41話 The scarlet mad bunny

前回までの千刃花センジンカ〜帝国特務テイコクトクム戦闘部隊〜セントウブタイ


煉獄レンゴク 冥府大監獄ゲヘナプリズン

統括する最強の第零監獄スィフィルプリズン看守長

エリカ=ヒースが13日の眠りから目覚め

一刃花隊イチジンカタイ 隊長ツバキと相対アイタイした。

エリカは血液を自在に操る

鮮血の鞘花ショウカ能力チカラにより

空間の鞘花ショウカであるツバキと激戦を繰り広げ

互いに奥義である千年万花センネンバンカを発動した。


エリカ

「ウグッ」


ツバキ

「自らの喉元をツラヌくとは...」


エリカ  不気味に

「殺し合おうよ...ツバキお兄ちゃん」


ツバキ

「この刃汽ジンキ...

"千年万花センネンバンカ"を発動するつもりか。」



エリカ可愛く

「お遊びは終わりにしよ?ツバキお兄ちゃん♪」


ツバキ

「終わりだと?

貴公は何か勘違いしている。」


エリカ

「はぁ?」


ツバキ

千年万花センネンバンカ

鞘花ショウカの技にして最強の奥義

故に、この私にも

千年万花センネンバンカがあるという事を

失念しているわけではあるまい。

貴公こそ、終わりだ。」


エリカ

「ふーん。

じゃぁ比べっこしようよ!!!!

どっちの千年万花センネンバンカが強いかさぁ!!!」



作者 REN’sJackson

千刃花センジンカ帝国特務戦闘部隊テイコクトクムセントウブタイ〜ー

煉獄レンゴク 冥府ゲヘナ大監獄プリズン

Seasonシーズン24 トゥエンティフォー

The scarletスカーレット mad bunnyマッドバニー



エリカの周囲が千刃花センジンカ隊士達の血で

サカ巻いていく

深緋兎コキアケウサギの刀身が輝き出すと

エリカ自身の血液と混ざり合い

血生臭いニオイが立ち込めた。

そして、次々と3メートルはあろう

深緋色コキアケイロの拷問器具の様な形をした武具が

錬成されていった。


エリカ

千年センネン吸血処女•メイデン!!』



一方、ツバキも同じタイミングで千年万花センネンバンカを発動した。

五つの空間が生まれ渦を巻くと

その中心にシキシヨウコウソクの文字が浮かび上がり

ザワザワとネズミの形をした幾千イクセンもの影が

右処刑場ゴラム全体に徐々に広がっていく。


ツバキ

千年鬮鼠•センネンキュウソ無間廻廊•ムケンカイロウ



エリカ

「え!?何!?

ネズミ!?気持ち悪ーい!!

どんどん広がっていくじゃーん!!ガハッ」



エリカは喉元に刺した深緋兎コキアケウサギを引き抜いた。

すると、みるみると血が止まっていく。


エリカ

「エリカさぁー。

自傷行為ってキモいから理解出来ないんだけど

鞘花ショウカになってから

エリカのキズってすぐ血が止まるんだよねー!

でも、深緋兎コキアケウサギって

結構、血を使うから

あんまりやりたくなかったんだけど

ツバキお兄ちゃんがエリカを怒らせたのが

悪いんだよ?

それに...

エリカの家をネズミのテーマパークみたいにするし。

絶対許さないんだから!!!

本当!!ネズミってキモい!!」


ツバキ

「案ずるな。

嵯峨鼠鼠サガネズネズミが天地を覆えば

無明ムミョウの闇が貴公を包む」


エリカ

「真っ暗になるから何?

ネズミが見えなくなったって

いるのは変わんないし!!!!!

それにもうお終いだよ。

一度発動したら

吸血処女メイデンちゃんには

ネズミだろうが闇だろうが

全然、関係ないもんねぇ!!」



ツバキ

「なんだと?」


エリカ

「だってほら。」


ツバキ

「なんだ...ガハッ!!!」


エリカ

「アハハ!!まだだよ?ツバキお兄ちゃん」


ツバキ

「ウグッ!!」



次々とエリカが錬成した吸血処女メイデン

ツバキの足元から噛み付いていく。

ツバキは空間をヘダてる外套マント

偃套 月時雨エントウ ツキシグレで身を包んだが

次々と沸き出て襲い掛かる吸血処女メイデン

挟まれるも

嵯峨鼠鼠サガネズネズミの二刀で抑えていた。


エリカ

「その薄っぺらい外套マント

エリカの千年万花センネンバンカが止められるのかなー?

