38話 The nights of sorrow

前回までの千刃花〜帝国特務テイコクトクム戦闘部隊〜セントウブタイ


葡萄染麒麟エビゾメキリンの解放の影響により

煉獄レンゴク冥府大監獄ゲヘナプリズン北東にある水門では

屋内にも関わらず雷雲が立ち込め

雨が降り注いでいた。

激戦を繰り広げる八刃花隊ハチジンカタイ隊長ラナンキュラス

そして、ラナンキュラスの副隊長でもあり

恋人でもあった

アイビー=へデラ=ポーチスを殺した張本人

海王軍副団長 及び 海王水軍 大提督ジギタリアスとの

血塗られた因縁の対決は苛烈カレツさを増していた。

互いに致命傷を負いながらも

命を削ることにより回復した両者

そして、ジギタリアスが

対鞘花タイショウカ特殊魔装トクシュマソウ兵器神滅シヴァには

真の能力チカラがあることを明かす。


ラナンキュラス

「まさか!!!!!!」


ジギタリアス

「ぁあ。そうだ。

これから本当の力を解放してやるよ。

ラナンキュラス。

これでシマいだ。」


ラナンキュラス

「本当の力...だと!?させるか!!!!!」

雷迎招ヴォルテッーー』


ジギタリアス 喰い気味に

『『最大輪マキシマ!!!!!!!!』』



作者 REN’sJackson

千刃花センジンカ帝国特務戦闘部隊テイコクトクムセントウブタイ〜ー

煉獄レンゴク 冥府ゲヘナ大監獄プリズン

Seasonシーズン21トゥエンティワン

The nights ナイツ of オブ sorrowソロウ



ーー声紋セイモン認証 完了ーー

ーーー対鞘花タイショウカ特殊魔装トクシュマソウ兵器ヘイキ神滅シヴァーーー

ーーー起動しますーーー


ジギタリアス

  大海ノオリカルコ 支配者 •ヴァルカン!!』



ラナンキュラス

「これは...」



十本もの鎖とイカリ

ドロドロと溶けて空中に霧散ムサンすると

巨大な丸い門が空中に五つ出現した。


ラナンキュラス

「なんて凄まじい刃汽ジンキ...

これほどまでに強大なのか!!!」


ジギタリアス

「ガッハッハ!!!

どうだ坊主!!!!

これが神滅シヴァの本来の能力チカラ

"最大輪マキシマ"だ!!!」


ラナンキュラス 心の声

((神滅シヴァについては

レンゲイとアナスタシアから聞いてたが...

詳細は分からなかった...

これが神滅適合者ラグナロク...))


ジギタリアス

「さぁ!!!こっからが本番だ!!!」

女王喰いの復讐戟アンズリベンジ!!』



ジギタリアスの背後に浮かぶ五つの門から

幾千もの白く輝く槍が出現し

一斉にラナンキュラスに襲い掛かった。



ラナンキュラス

「グッ!!まずい!!!!」

降身雷フルミカヅチ!!』


ジギタリアス

「ガッハッハッハ!!!

坊主!!!逃げれると思うか!!!!!!」



ラナンキュラスは自身にイカヅチを落とし

雷速状態になると

射出された様々な形の武具を

前に進みながら次々とけていく。


ラナンキュラス

「勢いが衰えない。

まさか... 無限射出ムゲンシャシュツ!?」


ジギタリアス

「まだまだまだまだ!!!

ゾリャリャリャリャリャリャリャリャー!!」


ラナンキュラス

「グッ!!

葡萄染麒麟エビゾメキリンでも斬れないこの硬さ...

なら!!直接お前を叩くだけだ!!

導雷フルゴーラ!!!!!』



ラナンキュラスは上空に葡萄染麒麟エビゾメキリンを向けると

ジギタリアスに真っ直ぐイカヅチが落とされた。

そして、その一瞬のスキをみて

更にラナンキュラスは斬り掛かった。


ラナンキュラス

「フフッ。まだ、終わらないよ。」

雷迅虞斬ライジングサン





ジギタリアス

ニィッ不気味に笑う!!効かねぇよ!!

ゾリャァ!!!!!!!!!」



ラナンキュラス

「なに!?直撃したはず!!

グッグァァア!!!」



ドドドドドドドと女王喰いの復讐戟アンズリベンジの猛攻が

ラナンキュラスに襲い掛かった。


ラナンキュラス

「グァァア!!!!!」


ジギタリアス

「この姿を見せて殺し損ねた奴はいねぇ。

あの女の所まで俺が連れて行ってやるよ!!

なぁ、ラナンキュラス!!!」



ーーツバキサイドーー

冥府大監獄ゲヘナプリズンにある右処刑場ゴラムにて

鞘花ショウカ同士の戦いが繰り広げられていた。


エリカ

「アハハ!!!!

ツバキお兄ちゃん!!もうギブアップかな?

