海から

そして町からやって来た。


ジギタリアス

「お前ら...」


トギリ

「水臭え事しそうだから

連れて来ておいてやったぜ。

話しはしてある。

おい!!お前ら!!!

ジギタリアス大提督が

ズラからるつもりらしい!!

お前達も置いてくって言ってるぞ!!」



するとブーイングの嵐が

ジギタリアスに向けられた。


ジェシカニーパ

「海王水軍はジギおじちゃまが

拾ってきたムサくてクサイ男達でしょ?

そんな汚いもの置いてかないでよね!

イタッ!!ちょっと誰よ!!

ワカメ投げたやつ!!!!

出てこいや!!!!!」


トギリ

「おっさん。海王水軍が抜けた穴は

他の帝国兵で埋められる。

心配すんな。それに見てみろ。

みんなラミオラス帝国抜けて

おっさんについて行くつもりだぞ?」


ジギタリアス

「大バカ野郎どもだ」


トギリ

「覚悟は出来てんだろ?

神滅適合者ラグナロク退役タイエキはねぇ。

あるのは戦死のみ。

それ以外に逃れられるスベなんてねぇ。

ロージア様、ひいてはソープワイトや

ルビウス達が黙ってねーぞ。」


ジギタリアス

「分かってる。

そん時はそん時だ。」


トギリ

「死ぬ覚悟はあんのか?」


ジギタリアス

傀驕壊操アトランティカがあれば

どうにでもなる。

風とシオの流れに身を任せるさ」


トギリ

「ロージア様にそんな道理は通じねーぞ。」


ジギタリアス

「こうなる事は予見してただろうよ。

アイビーが死んだあの日からな。

それが今日か明日かって話しだ。」


トギリ

「そうか...おっさん。

次会う時は...敵同士になるぜ?

その時は団長として立ちはだかる。」


ジギタリアス

「ガッハッハッハッ!!

だろうよ!!!!

それがスジだ!!!

...だから見たかったんだよ。

この場所で、最後に...お前達とな。」


トギリ

「...そうか。」


ジェシカニーパ

「ジギおじちゃま...」



さざ波の音、鳥の鳴き声が

ゆっくりと流れていく。

すると、ジギタリアスが

静かに口を開いた。


ジギタリアス

「...アイビーのいない世界に

俺はもう...興味なんてねぇーんだよ。」



そう言ってジギタリアスは

パイプに火をつけて

フゥーーーッと煙を吐く。



ジギタリアス

「フゥーーッ...わりぃな坊主。

最後まで迷惑かける。」



その言葉を聞いた瞬間

走馬灯の様にトギリは

これまでの出来事

ジギタリアスとの出会い。

そして、共に歩んで来た道を

思い出していた。





時は大きくサカノボ

2人が初めて出会ったあの日


ジギタリアス

「おい、俺から宝を盗もうなんざ

大した度胸じゃねぇか坊主

覚悟は出来てんだろな?あん?」


トギリ幼少期

「うるせぇ!!!

こんだけあるんだから

少しぐらい良いだろ!!」


ジギタリアス

「少しぐらいだと??

両手に抱え切れてねぇのにか?

ガッハッハッハッ!!

面白れぇ坊主だ!!!!