アハハアハハ!!アハハアハハ!!」


ツバキ

「グッッ!!」



ツバキはグニュンと空間を生み出し上空へ移動した。


エリカ

「ツバキお兄ちゃんダメだよー」


ツバキ

「空中であれば...

貴公の吸血処女メイデンとやらも届か...何!?」



地面から吸血処女メイデンが射出され

ツバキに向かって飛んで来るも

次々と嵯峨鼠鼠サガネズネズミで叩き落としていった。


  ツバキ次の台詞まで

「グッ!!!

ハァァァァ!!!!!!

グッ!!ハァ!!ヴッ!!ォォ!!」


エリカ

「へぇー。頑張るねー!!

おっ!!速い速い!!

すっごい剣サバき速いんだね!!

でも、終わりが見えないんだよねー!!

吸血処女メイデンちゃん無限に沸き出るよ?

エリカ以外の新鮮な血に反応するからね!!

しかも聞いてよ!!ツバキお兄ちゃん!!

自動なんだよ!!すっごい楽!!!

でもね...残念な所もあるの...

ねぇ聞いてる??

ちょっと!!ツバキお兄ちゃん!!!

エリカの話しちゃんと聞けてる??

もう無駄だから挟まれちゃった方が楽だよ?

あっ!!それでね!!

一度、吸血処女メイデンちゃん発動するとね

冥府大監獄ゲヘナプリズン全域に

効果が発動されちゃうの...

怪我してる人達...みんな食べられちゃうの...グスン

食い尽くすまで止まらないんだよね...

でも、エリカ泣かない!!!!

だって!!みんな死ねばいいし!!

ね?ツバキお兄ちゃんもそう思うでしょう?」


ツバキ

天消天涯テンショウテンガイ 花時雨ハナシグレ

「なん...だと...消えぬ...だと?」



半透明の雨が吸血処女メイデンに降り注ぐも

吸血処女メイデン一欠片ヒトカケラも消えなかった。


エリカ

「また雨??嫌になっちゃう!!」



エリカは花時雨ハナシグレ

届かぬ様に素早く後ろへと下がった。


ツバキ

「何層にも血塗られているのか...ならば...」

断絶 月時雨ダンゼツ ツキシグレ



空間が円錐状エンスイジョウにツバキを包み

外側と内側の空間を隔離した。


エリカ

「それさっきもやったじゃーん!!

足元ガラ空きだってばぁ!!」


ツバキ

「だから何だというのだ。

四方八方から襲い来るのと

来る方向が一つと分かっているのとでは

全く意味が違ってくる。

そう、こんな風にな。」

神立鬼洗カンダチオニアライ



ツバキは足元に巨大な空間の渦を展開すると

次々と吸血処女メイデンを吸い取って行った。

その間にも四方八方から吸血処女メイデン

飛んでくるが

断絶 月時雨ダンゼツ ツキシグレの壁にハバまれ

ガンッガンッガンッと音を立てながら

噛み付いていた。



ツバキ

「グッ...まだか...嵯峨鼠鼠サガネズネズミ...」


エリカ

「ふーん。それってさぁ

ツバキお兄ちゃんの刃汽ジンキ持たなさそうだよねー

何も出来ない代わりに

何も受け付けないって事でしょ?

見たらわかるよ?エリカ。

さっきからどんどん刃汽ジンキ量が

減っていってるの。」


ツバキ

「要らぬ世話だ。

貴公こそ何もしていないではないか。

まさか...その千年万花センネンバンカは広大な範囲の分

術者は何も技を発動出来ないのではあるまい。」


エリカ

「そ、そんな事ないもん!!」


ツバキ

「ほぅ...ならば何故、先ほどの花時雨ハナシグレけた?」


エリカ

「と、遠かったから出すまでもなかったし!」


ツバキ

「そうか。

ではこれはどーー」



すると、エリカが走り出した。


ツバキ

「まさか...逃げるのではあるまい」


  エリカ息を切らしながら

「はぁ!!はぁ!!はぁ!!