チョコレート食べるぅ?」



ツバキは空間をヘダてる断絶月時雨ダンゼツツキシグレを展開し

エリカによる亡者の群れ血塗ノ亡霊ブラッディレイスから

身を守っていたが

地面から湧き出る血染ノ串刺蝙蝠ヴァンパイアキス

身体中をムサボられていた。



ツバキ

「グッ!!グアッ!!グッ!!」


エリカ

血染ノ串刺蝙蝠ヴァンパイアキスの味はどう?

ツバキお兄ちゃん!!

もしかして...はじめてのキスなのかな?」


ツバキ

「グッ!!!!」


エリカ

「え!?結界解いちゃっていいの?

あっ。空間移動するのかー。

ズルいね!!!!

でも!!!ほら!!!!

まだ蝙蝠キスは終わらないよ!!!」



エリカは空中を次々と移動するツバキに対し

追撃するように血染ノ串刺蝙蝠ヴァンパイアキスを向けた。


ツバキ

「グッ...

空中には吸血コウモリ...下は亡霊か...

下劣なヤカラとは...貴公の事を言うのであろう」


エリカ

「下劣なんてお下品な言葉を使うんだね!

レディに対して失礼だよ!?」


ツバキ

「グッ...笑わせる」


エリカ

「んもう!!やっちゃって!!!!」

血染ノ串刺蝙蝠ヴァンパイアキス!!』

血塗ノ亡霊ブラッディレイス!!』


ツバキ

「二度も同じ手は喰わぬ。

消えて無くなるがいい。」

天消天涯テンショウテンガイ 花時雨ハナシグレ



ツバキは空間を移動しながら

天井へ嵯峨鼠鼠サガネズネズミを向けると

半透明の花びらが右処刑場ゴラム全体に降り注いだ。


エリカ

「ん?何これ...雨?...綺麗な花びら...」



パチン、パチンと音を立てながら

次々と血染ノ串刺蝙蝠ヴァンパイアキス

血塗ノ亡霊ブラッディレイスが消えていった。


ツバキ

「冷たき雨は夢をも醒ます。」


エリカ

「へぇ...」



エリカは冷めた目つきで

身を守る為に深緋兎コキアケウサギ

傘の様な緋色の盾に変化させると

消えていく自身の技を眺めていた。


エリカ

血塗少女ノ深緋傘クリムゾンブレラ

「ぁーあ。みんな無くなっちゃったよ。

あれ、結構疲れるのになー。

崩れるならまだしも消えちゃうから

再利用もできないじゃーん。

小さな空間を丸ごと消すなんて

流石だね。ツバキお兄ちゃーーーー」



ガンッと血塗少女ノ深緋傘クリムゾンブレラ

強い振動が走った。

エリカの足元は深く沈むも

エリカ自身は顔色さえも変えていなかった。


ツバキ

「なんだと」



ツバキは強く振り下ろした嵯峨鼠鼠サガネズネズミを弾き

またもや空間を移動すると体勢を整えた。


エリカ

「雨が降ったら傘を差すなんて当たり前じゃーん。

ん?どうしたの?不思議なの?

なんでエリカの傘が花びらの雨に触れても

消えないかって?

ねー!ねー!気になるんでしょー?」


ツバキ

嵯峨鼠鼠サガネズネズミに削れぬものなどない。」



そして、またもや空間移動し

エリカの背後をとった。


ツバキ

「もらっーー」



しかし、エリカはターンをすると

血塗少女ノ深緋傘クリムゾンブレラ

斬撃を弾いた。


エリカ

血塊杭ブラッドバラン


ツバキ

「ガッハッ」


エリカ

「両肩に穴が空いて噛み付かれて

今度はお腹までツラヌかれて

まだ生きてるの?...はぁ。鞘花ショウカってさ

なまじ強いから中々 死ねないんだよねぇ。」


ツバキ

「グッ...ガハッ」



ツバキは血をドバッと吐くと手で拭った。



エリカ

「アハハ!!!痛そう!!苦しそう!!

不思議でしょー?空間ごと削れる能力チカラなのに

なんでエリカのは削れないか!!あっ。

可哀想なツバキお兄ちゃんは知らないのかな?」


ツバキ

「...何をだ。」


エリカ

「そもそも鞘花ショウカ同士で争う事なんて

した事ないんでしょ?

想定もしてなかったんでしょ?

まさか、冥府大監獄ゲヘナプリズンに来て

鞘花ショウカと相対するなんて

思っても見なかったんでしょ?」


ツバキ

「...だから何だと...言うのだ。

鞘花ショウカだろうと...何だろうと

我が...覇道の前に...立ちはだかれば 斬る。

それだけだ。」


エリカ

「本当に阿保アホなんだね!!ツバキお兄ちゃん」


ツバキ

「何だと...」


エリカ

「たぶん鞘花ショウカ同士が戦う事なんて

神様達も想定してなかったんだよー。

鞘花ショウカの力に上位も下位もない。

ただ、練度によって実力が変わるけどねー!

