21話 There are wheels within wheels

作者 REN’sJackson



千刃花センジンカ帝国特務戦闘部隊テイコクトクムセントウブタイ〜ー

煉獄レンゴク 冥府ゲヘナ大監獄プリズン

Seasonシーズン4フォー

There areゼイアー wheels ウィールズ within ウィズン wheelsウィールズ



広大な国土を誇るナーベルク帝国

その首都は樹海の要塞に囲まれた

帝都ルシファンブルク

そして、大きな滝が流れるその中央には

巨城ダリアと各隊舎と繋がる8本の橋がかかっており

外部から巨城ダリアに行くには

各隊舎のいずれかの門を通る必要があった。

一見、古風な城に見えるが

城内は最新鋭の機器が揃っており

ナーベルク帝国の科学と刃術ジンジュツスイが集められていた。

更に地下を合わせるとその高さは

ナーベルクで一番高い建物となる。

そして城の最深部には

ナーベルク帝国軍 軍司令部トレパンドーラがあり

常に敵国の情報や自軍の進捗シンチョク

作戦、編成、軍備、管理をニナっていた。

正にナーベルク帝国の中枢チュウスウ機関が

集結していると言っても過言では無かった。

その軍司令部トレパンドーラにある

神々コウゴウしく厳格で荘厳ソウゴンな玉座には

帝国軍の最高指揮官 皇帝ヨシムネが鎮座していた。

ヨシムネの前には大理石で出来た円卓エンタクがあり

"華四百花カシヒャッケ"と呼ばれる

ナーベル帝国軍トップの四人と皇帝である

ヨシムネが座る場所があった。



帝国軍の作戦、編成を統べる華四百花カシヒャッケヴァンビ


ヴァンビ

「おい、急に呼び出すたぁ

遂にボケたかジジィ」



敵国と自国の情報を統べる華四百花カシヒャッケクリシャンテ


クリシャンテ

「黙れ小僧が。

個人情報ばら撒くぞ。」



軍備、兵器の管理、教育を統べる華四百花カシヒャッケプラム


プラム

「おじ様達、皇帝の御前ゴゼン近くです。

お静かに」



帝国特務戦闘部隊テイコクトクムセントウブタイ"千刃花センジンカ"を統べる

華四百花カシヒャッケオルケイディア


オルケイディア

「早く扉を開けろ。

そして口喧嘩するくらいなら殺し合え」



"華四百花カシヒャッケ"とは

年齢、身分問わず

各分野のエキスパートが

集められ構成されている。

"華四百花カシヒャッケ"に選ばれるということは

偉人として歴史に名を残すことができ

ナーベルク帝国民にとって誉高ホマレダカき栄誉である。

そして、ナーベルク帝国軍においては

皇帝に継ぐ最高位であり

有事の際には指揮も

ナーベルク帝国の紋章を左胸につけることを

皇帝以外に許された四人の偉人達の称号である。


ヴァンビ

「失礼致します。」



ヴァンビは重い扉を開けた。


ヴァンビ

「皇帝」


クリシャンテ

「皇帝」


プラム

「皇帝」


オルケイディア

「皇帝」



四人はひざまずくと下を向いた。



ヨシムネ

オモテを上げろ。」


クリシャンテ

「ハッ」


ヴァンビ

「ハッ」


オルケイディア

「ハッ」


プラム

「ハッ」


ヨシムネ

「お主達の顔を四人勢揃いで見るのは

久方ヒサカタぶりだ。

変わりはないか。クリシャンテ、プラム」


クリシャンテ

「勿体なきお言葉で御座います。」


プラム

「最近は騒がしさのあまり

顔を出せず申し訳ありません。」


ヨシムネ

「国の為、奔走ホンソウしているのは

分かっておる。」


クリシャンテ