深緋兎コキアケウサギ!!深緋兎コキアケウサギ!!

返事ぐらいしてよ!!

深緋兎コキアケウサギ!!」


ツバキ

千年万花センネンバンカ鞘花ショウカの技にして最強の奥義。

故に、十余年ジュウヨネンの鍛錬を必要とする。」


エリカ

「何それ!?知らないし!!」


ツバキ

「練度の差に発現も継承も関係のない事。

それに...」


エリカ

「うるさい!!!

エリカの方がずっとずーーっと強いもん!!!

ツバキお兄ちゃんだって全然身動きとれッッ

何これ...」



右処刑場ゴラム全体が無明ムミョウの闇に包まれた瞬間

エリカは立ち止まった。


エリカ

「何したの!?何これ!!!!!

抜け出してやる!!!

抜け出してッッ  え?」


ツバキ

「無駄だ。」


エリカ

「追い...つかれ...た!?」



そして、またもやエリカは走り出した。


ツバキ

「無駄だと言っている。

ここは無間廻廊ムケンカイロウ

出口など無い永久トコシエの闇...」


エリカ

深緋兎コキアケウサギ!!!

深緋兎コキアケウサギ!!!」

血塊杭ブラッドバラン

血塊杭ブラッドバラン

血塊杭ブラッドバラン

血塊杭ブラッドバラン!!!』

「ねぇ!!!何これ!!!

何なのこれ!!!!!!!!!!!」



エリカは深緋兎コキアケウサギを振るったが

何も起こらなかった。


ツバキ

「やはり何も出来ぬか。

教えてやろう。

全ての技には練度がある。

それはどの鞘花ショウカも変わらぬ。

鍛錬をオコタった貴公など

発現したばかりの鞘花ショウカと何ら変わらぬ。」


エリカ

「...エリカの千年万花センネンバンカが未熟だって

未完成だって言いたいの?」


ツバキ

「技はサズけてもらったものの

それをサヤと共に磨かなかったのは

貴公自身。」


エリカ

「何それ... サヤなんて

ただの殺しの道具でしょ!?

まるで人みたいに言わないで!!!!」


ツバキ

「人ではない。神だ。」


エリカ

「エリカは...エリカは選ばれた!!

だから鞘花ショウカになったんだもん!!」


ツバキ

「ぁあ。確かに選ばれたのであろう。

だが、選ばれただけ。という事。見せてやる。

研鑽ケンサンされた本物の千年万花センネンバンカを」


エリカ

「...え」


ツバキ

「堕ちるがいい。」



すると突然、エリカの周りの景色が変わり

自分が育った家のリビングにいた。


エリカ

「ここは...エリカの...家...」



そこには幼いエリカと父が

豪華な食事を待ちわびていた。

コウばしい香りが辺りをタダヨ

エリカは幸せそうに笑っていた。


エリカ

「あれは...エリカが好きなお料理だ...

エリカの...誕生祝い...」



すると、ツバキの声が頭に響く


ツバキ

「裕福な家庭... 仲睦ナカムツまじい両親...

コウばしい料理の数々...」


エリカ

「もうどれくらい食べてないんだろう...」


ツバキ

「懐かしいか?」


エリカ

「...別に。」


ツバキ

「ならば、その記憶は無用だ。」



一閃イッセン、ツバキの姿が現れ

その思い出を斬り裂いた。



エリカ

「やめっーーーガハッ

ゴホッゴホッゴホッ!!

何...を...した...」



ツーーーッとエリカの鼻から血が流れ落ちた。


エリカ

「グッ!!こんな血...すぐに!!」


ツバキ

「止めてみるがいい。」


エリカ

「言われなくーーーえ?どうして!!

どうして止まらないの!!

それに...ニオイ...ニオイがない...