だから最初に聞いたでしょ?継承かってね。」


ツバキ

「練度は...高め積み上げるもの。

継承だろうが...発現だろうが...関係ない」


エリカ

「ツバキお兄ちゃんは鞘花ショウカになって

どれくらいなのかなー?」


ツバキ

「貴公には...関係の無いこと。」


エリカ

「エリカより長いわけないのは

まぁ、間違いないけどね!!」


ツバキ

「下らぬ。」


エリカ

「分かったでしょ?

エリカの方がずーーーっと鞘花ショウカとして長いんだよ?

必然的にエリカの方が練度が上なの!!

だからエリカに勝てるわけないじゃん!!

練度の低い攻撃がエリカに効くわけないでしょ?

アハハ!!アハハ!!!!」


ツバキ

「何を...言っている。

貴公の血塗少女ノ深緋傘クリムゾンブレラ

何層も...血塗られている。

その表皮を...削っているだけだ。」


エリカ

「本当にそうかな?」

血染ノ串刺蝙蝠ヴァンパイアキス!!』



エリカはまたもや血液で作られたコウモリの大群を

ツバキに向けて放った。


ツバキ

天元八卦テンゲンハッケ 白驟雨ハクシュウウ



ツバキはすぐさま嵯峨鼠鼠サガネズネズミ

エリカに向けて

8個の空間を生み出すと

血染ノ串刺蝙蝠ヴァンパイアキスを吸い取り

それぞれの空間からエリカを囲む様に跳ね返した。


エリカ

「グッ!!跳ね返すなんて!!

自分の技が効くわけないっ!!でしょ!!!

んもう!!邪魔!!!」


ツバキ

照刃ショウハ  二十九ニジュウキュウ遣照廻回ゲンショウガイカイ



次々とエリカは自分の技である

血染ノ串刺蝙蝠ヴァンパイアキスに飲まれていくと

グチャっという音と共に

血染ノ串刺蝙蝠ヴァンパイアキスは血に還っていった。

そのスキを見逃さなかったツバキは

照刃ショウハで傷を癒していた。



エリカ

「ぁあ!!!せっかく付けた傷なのに!!」


ツバキ

「練度で実力に差が出ると言ったな。

まさか、時の長さにより練度が変化する。

などと言うつもりか。

貴公は何か勘違いしている。

鞘花ショウカの強さは覚悟の強さ。

サヤは相応の覚悟に呼応する。

覚悟の無い貴公は永劫エイゴウ 私には勝てぬ。」


エリカ

「実力差を見れば分かるじゃーん。

さっきまで死にそうだったのに!!」


ツバキ

「ならば、問おう。

貴公は何の為に戦っている。」


エリカ

「何の為に?

何それ面白い!!!!

考えた事もないからエリカ分かんないなぁ。

んーーー。

みんな死んじゃえ!!って

思ったら深緋兎コキアケウサギ

選んでくれたんだよねー!!!」


ツバキ

「神は理由もなく鞘花ショウカを選ばぬ。

ましてや発現ならば なおのこと。」



エリカ

「知らないよぉーー!!!

深緋兎コキアケウサギだって

何も言ってくれないもん!!!」


ツバキ

サヤが口さえもきかぬとは

まさか、姿さえも見たことが無いのではあるまい」



エリカ

「え?一回だけあるよ?

無きゃ鞘花ショウカになれないじゃん!!

ツバキお兄ちゃんって阿保アホだね!!」


ツバキ

「そうか。」


エリカ

「グヌヌッ...サヤの力なんて

ただの殺しの道具だし!!」


ツバキ

「殺しの道具...

それは見方によっては間違いない。

戦乱の世ではそれも正義となり得る。

だが、今の問答ではっきりと分かった。」


エリカ

「何が?」


ツバキ

「貴公は弱い」


エリカ

「今、なんつった?」


ツバキ

「貴公は弱い。遥かに弱い。

私の足元にも及ばぬ弱さ。」


エリカ

「ハハッ...もういっぺん言ってよ!!

エリカが...弱い?アハハッアハハッ!!!!

さっきまでボロボロだったくせに!!

エリカに攻撃も通らなかったくせに!!!!

ツバキお兄ちゃんが言う覚悟が足りないから?

アハハッ!!アハハッ!!!

...お兄ちゃんの尺度シャクドでエリカを測るな!!」


ツバキ

「測るまでもなし。消え失せるがいい」


エリカ

「じゃあ!!お兄ちゃんの覚悟ってのは

なんなんだよ!!教えてみろーーーーー」


ツバキ遮る様に

「私は皇帝になる」


エリカ

「はぁ!?

皇帝になれないから養子に出されたんだろうが!!