「悩みの種は千刃花センジンカ、、

ラミオラス帝国とのイクサが続いたせいか

悩みが尽きぬ部隊です。

失礼な事はありませんでしたかな」


ヴァンビ

「あやつらは生意気な上に

平然と皇帝の御前オンマエに現れては

あーだのこーだのと言う。」


ヨシムネ

「何度も国を救われておるのだ。

千刃花センジンカ無くして

ナーベルク帝国の安寧アンネイはあり得ぬ。」


クリシャンテ

「確かにそうですが

如何イカンせんクセが強いものばかり、、」



クリシャンテはオルケイディアを横目に

あきれた声で言った。


オルケイディア

「要件はなんだ。クリシャンテ

まさか私の部下の愚痴を聞かされるのか?」



ヨシムネ

「とりあえずかけろ。」



四人は円卓エンタクへと腰をかけると

ヨシムネも腰をかけた。


ヨシムネ

「して、今日は何用だ。」


クリシャンテ

「私から報告がございます。」


ヨシムネ

「何だ。申せ。」


クリシャンテ

「ハッ。

おそらく、オルケイディアの耳には

すでに入っている情報ですが、

一刃花隊イチジンカタイ飛行戦闘魔進ヒコウセントウマシン悶々雅・Aモモンガ・アー

墜落したとの一報が入りました。」


プラム

「墜落?」


ヴァンビ

「なんだと!?

亜那魂蛇Iアナコンダワンではないのか!?

なぜ、悶々雅・Aモモンガ・アーなんだ!」


クリシャンテ

「私も分からぬ。

予定では亜那魂蛇Iアナコンダワン

聞いていたのだが。」



プラム

「確かなのですか?」


クリシャンテ

「確かだ。」


プラム

「そもそも何故、墜落をしたのですか?」


クリシャンテ

「報告によると

ラミオラス帝国の攻撃によるものだ。」


プラム

「しかし、我が国の空域圏内で

そんな事があるのですか?」


クリシャンテ

「ラミオラス帝国の空域圏内だ。」


ヴァンビ

「なんだと!?

国境付近で着陸する予定だったはずだ。」


クリシャンテ

「結果的にそうではなかった。」


ヴァンビ

「一体何が起こってんだ、、」


オルケイディア

「くだらん。

そんな事でいちいち集めたのか。」


ヴァンビ

「おいおい、お前の部隊だよな?」


オルケイディア

「だから何だ」


ヴァンビ

「相変わらずだな。オルケイディア。

千刃花センジンカは毎度毎度

問題を起こしてばかり

その度に"だから何だ"とお前は言う」


オルケイディア

「現場を知らぬ物言いだ。

歴戦の猛者モサの言葉とは到底思えぬ。

どうやら髪と一緒に牙も抜かれたようだ。」


ヴァンビ

「貴様、、俺を愚弄グロウするのか?」


オルケイディア

「事実。任務とは流動的だ。

隊長達も細かい事など

いちいち私に報告しない。」


ヴァンビ

「遊ばせ過ぎなんだよ。

もっと軍人らしーーー」


プラム被せ気味に

「そんな事どうでもいいです。」


ヴァンビ

「ったく、、胸糞ワリィ女だ。」



ヴァンビは大きなため息を吐くと

プラムの方を向いた。


ヴァンビ

「それはそうとプラム、お前んとこの弟も

乗ってるのは知ってたか?」


プラム

「いいえ、知りません。

ジジからは何も聞いておりません。」


オルケイディア

「当たり前だ。

直前、ヨシタダから連絡が入ったからな。」


クリシャンテ

「報告義務をオコたるではない。

オルケイディア」


オルケイディア

「まだ60分も経っていないのに

報告義務もクソもあるか。

何か不都合なことでもあるのか?