やるよ。」


トギリ幼少期

「え?」


ジギタリアス

「ほら、もうちょっと持ってけ」


トギリ幼少期

「いいのか!?!?」


ジギタリアス

「これだけあれば

しばらくは生きていけるだろうよ。

家に帰って親でも喜ばしてやれ」


トギリ幼少期

「...親なんていねぇ」


ジギタリアス

「...そうか孤児ミナシゴか。

別に珍しくもねぇな。

消えろ。気が変わらねぇうちにな。」



数日後


ジギタリアス

「おい、また来たのか坊主。

宝はくれてやったろ。」


トギリ幼少期

「...礼を...言ってねぇ。」


ジギタリアス

「礼?いらねぇよ。

俺の気まぐれだ。」


トギリ幼少期

「...助かった。

飯も久しぶりに...食えた。」


ジギタリアス

「そりやぁ良かったじゃねぇか。

ほら、家に帰れ。」


トギリ幼少期

「...家なんてねぇ。」


ジギタリアス

「......坊主、名前は」


トギリ幼少期

「トギリ。」


ジギタリアス

セイはねぇのか?」


トギリ幼少期

「...ねぇ。」


ジギタリアス

「急に歯切れが悪りぃじゃねぇか。

み名でもあるめぇし」



するとトギリはバツが悪そうな顔をした。


ジギタリアス

「...坊主、名前は?」


トギリ幼少期

「...ねぇって!!」


ジギタリアス

「...嘘つくなら

別の名ぐらい用意しとけ。

宝が欲しいならやるよ」


トギリ幼少期

「え...こんなに!?」


ジギタリアス

「その代わり...」



するとジギタリアスは

トギリの襟首エリクビを持って歩き始めた。


トギリ幼少期

「な、何すんだ!!!!離せ!!」



ジギタリアスは船の中に連れていき

扉を開けトギリを風呂に突っ込むと

ジギタリアスも服を脱ぎ

トギリの頭や身体を石鹸でゴシゴシと洗った。


トギリ幼少期

「やめ!!やめろ!!」



そして、トギリを浴槽に向かって投げると

ザバーンッと自らも湯に入った。


ジギタリアス

「ふぅー!!風呂は気持ちいいな!!

...坊主。家がねぇのか。」


トギリ幼少期

「ねぇ。」


ジギタリアス

「そうか。汚ねえもんな!!

ガッハッハッハッ!!!」


トギリ幼少期

「うるせぇ!!!」


ジギタリアス

「風呂入ったら飯だ。

信じられねぇぐらい美味い飯を

食わせてやる。死ぬほどな!!」


トギリ幼少期

「ほ、本当か!?!?」


ジギタリアス

「ただし、名乗らねぇなら

食わせてやれねぇな!!!」


トギリ幼少期

「卑怯だ!!!!!!」


ジギタリアス

「俺が食わせるんだ。

俺の言う事聞かねぇ奴に

食わせる義理はねぇ!!」


トギリ幼少期

「グッ...トギリ=ヴェルモー...ル...」


ジギタリアス

「何て言ってんだ??」


トギリ幼少期

「トギリ=ヴェルモール=ポセドニア!!」


ジギタリアス

「...良い名前じゃねぇか。」


トギリ幼少期

「...笑わない...のか??

絵本に...出てくるポセドニアだぞ?」


ジギタリアス

「なんでテメェの名を

名乗ったぐれぇで笑うんだよ。」


トギリ幼少期

「だって...

みんな、この名を聞いた途端に

態度も!!!顔色も!!

全部変わるから!!!!」


ジギタリアス

「何もおかしくねぇさ。

言っただろ?良い名前じゃねぇかってよ。」


トギリ幼少期

「本当か!?」


ジギタリアス

「ぁあ。」


トギリ幼少期

「...おっさんの名前は?」


ジギタリアス

「俺か??俺は

ジギタリアス=サックビー=フォックス!!

世界に名を馳せる大海賊!!

海王水軍トリトン大提督!!

海王軍の団長だ!!!」


トギリ幼少期

「プッハハハ!!嘘つけ!!」


ジギタリアス

「嘘じゃねぇ!!

この...クソ坊主が!!!!」


トギリ幼少期

「や、やめろよ!!!」


ジギタリアス

「ガッハッハッハッ!!