頭腐った事言ってんじゃねぇよ!!!!」


ツバキ

嘲笑アザワラうがいい。エリカ=ヒース

そして、我が覇道の前にれ」


エリカ

「ふざけんな!!!!!」

血壊ブラッド ディ 奇術師トーレス!!』


  ツバキ遮る様に

偃套月時雨エントウツキシグレ



互いの刃汽ジンキホトバシ

空間が次々と歪んでいく。

ツバキは煌めく空間のマントを素早く羽織り

血壊ブラッド ディ 奇術師トーレスを弾いた。


ツバキ

「何度も同じ手にかかるほど私は甘くない。

これより先は貴公の血壊ブラッド ディ 奇術師トーレスは通じぬ。

血塗ノ亡霊ブラッディレイス

血塊杭ブラッドバラン

血戦ノ聖母ブラッディマリア

血染ノ串刺蝙蝠ヴァンパイアキスも通じぬ今の貴公に

一体、何が出来るというのだエリカ=ヒース」


エリカ声を震わせながら

「ツバキお兄ちゃん...

こんなにエリカを怒らせた人は初めてだよ。

千刃花センジンカの隊長達なんて

ただのバカの集まり!!!!!

自分に酔った殺したがり!!!!!

みんな死んじゃえ!!!死んじゃえ!!!」


ツバキ

「私の前であれらを

侮辱ブジョクすることなど許さぬ。

それ相応の誇りと覚悟を持って戦っているのだ。」


エリカ

「何が誇りだ!!!何が千刃花センジンカだ!!!

ただの馴れ合いでしょ!?!?

エリカ独りでそんな奴ら殺せるもん!!!」


ツバキ

「馴れ合いなどではない。

千刃花隊士はナーベルクの誇り

そしてそれが...私の誇りだ。」


エリカ

「その誇りも目の前で殺されて

守れなかったくせに!!!!!」


ツバキ

愚弄グロウするな。」


エリカ

「きっしょ。ウザマル梵天過ぎる!!!!

分かった!!!!

そんなにエリカより強いっていうなら

エリカを殺してみなよ!!!!!!」



するとエリカは自身の喉元に

深緋兎コキアケウサギを突き立てた。



ツバキ

「何の真似だ。」


エリカ

「もう知らないからね。

怒らせたのはツバキお兄ちゃんだよ!!!」



そして一気に喉元をツラヌいた。



ーーラナンキュラスサイドーー


ラナンキュラス

「ガハッ...」



ラナンキュラスの身体は血に染まっていた。


ラナンキュラス

「なんて...威力なんだ...グフッ」


ジギタリアス

「おーおーおー。

まだ息があるとはなぁ!!

大したもんだ!!!坊主!!!

女王喰いの復讐戟アンズリベンジの猛攻に耐えるたぁ

イカヅチ鞘花ショウカだけはある。」


ラナンキュラス

「僕は...絶対に...お前を許さない!!

アイビーを殺した...お前を!!!!!!

僕は許さない!!!!!!」


ジギタリアス

「何かと言えば、またあの女の話しかよ。

はぁ。分かった。俺の負けだ。

真実を言ってやりゃあ。」


ラナンキュラス

「何だ...と?」



ジギタリアスはラナンキュラスの背後に

一瞬で移動すると耳元で囁いた。





ジギタリアス

「アイビーは生きてる。」



ラナンキュラス

「何...!?

それは...本当か!!!!」





ジギタリアス

「嘘だ。」



そして音もなくラナンキュラスの身体を

白金シロガネの武具がツラヌいた。



ラナンキュラス

「ガッッッッ!!...貴様」



ジギタリアス

「クックックック...

ガッハッハッハガッハッハッハ!!!!

ンなわけねーだろうが!!!!!

バカが!!!!!!

本当に甘っちょろいな坊主!!!

ほら!!よっ!!!!!!!!」



ジギタリアスはラナンキュラスを蹴り飛ばすと

女王喰いの復讐戟アンズリベンジの無限連射で

更にツラヌいた。



ラナンキュラス

「貴様あぁあぁあぁあ!!!

ガッ!!グッ!!ガハッ!!アグッ!!

アガッ!!グァァア!!!!!」



意識が遠のいていくラナンキュラス

絶望のフチに立ち

痛みをも忘れ、我をも忘れ

生きることさえも忘れかけていた。



  ラナンキュラス心の声

((アイビー...僕は...君のカタキさえも取れない。))



  ラナンキュラス心の声

((ごめんよ...アイビー))



  ラナンキュラス心の声

((僕は...もう...))



すると、冥府大監獄ゲヘナプリズンの水門の景色が

みるみる変わっていくとラナンキュラスは

暗がりの夜空が見える薄暗い雲の上に立っていた。



  ラナンキュラス心の声

((ここは...))



???心配した声で

「ラナン...ラナンキュラス」



  ラナンキュラス心の声

((アイビー!? アイビーなのかい?))



???

「ラナンキュラス...」



  ラナンキュラス心の声

((違う...この声は))



???

「ラナンキュラス...ラナンキュラス」



すると、アイビーの姿が目の前に現れた。



ラナンキュラス

「アイビー!!!! 君は!!どうして!!

アイビー!!!グアッ!!!」



そして、ドーンッと轟音と共に

アイビーの姿は消えてしまった。



???