何もニオイがしないよぉおお!!!!」



ツバキ

「貴公の嗅覚を奪ったまで。

さぁ、次はどこへいく?パチン指を鳴らす音


エリカ

「今度は何...」



そこはグラシズ警部補を監禁していた部屋だった。

弱っていく身体を鎖で縛り上げ

エリカは笑いながら喉元を掻っ切っていた。


エリカ

「...グラシズさんの血って美味しかったなー

濃厚だけど少し脂っぽくてさー。

だから少しずつ飲んでたんだけど...

飽きちゃってさ!!!

また飲みたいなぁーー」


ツバキ

「見るに耐えぬ。」



そしてツバキは思い出を斬り裂いた。


エリカ

「アガッ!!!!ゴハッッ!!!」



エリカは大量の血を吐き出していた。


エリカ

「ゴホッ!!ゴホッ!!ゴホッ!!

また...血!!!!!エリカの血!!!」


ツバキ

「味覚を破壊した。

永劫エイゴウ、血など味わえぬ」


エリカ

「そ、そんな!!!!嫌だよぉ!!!!」


ツバキ

「さて、次だ。パチン指を鳴らす音



ツバキが指を鳴らすと

エリカは第零監獄スィフィルプリズンの中にいた。

中途半端に終わらせた拷問のせいで

拷問器具で横たわる半殺しにした囚人のウメき声が

反響していた。


エリカ

「素敵なメロディでしょ?

エリカ死にかけの囚人を並べるのが

大好きなんだー!!!

死ぬ間際の人間って目が死んでるんだけど

ウメいて訴えてくるんだよ?

殺してくれって!!

だけどエリカはあえて殺さないの!!

なんでか分かッッ グハッッッ」



ツバキは問答無用にその思い出を斬り裂いた。


ツバキ

虫酸ムシズが走るパチン指を鳴らす音


エリカ

「あれ...何も聞こえない...何も...!!!

何で!?何でよぉ!!!!!!」



エリカは両耳から血を吹き出し

うずくまると今度はマンサクの家にいた。

そこでは逃げ惑うマンサクの妻の腹を

エリカがエグっていた。


エリカ

「エリカ不思議だったんだよね...

お母さんの子宮ナカって

どんな感じになってるかさ。

気になってみたから開いて見たんだけど

あの熱くて優しいぬくもりの秘密は

分からなかったなー。

でも、仕組みはなんとなーく分かったから

良い勉強になった!!

すっごいピンク色してたのぉ!!!

今でも大切な思い出♪」


ツバキ

「狂気とは貴公の事を言うのだな」


エリカ

「え?どう言う事?やめッッ」



ツバキは問答無用で思い出を斬り裂いた。


エリカ

「アガッッツ!!!!

目が!!!目が!!!!!

目が!!!見えない!!!!

見えない!!!見えない!!!!」


ツバキ

「のたうち回り痛みを知るがいい。

味覚も聴覚も視覚も嗅覚も奪った。

痛みしか感じぬだろう。

だが、それもすぐに楽になる。パチン指を鳴らす音


エリカ

「こ...ここは...真っ暗...

どこ...どこ...あったかい...ここって...まさか...」


ツバキ

「なるほど...。

先ほど貴公が言っていた意味が分かった。

唯一、心の底から感じたぬくもり

ぬくもりから伝わる愛情

ここは母の胎内タイナイか...

まさか生前の記憶があるとはな...」


エリカ

「懐かしい...ママ...のぬくもり...

ママだけが...エリカを愛してくれた...

ママだけが...パパから...守ってくれた。

だけど...ママが眠ったらパパは...パパ...は...

エリカを...無理矢理...無理矢理...」



突然、光が差しエリカは育った家のベッドに

横たわっていた。

そこには息を荒げエリカに覆いかぶさる

父の姿があった。


エリカ

「痛い!!痛い!!!やめてよぉ!!!

パパ!!パパ!!!」



しかし、口をパクパクさせるだけで

声は出ていなかった。


エリカ

「やめっ!!嫌だぁあぁあ!!!!」



毎晩繰り返される痛みに

快感さえ覚えて来た頃

エリカの母がその行為を目撃した翌日

エリカの父は激昂ゲキコウする妻を

屋根から突き飛ばした。

それからの二ヶ月間はエリカにとって

地獄の様な日々だった。


エリカ

「ママも...パパも...