おし!!次は飯だ!!!!」



そう言ってジギタリアスは

立ち上がると身体を拭き服を着た。

ーーその日の夜ーー


トギリはジギタリアスの船の甲板カンパン

夜空を見上げていた。



ジギタリアス

「なんだぁ坊主。眠れねーのか?」


トギリ幼少期

「...うん」



するとジギタリアスは

トギリの横に寝転がり

一緒に夜空を見上げた。


トギリ幼少期

「な、なんだよ!!」


ジギタリアス

「なんで眠れねぇんだ。」


トギリ幼少期

「...俺のいる場所は

眠ると人攫ヒトサラいが来んだよ」


ジギタリアス

「怖ぇのか?」


トギリ幼少期

「別に...」


ジギタリアス

「夜も眠れねぇ。飯も食えねぇ。

金も家もねぇ。坊主には何もねぇ。」


トギリ幼少期

「うるせぇ。」


ジギタリアス

「ガッハッハッハッ!!!

こんな世界

嫌になっちまうな!!」


トギリ幼少期

「死んじまった方が楽だ。

腹も空かねぇし何も考え無くてもいいしよ。」


ジギタリアス

「...坊主。夢ぐらい持ったって

いいんだぜ?」


トギリ幼少期

「話し聞いてたのかよ...」


ジギタリアス

「夢を持つのに金はいらねぇからな。」


トギリ幼少期

「そもそも生きる理由もねぇんだ。

夢なんて持てるかよ。めんどくせぇ。」



するとジギタリアスは

遠くの星を眺めながら

静かに口を開いた。


ジギタリアス

「俺の夢はなぁ坊主。

でっけぇ島に国を作って

自由に暮らすことだ。

王もいねぇ、ややこしい法もねぇ。

誰もが平等に暮らせる島を作る。

ん?なんだ坊主」


トギリ幼少期

「...意外と普通...だな」


ジギタリアス

「ガッハッハッハッ!!

そんな事ねぇさ。

争いが続くこの世界で

平穏を願うってのは

ありきたりだが...難しい。

普通ってのが1番難しいんだよ。

坊主も俺も...普通じゃねぇだろ?」


トギリ幼少期

「...将軍のくせに

戦争の無い世界を願ってんのか?

戦争する奴なんて...みんな悪だ!!」


ジギタリアス

「坊主。覚えとけ。

戦争ってのは

どちらも正義だから起こるんだ。」


トギリ幼少期

「どちらも...正義?」


ジギタリアス

「国や人を救いたい

飯が食いたい。誰かを守りたい。

豊かになりたい。支配したい。

戦争には必ず理由がある。

じゃねぇと...

万もの軍や人を動かす事は出来ねーよ。

みんな、オノレを信じて、

誰かを信じて突き進む。

それでヨウヤく...

自分は間違ってない。って思える。

じゃねぇと戦争なんて誰もしねぇよ。」


トギリ幼少期

「戦争がしたいから戦争する奴もいるだろ?」


ジギタリアス

「ガッハッハッハッ

中にはいるかもな!!!!

だが...そいつは

正義なんかじゃねぇ。悪だ。

純粋な悪。俺らの本当の敵は

そう言う奴らだ。」


トギリ幼少期

「ナーベルクの奴らは...」


ジギタリアス

「アイツらとの話しは

遥か昔の話にサカノボっちまうからなぁ。

聞きたいか???」


トギリ幼少期

「うん!聞きたい!!」


ジギタリアス

「びびんなよ!?」


トギリ幼少期

「び、びるわけねぇーだろ!!

俺は男だぞ!!!!」


ジギタリアス

「ガッハッハッハッ!!

生意気な坊主だ!!

よし、話してやる!!

運命の終末ディステルニドンって知ってるか?」


トギリ幼少期

「知らねー」


ジギタリアス

「じゃぁ、まずはこっから話してやろう。

遥か昔、天空山テンクウザンにいた僧侶たちの争いから

全ての物語が始まる...」



星空の下でトギリは

ジギタリアスの話しを

食い入るように聞いていた。

そして話し終わる頃には

トギリはジギタリアスの膝の上で

寝息をたてて眠ってしまっていた。


ジギタリアス

「ポセドニア...の子か。

数奇な運命だな。ロージア...」



ーー翌朝ーー


ジギタリアス

「ぉー!起きたか坊主!!!」


トギリ幼少期

「よ!おっさん!