「ラナン...ラナンキュラス」



ラナンキュラス

「誰だ!!!!」



イカヅチが空に煌きゴロゴロと遠鳴りが響く。

ラナンキュラスは夜空を見上げると

紫のイカヅチが目の前に落ちた。



ラナンキュラス

「グッ!!!君は!!!

葡萄染麒麟エビゾメキリン!!!」



ラナンキュラスの前に現れたのは

紫色の羽衣ハゴロモ

白い角をヒタイにはやした

髪の長い女性が立っていた。



葡萄染麒麟エビゾメキリン

「ラナンキュラス... 久方ヒサカタぶりよのぉ。

こうして相対するのは。」


ラナンキュラス

「やぁ、久しぶりだね。

相変わらず君は美しい。」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「フン。世辞は要らぬ。」


ラナンキュラス

「お世辞なんかじゃないさ。

それで、一体どうしたんだい?」



またもや遠鳴りが響く


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「どうしたと聞けるほど

余裕には見えぬが?」



葡萄染麒麟エビゾメキリンは両手をパンと

叩いた。


葡萄染麒麟エビゾメキリン

パン手を叩く音。懐かしいか?」



そこにはアイビーの姿があった。



ラナンキュラス

「何のつもりだい?

まさか...さっきの記憶も

君の仕業だったのか!!

どうして昔の記憶を見せる様な真似をーー」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「己の弱さを見せてやったまでの事」


ラナンキュラス

「何だと...」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「今のお前では死ぬ。

先ほどの癒雷イヤシカヅチはもう使えぬ。」


ラナンキュラス

「僕は...もう...」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「本来であれば私は回復に特化していない。

桜雌鹿サクラメロクとは違う事は

お主が一番分かっているはずだ。

あんな戦い方、ラナン...お主らしくもない。」


ラナンキュラス

「心配しなくともサヤを奪わせたりしない。

冥府大監獄ゲヘナプリズンには

リナリーやジジにチョウラン君もいる。

鞘花ショウカに有望な者たちだ。」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「ラナン...お主は分かっていない。

大切なものが見えておらぬ。

いざ、仇を目の前にした途端

我を見失うとは情けない。

それでもイカヅチ鞘花ショウカか?」


ラナンキュラス

葡萄染麒麟エビゾメキリン...

君も分かってるだろう?

僕の気持ちを」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「...分かっておる。」


ラナンキュラス

「ジギタリアスは簡単には倒せない。

それに、水門は僕らの避難経路の一つだろう。

倒さなければいけない。ただ、奴は強い。」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「取りツクロうな。ラナンキュラス。

お主...ここで死ぬ気であろう。」



一瞬のの後、

ラナンキュラスはゆっくりと口を開いた。



ラナンキュラス

「あぁ。」



葡萄染麒麟エビゾメキリン

「やはりな。

ジュダスに説教をしていた時

少しだけ違和感があった。

ジュダスが敵討カタキウちとして

お主と相対していたとき

僕はそれを止める事もできない。

気持ちが痛いほど分かるからね。と言ったな。

八刃花隊ハチジンカタイの隊長としての

義務と誇りをうたい、火の粉を払うと言いながらも

復讐を容認していた。

それは何故か。

お主自身も復讐の為にここに来ているからだ。

自身の復讐が叶うまでは死ぬわけにいかないと

言わんばかりにな。」


ラナンキュラス

「そうだ。」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「人は奪い合う運命であり

それすなわち、与え合う運命でもある。

誰が為に何故ナニユエ奪うのか

それは自身の為か はたまた人の為か

どの世も争いは人を狂わす。」


ラナンキュラス

「何が言いたいんだい?」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「お主は男として愛する者を奪われた。

そして、隊長として愛する者を奪った。

前任から私の能力チカラを受け継いだ時

私には未来が見えていた。お前の運命がだ。

本当に覚悟があるのだな?」


ラナンキュラス

「もちろんさ。

道連れにしてでもジギタリアスを殺す。」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「そうか。」


ラナンキュラス

「フフッ。あのさぁ。

神に頼み事をするのも変だけど

ダンジョン化などせずに

真っ直ぐジジの元へと

飛んで行ってくれたりしないかな?

彼なら立派な鞘花ショウカになれる。」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「運命は決まっている。知っておろう。

世界に運命の終末ディステルニドンが迫っている。

私は相応しい者を鞘花ショウカに選ぶだけだ。」


ラナンキュラス

運命の終末ディステルニドン...

天空山テンクウザンの予言か...

それは伝説じゃなくて本当なんだね。」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「なんだ?気になるのか?