みんな...みんな死ねばいい。

みんな...死ねば...」


ツバキ

「貴公にどんな過去があろうと

私には関係のない事」



そして、ツバキはその思い出を斬り裂いていった。

すると、グニュンと景色が変わり

エリカは母の胎内タイナイに戻っていた。


ツバキ

シキショウコウソク

全てを斬り裂いた。

残るは... ココロのみ...」


エリカ

「ママ...何も感じ...ないけど...

なんだろう...あった...かい」


ツバキ

「それは潜在意識に眠る感情だ。

と言っても...何も聞こえまいか。

だがえて教えてやろう。エリカ=ヒース。

貴公は弱い。私よりも遥かに弱い。

サヤを過信し自身に自惚ウヌボ

血を求め彷徨う哀れな女だ。」


エリカ

「あった...か...い」


ツバキ

千年万花センネンバンカとは

血の滲む鍛錬のノチ

手に入れる事が出来る強大な能力チカラ

身をもって知るがいい。

これが本物の千年万花センネンバンカだ。」


エリカ

「も...もう...やめ...やめてよ...

やめてよぉぉおおおおお!!!!!!

ママ!!ママ!!!助けてぇ!!!

ママ!!!ママ!!ママァ!!」



ツバキ  遮る様に

トザせ」

遺雨ノコラズノアメ



ツバキはそう言って

思い出ごとエリカの胸を斬り裂いたが

傷一つ付いていなかった。

すると半透明の雨がエリカを包み込み

景色が渦を巻くとエリカの身体は

底のない水の中へ深く、ただ深く堕ちていった。


エリカ 心の声

((何ここ...何も...感じない...

何も...見えない...

何も...聞こえない...

何も...何も...何...も...))



エリカの精神世界から抜け出したツバキは

膝から崩れ落ちるエリカに見向きもせず

ゆっくりと無間廻廊ムケンカイロウを解除した。


ツバキ

千年鬮鼠•センネンキュウソ無間廻廊•ムケンカイロウ

過去を斬り裂き、未来をトザす。

未来永劫ミライエイゴウ無間ムケンを彷徨うがいい。

エリカ=ヒース」



作者 REN’sJackson

千刃花センジンカ帝国特務戦闘部隊テイコクトクムセントウブタイ〜ー

煉獄レンゴク 冥府ゲヘナ大監獄プリズン

Seasonシーズン24 トゥエンティフォー

The scarletスカーレット mad bunnyマッドバニー (完)






おまけ






エリカ 心の声

((暗い...暗い...

ここは...どこ?

ここは...どこなの?

エリカ...死んじゃったの?

ねぇ...誰か...教えて...))



すると、遠くから声がする。



エリカ 心の声

((誰?誰なの?誰がエリカを呼んでるの?

あれ...?エリカ確か...

耳が聞こえなかったんじゃ...

ツバキ...お兄ちゃん...に))



するとエリカの襟首エリクビを何者かが引っ張った。


エリカ

「ヴッ...だ...れ...?」



そこは血みどろの岩壁ガンペキ

天地左右あべこべに乱立した階段と

無数に空いた穴

その中央には美しいテーブルに

白く輝く陶器で出来たティーポットが

湯気をだし

ティーカップが二つ置いてあった。


エリカ

「目が...見える...

それに...紅茶のニオイと血の良い香り...ここは...」



すると、傲慢でヌメリとした絡みつく様な声が

四方から聞こえ岩壁ガンペキに反響した。



エリカ

「この声...まさか...」



???

「エリカ...



エリカ...



エリカ...



エリカ...



エリカ...



エリカ」



エリカ

「...深緋兎コキアケウサギ



色々な穴から顔を出し

突然、大きなウサミミに深緋色コキアケイロの髪をした神が現れた。


深緋兎コキアケウサギ

「やぁ!!久しぶりだねぇ!!エリカ。」


エリカ

「...さっきエリカを助けなかったくせに」


深緋兎コキアケウサギ

「やぁ!!久しぶりだねぇ!!エリカ。」


エリカ

「だぁーかぁーらぁー!!