俺はそろそろ帰るーーーー」


  ジギタリアス遮る様に

「俺と来いトギリ!!

連れていってやる。」


トギリ幼少期

「はぁ!?」


ジギタリアス

「最近見つけた島に連れてってやる。

地図にも載ってねぇ秘境だ。

今、そこに人を集めて

国を作ろうとしてんだ。

飯も女も絶品だぜ!?

特にアイカって女が

べっぴんでよぉ!!」


トギリ幼少期

「き、聞きたくねーよ!!」


ジギタリアス

「...どうだ?坊主。」


トギリ幼少期

「...俺は」


  ジギタリアス遮る様に

「って言っても

もう着くがな!!!!!

ガッハッハッハッ!!!」


トギリ幼少期

「え!?

行くなんて一言も言ってねーよ!!

うわ!!本当だ!!ここどこだ!!」


ジギタリアス

「もう遅い。

騙された方が悪いんだろうが!!

ここは俺の船だぜ??

どこへ行くのにも

俺の自由じゃねぇか!!

ガッハッハッハッ!!」


トギリ幼少期

「なんだよそれ!!!

人攫ヒトサラいじゃねぇか!!」


ジギタリアス

「ガッハッハッハッ!!

チゲぇねぇな!!!!

心配すんな!飯も仕事も女もいる!!

今まで見れなかった夢も見れる!!

ここなら生まれも育ちも関係ねぇ!!

いいか?坊主!!

この島で、デッケェ夢でも見つけな!!」


トギリ幼少期

「デッケェ...夢..か...」



そして、現在

宴と海賊の島 アイカの入江にて



  トギリ泣きながら

「...礼を言うのは

こっちだっつーの。

...世話に...なったな...」


  ジギタリアスそっけなく

「おう。」


  トギリ泣きながら

「あんたがいなきゃ俺は...死んでた」


  ジギタリアスそっけなく

「...おう。」


  トギリ泣きながら

「こんな俺を...

身寄りのねぇ俺を育ててくれた恩は!!

一生、忘れねぇ!!!!」


  ジギタリアスそっけなく

「...おう。」


  トギリ泣きながら

「簡単にくたばんじゃねぇぞ!!

クソ親父!!」


ジギタリアス

「あたりめぇだ!!!」


  トギリ泣きながら

「クッ...今まで!!

お世話になりました!!!!」



トギリは深々と頭を下げた。



ジギタリアス

「グッ...バカ息子が!!」



ジェシカニーパ

「あらあら...本当不器用ね。男って。」



するとトギリとジェシカニーパ

その場にいたラミオラス帝国兵、

十鬼槍ジッキソウの黒百合部隊の面々が

一斉に並んだ。



  トギリ泣きながら

「ジギタリアス=サックビー=フォックス!!

海王軍副団長及び海王水軍大提督の任を ただ今を持って解く!!

並びに海王水軍兵の同志達よ。

その多大なる貢献に基づき団長の名のモト

感謝の意を表す!!!

全隊!!!敬礼!!!!!!」



陽の光が燦燦サンサンと照りつけ



花びらが優雅に舞う。



そして、むせび泣く男達の泣き声が



潮風に乗って流れていく。



酒をみ交わし



盛大に笑い



盛大に泣いた宴は



夜まで続いていた。



ーー数日後ーー

アイカ南部の港にて

ジギタリアスと元海王水軍兵達は

慣れた手つきで

出航の準備を手早く済ませた。

すると、ジギタリアスは船首に立ち

乗組員ノリクミインを背に

大海原オオウナバラに向かって叫んだ。



  ジギタリアス心の声

((あとは任せたぜ...トギリ))



ジギタリアス

「野郎ども!!!!!出航だ!!」



(完)

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