今日、死ぬつもりの貴様には関係のない事だ。

アイビーの幻影でも追いかけていろ。」


ラナンキュラス

「フフッ。ぁあ。永遠に追いかけるさ。

彼女のいない世界に僕はあまり興味がないんだ」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「忘れるでない。

何の為に私を継承したのかを。

その曇切った心では

ジギタリアスは倒せぬ。

アイビーの為に死ぬ気であるのなら

アイビーを忘れ、鞘花ショウカとして戦え。

ジギタリアスは弱さを突いてくる。

仇を取るのであれば殺す前に死んだら意味などない」



ラナンキュラス

「そうだね。その通りだね。

ありがとう。」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「出し惜しみなどするな。

使えるものは使え。

全てを出し戦え。

ジギタリアスに刻むのだ

貴様の魂と我が名を。

傷は抑えてやる。

ただし、長くはもたぬぞ。」


ラナンキュラス

「ぁあ。ありがとう」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「フン。」



葡萄染麒麟エビゾメキリン

ラナンキュラスに背を向けて空を見上げた。


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「なんと...切なき夜か...

あの日から星一つ見えておらぬ」


ラナンキュラス

「...葡萄染麒麟エビゾメキリン


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「なんだ。」


ラナンキュラス

「お別れを言いに来てくれたんだね。」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「たわけが。」



バチバチッと音を立てて

葡萄染麒麟エビゾメキリンが消えると

ラナンキュラスは目を覚ました。


ラナンキュラス

「ウグッ...」



ジギタリアス

「...まだ生きてやがるのか...ん?

傷が塞がってやがる...何をしやがった。」


ラナンキュラス

「グッ...言ったろ...お前を殺すと。

全てを賭けてお前を殺す!!!!」


ジギタリアス

「言ってろ!!!坊主!!!!」

女王喰いの復讐戟アンズリベンジ!!』


ラナンキュラス

帝釈天ノ刃ヴァジュラ!!』



ラナンキュラスはイカヅチを落とし

葡萄染麒麟エビゾメキリンのない刀へと変化させた。



ジギタリアス

「ゾリャァァァァア!!!!!」



ラナンキュラスは次々と

五つの門から飛び出す様々な武具を

斬り裂いていった。


ジギタリアス

「ほう!!何でも斬れるってわけかい!!」


ラナンキュラス

帝釈天ノ刃ヴァジュラは雷速で振動するヤイバ

どんな硬さがあろうとも

帝釈天ノ刃ヴァジュラの前では意味などない!!

降身雷フルミカヅチ!!』



ラナンキュラスは自身の身体に

イカヅチを落とした。


ジギタリアス

「雷速状態からの攻撃!!!

おもしれぇ!!!これならどうだ!!!」


ラナンキュラス

「何!?」



ジギタリアスも雷速状態となった。


ジギタリアス

  大海ノオリカルコ 支配者 •ヴァルカンから生まれる武具は

全て因果喰インガグライの性質を持つ!!

つまり!!雷撃を武具が受ければ

坊主のイカヅチさえも隷属レイゾクさせる!!

喰らったもん全てが俺の支配下だ!!」


ラナンキュラス

「なんて、厄介な能力チカラだ!!」


ジギタリアス

「遊ぼうぜ!!!ラナンキュラス!!」

賭博悪喰ロイヤルフォーチュン!!』



  大海ノオリカルコ 支配者 •ヴァルカンから

武具が射出されるとジギタリアスの手に収まった。


ラナンキュラス

「受け止められないよ。」



雷速で振動する帝釈天ノ刃ヴァジュラ

ジギタリアスの武具を真っ直ぐ斬り落としていった。


ジギタリアス

「なるほどな!!」



もう一方の手を伸ばしたジギタリアスに

新たな武具が飛んできた。

それを掴むと間髪カンパツいれずに

ラナンキュラスを攻撃した。


ジギタリアス

「ガッハッハッハ!!

どんなもんが来るか分からねーが

武具には困んねーんだよな!!」


ラナンキュラス

「全て斬り裂くのは変わらない!!」



ジギタリアスは武具が斬られる度に

新たな武具を  大海ノオリカルコ 支配者 •ヴァルカンから飛ばしてもらい

雷速同士の超雷速攻防戦を繰り広げていた。


ラナンキュラス

「真っ直ぐ斬られないように

受け流しながら戦って!!いるのか!!!」


ジギタリアス

「当たり前だろうよ!!

俺の武器を斬り裂くヤイバ

警戒しねぇ!!訳が!!!ねぇ!!!

神が生み出す!!最高硬度の貴金属だからな!」


ラナンキュラス

「最高硬度...不倒不苦痛イージスオブジーザスも!!かい!?」


ジギタリアス

「そんなもんも!!あったなぁ!!」


  ラナンキュラス心の声

((斬り裂いても斬り裂いても

武具が次々と出てくるのか...

僕じゃ無ければこの硬度...

恐らく斬り裂く事さえも不可能

敵側にこんな危険な能力チカラがあるとは))


ジギタリアス

「なんだ!!動きが鈍ったぞ!!

考え!!事!!か!?」


ラナンキュラス

「グッ!!やはり!!

ここで殺す!!ジギタリアス!!

ハァァァア!!!!