エリカを助けなかった奴なんて

知らーーアガッ!」


深緋兎コキアケウサギ

「だぁーかぁーらぁー

久しぶりだねぇ!!って

僕が言ってるんだよ?エ、リ、カ!!」



一瞬だった。エリカが気づいた時にはすでに

針があしらわれた椅子に座らされていた。


エリカ

「グッ...なんの...つもり??アグッ!!」



深緋兎コキアケウサギはエリカの膝の上に座り

耳元で囁いた。


深緋兎コキアケウサギ 囁きながら

「ごきげんよう。エリカ」


エリカ

「ご、ごきげんよう深緋兎コキアケウサギ...

久しぶり...じゃないの...」


深緋兎コキアケウサギ

「よく出来ました。

じゃぁ血でかした紅茶でも飲もうか。

あっ、このままじゃ飲めないよね?よっと!!」


エリカ

「グッ」



深緋兎コキアケウサギ

わざと反動を付けてエリカの膝から離れると

トクトクトクトクとティーカップに紅茶を注いだ。


深緋兎コキアケウサギ

ズズーーーッすする音

はぁ、なんとも言えない血生臭さ!!

美味しいねぇ。

ほら、エリカも飲みなよ」


エリカ

「... ズズーーーッすする音

美味しい!!!!」


深緋兎コキアケウサギ

「だろ???

エリカがさっきくれた

千刃花センジンカ隊士のフレッシュな血さ!」


エリカ

「本当に美味しいね!!」


深緋兎コキアケウサギ

「うん。うん。

この味を分かってくれるなんて

流石はエリカだよ!」


エリカ

「でしょ!?

こんな作り方あったんーー」


深緋兎コキアケウサギ

「そんな事はどうでもいいのさ。

エリカ...このままじゃ死ぬけどどうする?」



突然変わる雰囲気にエリカは背筋が凍った。


エリカ

「え?助けてくれたんでしょ?」


深緋兎コキアケウサギ

「勘違いしないで欲しいんだけど。

僕はエリカが死んだところで新たな鞘花ショウカ

探すだけ。生きるか死ぬかはエリカ次第さ。」


エリカ

「エリカ...どうなっちゃうの?」


深緋兎コキアケウサギ

「だから言ってるじゃない。どうする?って

正直さぁー。

僕の事を殺しの道具にしか思ってないでしょ?

笑っちゃうんだけど、それ逆だから。

鞘花ショウカサヤの力を

代わりに振るってるだけだから。

そこら辺さぁー赤白ハッキリさせようって思って。」


エリカ

深緋兎コキアケウサギが勝手に選んだんでしょ!!

勝手に選んでおいて

何で勝手に使っちゃダメなの!?」


深緋兎コキアケウサギ

「はぁー。

分かってないよエリカ。

まぁ、こういう未来は見えてたけどさ。

僕も好き放題するエリカを見てると

楽しい事もあったしねー。

結構付き合い長いじゃない?僕ら。

エリカが幼い時からずーっと一緒だよね?

僕はエリカの事をよく分かってるつもりだよ?

なのに!!!!!」


エリカ

「ガッ」



唐突に深緋兎コキアケウサギはエリカの首を掴んだ。


エリカ

「アガッ」


深緋兎コキアケウサギ

「エリカは僕の事をなーんにも知らない。」


エリカ

「はな...せ...」


深緋兎コキアケウサギ

「あっ、ごめんごめん」



深緋兎コキアケウサギはパッと手を離した。


深緋兎コキアケウサギ

「要するにさ。狂ったまんまでいんだけど

もっとスマートに狂えって話しさ。

そう!僕みたいにね。」


エリカ

「キモっウザマル梵天過ぎる」


深緋兎コキアケウサギ

「ん?耳が四つあるから

悪口も四倍に聞こえるなー」


エリカ

「四つ付いてるくせに

エリカの声は聞こえなかったってわけ!?」


深緋兎コキアケウサギ

「はぁ。エリカの自我が壊れたから

こうやって僕の声が届いた訳だけど

ずーっと呼んでたからね僕。」


エリカ

「そうなの?聞こえなかった...。

それで、エリカに...なんの用なの?」


深緋兎コキアケウサギ

「言いづらいんだけど...