グッ!?何!?」



ラナンキュラスは女王喰いの復讐戟アンズリベンジによる

無限射出された武具の残骸に囲まれ

逃げ場を無くしていた。


ジギタリアス

「ガッハッハッハ!!

みんな気づかねーんだよ。

女王喰いの復讐戟アンズリベンジを闇雲に

撃ってたわけじゃねぇ。

俺が戦いやすい様に戦場を構築したんだよ。

お前みたいな雷様カミナリサマ相手を

身動き取れなくするには

逃げ場を無くすしかねぇからな!!!

さぁ!!パチン指を鳴らす音!!」



ガガッと武具が射出されて

ジギタリアスの背後が武具で埋め尽くされた。

すべてのヤイバが内側に向いており

ラナンキュラスは文字通り囲まれてしまった。


ジギタリアス

「さぁ、ステージは整った。

インファイトしようぜ!!!!!」



更に射出されたグローブの様な武具をはめると

両拳を叩きつけジギタリアスはニィッと笑った。


ジギタリアス

「デスマッチと行こうじゃねぇか!!!」


ラナンキュラス

「望むところだ。

その武具も帝釈天ノ刃ヴァジュラ

斬り裂くまで...だ!!!!」


ジギタリアス

「お前の太刀筋はだいたい

頭に入った!!!ゾリャ!!」


ラナンキュラス

「何!?はじかれた!?」


ジギタリアス

「ガッハッハッハ!!!!

終わりだぁぁぁあ!!!ゾリャァァァァア!!」



ジギタリアスは帝釈天ノ刃ヴァジュラを弾き

ラナンキュラスの顔面へと拳を叩き込んだ。



ラナンキュラス

「ガッッッ!!!!

負ける訳には!!!!行か...ない!!!」


ジギタリアス

「ウォォオオオ!!!」


  ラナンキュラス心の声

((なん...て...怪力...だ))


ジギタリアス

「ゾリャァァァァア!!!



ラナンキュラスは吹き飛ばされ

背面に並べられたヤイバ

その身をツラヌかれた。


ラナンキュラス

「グァハッ!!!!!」



ドッと口から血を吐くと

ラナンキュラスは薄っすらとする視界で

ジギタリアスを睨んだ。


ジギタリアス

「ガッハッハッハ!!!

殴り合いで俺が負ける訳ねぇ!!

ガッハッハッハ!!!!!

しかし、あの日からどう変わったか

楽しみにしてたが

まだ、女の幻を見てやがる!!!!

そんなヤイバで俺が斬れると思ってんなら

めでてぇ奴だな!!!!!!」


  ラナンキュラス心の声

((身体が...動かない...僕はここで...))


ジギタリアス

「仲間の事なんて なんも考えてねぇ!!

お前の誇りは

あの夜から消えちまったんだよ!!」


ラナンキュラス

「仲...間...誇り...」



その時、ラナンキュラスは葡萄染麒麟エビゾメキリンの言葉を

思い出していた。



ラナンキュラス

「お別れを言いに来てくれたんだね。」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「たわけが。」


ラナンキュラス

「フフッ。」



葡萄染麒麟エビゾメキリン

餞別センベツに神からのお告げをやろう。」


ラナンキュラス

「なんだい?」


葡萄染麒麟エビゾメキリン

「敵と仇をタガわぬ事だ。」



そして、バチバチッと音を立てると

葡萄染麒麟エビゾメキリンは消えた。



ラナンキュラス

「グッ...ゴハッ...

ハァ...ハァ...葡萄染麒麟エビゾメキリン...

君の...言う通り...だね...」


ジギタリアス

「何言ってやがる...」


ラナンキュラス

「男として...アイビーの仇を取る

だが、八刃花隊ハチジンカタイの隊長として

ジギタリアスを倒す。

どちらも...僕である事には...変わらない。

だが...今は...例え、憎き仇が目の前に居たとしても

僕は......

千刃花センジンカ 八刃花隊ハチジンカタイ隊長として

仲間を守る!!!!!!

それが!!!僕の誇りだ!!!!!!!」


ジギタリアス

「何!?急に刃汽ジンキ量が跳ね上がった!!」


ラナンキュラス

「力を貸してくれ!!!葡萄染麒麟エビゾメキリン!!!!」


ジギタリアス

「何!?!?グッッ!!空気中に電撃がホトバシる!!

グッ!!近づけねぇ!!!!!グッッ

おいおい...周りの武具が溶けてんじゃねぇか...

それに...この刃汽ジンキの上昇率...

まさか!!!鞘花ショウカの"千年万花センネンバンカ"か!!おもしれぇ!!!

その賭け!!乗ってやるよ!!!!」



ーーエリカサイドーー


エリカ

「ウグッ」


ツバキ

「自らの喉元をツラヌくとは...」


エリカ  不気味に

「殺し合おうよ...ツバキお兄ちゃん」



血が逆巻サカマき、渦を作り出すと

津波の様に一気に右処刑場ゴラムを包み込んだ。


ツバキ

「この刃汽ジンキ...