エリカがこんなに弱いと思わなかったんだよね。

鮮血の鞘花ショウカは不死身!!

怪我で死ぬ事なんてまずない!!!!

僕を使いこなせば最凶なのに!!

全然ダメ。残念だよ。

嵯峨鼠鼠サガネズネズミ二刀一対ニトウイッツイだよ?

サヤが二振りあるなら

威力も二倍!!だけど消費する刃汽ジンキも二倍!!

持久戦に持ち込めば勝てたのに!!!

まさか、高慢コウマンちきな嵯峨鼠鼠サガネズネズミにやられるなんて

僕のプライドがズタズタだよ!!!」



深緋兎コキアケウサギはテーブルを

バンっと叩いた。


エリカ

「精神攻撃なんて防ぎようが無いじゃない!!!

深緋兎コキアケウサギ

力を貸してくれなかったからでしょ!!!

エリカ悪くなーー」


深緋兎コキアケウサギ

「おい。都合の良い時だけ頼って来ないでほしいな」


エリカ

「だって!!そうでしょ!?エリカはーー」


深緋兎コキアケウサギ

「ふざけんじゃねーよ。人間。」


エリカ

「エリカ悪くないもん」


深緋兎コキアケウサギ

「はぁ。ツバキが言ってたじゃない?

血の滲む鍛錬がうんたらかんたらって。

エリカはさぁ僕を使いこなしてないし

僕も別に認めてる訳じゃない。

中途半端な奴に誰が力を貸すんですかー?」


エリカ

「じゃぁ!!!エリカはどうすればいいの!!」


深緋兎コキアケウサギ

「ほぉー。どうかしたいのかい?エリカ。

僕の言うことが聞けるのかい?」


エリカ

「言うこと聞いたらツバキお兄ちゃん倒せる?」


深緋兎コキアケウサギ

「それはエリカ次第さ。

っていうか。鞘花ショウカ同士で争うなんて

何たる支離滅裂シリメツレツ!!

まぁ、それは置いといてぇ。」


エリカ

「言う事聞くから!!!!

エリカを今すぐ助けて!!!!」


深緋兎コキアケウサギ

「そうだねぇ。

手始めに13日の呪いを解いてあげよう」


エリカ

「え?本当に!?」


深緋兎コキアケウサギ

「いくらなんでも暴走気味だから

かけたんだけど、その縛りがあると

色々出来ないしねー。」


エリカ

「他には何すればいいの?」


深緋兎コキアケウサギ

「毎晩、僕と紅茶を飲んでくれないかい?」


エリカ

「え?そんなことでいいの?」


深緋兎コキアケウサギ

「ぁあ。構わないさ。

何十年の付き合いだけど

まずは友達から始めよう。」


エリカ

「え?」


深緋兎コキアケウサギ

「約束の日は近い。

君の力が必要なんだ。

来たる   運命の終末ディステルニドン

すぐそこまでやって来てるんだ。」


エリカ

「それって...どういう意ーーー」



フッとエリカの前に手をかざすと

エリカはそのまま眠ってしまった。






深緋兎コキアケウサギ

「今はゆっくりおやすみ。

僕の可愛いエリカ」






ーーそして現在ーー

千年万花センネンバンカを解いたツバキは

刃汽ジンキが切れかかっていた。

千年センネン吸血処女メイデンを抑えていた空間の結界も

後、数秒で崩壊してしまうほどに

ツバキは疲弊ヒヘイしていた。



ツバキ  息を切らしながら

「術者が...倒れても...解けぬ...のか...

私は...先へ...行かねば...なら...ぬ...この...さ...きへ」





しかし、ツバキはその場に倒れてしまった。



するとそこにコツンコツンコツンと



誰かの足音が聞こえてくる。



倒れたツバキを見下ろしたその瞬間






グシャっと






ツバキの血が辺りに飛び散った。




(完)

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