"千年万花センネンバンカ"を発動するつもりか。」


エリカ狂気的に

「アハハ!!アハハ!!!そうだよ!?

あまりにも生意気だからエリカ怒っちゃった!!

チョコレートも食べてくれないし!!!

エリカの事バカにするし!!!!!

エリカが弱いとか言うし!!!!!!!

グチャに!!グチャに!!

グチャグチャにしてやる!!!!」


ツバキ

「下らぬ。」


エリカ冷めたように

はぁ...ため息ふざけてんじゃねぇよ。クソネズミが。」


エリカ可愛く

「お遊びは終わりにしよ?ツバキお兄ちゃん♪」


ツバキ

「終わりだと?

貴公は何か勘違いしている。」


エリカ

「はぁ?」


ツバキ

千年万花センネンバンカ

鞘花ショウカの技にして最強の奥義

故に、この私にも

千年万花センネンバンカがあるという事を

失念しているわけではあるまい。」



そしてツバキは嵯峨鼠鼠サガネズネズミ

グッと構えて言った。


ツバキ

「貴公こそ、終わりだ。」


エリカ

「ふーん。

じゃぁ比べっこしようよ!!!!

どっちの千年万花センネンバンカが強いかさぁ!!!」



すると、エリカは更に自身の喉元を深くツラヌいた。


エリカ

「アガッッ」

千年センネン吸血処女•メイデン!!』


ツバキ

千年鬮鼠•センネンキュウソ無間廻廊•ムケンカイロウ



ラナンキュラス

千年雷煌センネンライコウ麒麟武甕槌•キリンタケミカヅチ!!!!』


ジギタリアス

共喰トモグライ無敵幽霊戦艦フライングダッチマン!!』



血を血で洗う血戦ケッセン

今、幕を開ける。



千刃花センジンカ帝国特務戦闘部隊テイコクトクムセントウブタイ〜ー

煉獄レンゴク 冥府ゲヘナ大監獄プリズン

Seasonシーズン21トゥエンティワン

The nights ナイツ of オブ sorrowソロウ (完)






おまけ






ここはナーベルク帝国の首都

ルシファンブルク郊外にある庭園

夜風が涼しく星が輝く夜

一刃花隊イチジンカタイ隊長であるツバキと

華四百花カシヒャッケであるプラムが

夜空の下、和装姿で歩いていた。



プラム

「こんな夜遅くに2人で散歩なんて

久しぶりですわね。

いつもなら迎えをよこすのに...

義忠ヨシタダ様...

どうかなさったんですか?」



ツバキ

「いや、ただの気まぐれだ。」



プラム

「フフッ。相変わらずですね。

あっ、見てください。義忠ヨシタダ様!!

こんなにも月明かりが眩しいですわ!」



ふと見上げた夜空は

首都ルシファンブルクを照らす様に

美しい月明かりが輝いていた。


ツバキ

「ぁあ」


プラム

「...あの頃が懐かしいですね。」


ツバキ

「そうだな。」


プラム

「無茶ばかりしてた学生時代

あの子達にはだいぶ無理をさせられましたね。」


ツバキ

腹立ハラダたしい限りだ。」


プラム

「あの頃 描いていた夢は今も変わらないままなのに

時折、寂しくなるのは何故でしょうか。」


ツバキ

「我らが大人になったのかも知れん。」


プラム

「そうですね。

失うものなど無いと思ってましたから。」


ツバキ

「そうだな。」


プラム

「歳月が過ぎる度に大切なものが

刻一刻と無くなってしまうんじゃ無いかと

思います。

義忠ヨシタダ様... 義忠ヨシタダ様も私と同じでしょうか?」


ツバキ

「同じかも知れん。」


プラム

「フフッ。義忠ヨシタダ様も

失う事が怖いと思う事がお有りなんですね。」


ツバキ

「...そうかも知れぬ」


プラム

「本当に久しぶりですね。

互いに忙しくなってから

こうしてお話しすることも

難しくなりましたね。」



するとツバキは突然、足を止めた。



プラム

「どうかなさいましたか?」



ツバキ

明日アス、ジジと共に

煉獄レンゴク 冥府大監獄ゲヘナプリズンへと向かう。

過酷な任務となろう。」


プラム

「はい。」


ツバキ

「場合によってはーー」


プラム 遮る様に

義忠ヨシタダ様は皇帝になられるお人。

このナーベルク帝国に必要な人なのです。

そんな事を言ってはなりませぬ」


ツバキ

杞憂キユウだったか...」


プラム

「また、会えると信じていますわ。」



そして、無言の時が過ぎていく。

2人はしばらく夜空を見上げていた。





ツバキ

「...プラム」



プラム

「はい。」



ツバキ

「...月が綺麗だな。」



プラム

「...月はずっと綺麗でしたよ。」



ツバキ

「そうか。」



プラム

「はい。」



ツバキ

「私も、そう思っていた。」



(完)

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