クリシャンテ」


クリシャンテ

「不都合?報告義務は速やかに。

決定したその場で迅速に。

新人隊士にいう言葉を

まさか華四百花カシヒャッケにするとは、、」


ヨシムネ

「よせ。くだらぬ問答などいらぬ。

結果が全てだ。

過去の話などいらぬ。

未来の話をしろ。

それに案ずる事はない。

あやつらは我が国が誇る最高戦力。

鞘花ショウカである以上

死ぬなどということはまず無い。」


オルケイディア

「皇帝の仰るとおりだ。」


クリシャンテ

「それと、、

ラナンキュラスとアキレイも

一緒にいるそうだ。」


ヴァンビ

「おい。オルケイディア。

貴様知っていたな?」


オルケイディア

「何をだ。」


ヴァンビ

「一緒に乗ることをだ。」


オルケイディア

「一緒に乗ってなどいない。

やつらは休暇をとりバカンスへ行くと

私に言っていた。

急に決まったのであろう。

可愛い部下が休みが欲しいと言ったのだ。

断ることなど私には出来ぬ。

それにアキレイがいるのであれば

亜那魂蛇Iアナコンダワンを使うのは

ごく自然な事だと思うが?」


プラム

「バカンス、、フフっ

アキレイとラナンキュラスらしいわね!!」


ヴァンビ

「何を笑うか!!」


クリシャンテ

「この時期にバカンスなど、、

一体、誰の許可を得て、、」


オルケイディア

「私が許可しないで誰が許可するのだ。」


ヴァンビ

「ラナンキュラスと、アキレイめ!!

バカンスなどと嘘をつきおって!!!

オルケイディア!!

亜那魂蛇Iアナコンダワンから

悶々雅・Aモモンガ・アーへ変更するならば

すぐに報告しろ!!

今回はジニア捜索キキョウ救出という

鞘花ショウカ二人を救う大事な作戦だろうが」


オルケイディア

「ならば、何故ヨシタダの提案を破棄した。

今回の任務はヨシタダを主軸に

一刃花隊イチジンカタイが遂行する。

その隊長であるヨシタダが

負傷していない隊長格以外全員と言ったであろう?」


プラム

「破棄?破棄したのですか?

ヨシタダ様の意見は今回の任務の重要性を

考えれば妥当な作戦です、、」


クリシャンテ

「他隊との連携を嫌うヨシタダ様が

そうまで言ったのか?」


ヴァンビ

「仕方がない!!国防に関わる話だ!

残った隊長には

帝国の守護についてもらわねばならない。

先月の様に強襲されたりすれば

鞘花ショウカは一人でも多くいた方が良い。

最小限に抑える為に

任務失敗した事がないヨシタダ率いる

一刃花隊イチジンカタイに行ってもらったんだ。」


プラム

「そもそも千刃花センジンカ

独立した特務部隊。

全権はオルケイディア様にあるはずです。

形式だけの許可を却下するなんて。」


ヴァンビ

鞘花ショウカの所属は

千刃花センジンカ

しかしナーベルク帝国軍の兵士でもある。

国力、国防の面を考えた上での判断だ。

戦える鞘花ショウカがいないのでは

話にならん。」


オルケイディア

「クーワもアナスタシアもレンゲイもいる。

重症だろうがなんだろうが知ったことか。」


プラム

「相変わらず鬼ですね、、」


オルケイディア

零華フラワを破壊した代償だ。」


クリシャンテ

「しかし、ルシファンブルクが強襲された際は

鞘花ショウカ三人でもやっとであった。」


プラム

「確かにそうですね、、

報告にあった十鬼槍ジッキソウと呼ばれる部隊が

もし襲ってきたら、、」


ヨシムネ

「もう良い。オルケイディア。

報告しなかったのは

何か理由があるのか?」



オルケイディアはしばらく間を空けると

ゆっくりと口を開いた。


オルケイディア

「皇帝。まだ調査段階なのですが

どうやら色々なところで

情報が漏れているようです。」


プラム

「、、、どういうこと?」


クリシャンテ

「オルケイディア

言葉に気をつけろ。」


ヴァンビ

「引っ込んでろジジィ。」


プラム

「お二人ともお静かに。」


ヨシムネ

「申せ。」


オルケイディア

「どうやら軍内部にスパイがいるようです。」


ヨシムネ

「まことか?

オルケイディア。

その言葉の意味を分かっているのか?」


オルケイディア

「これは憶測ではなく確信です。

私と一刃花隊イチジンカタイ

調べた結果、恐らくゲイジュが

この国の情報を横流ヨコナガ

していたのを はじめ

何人か紛れ込んでいると思われます。」


ヴァンビ

「なんだと!?」


クリシャンテ

「いや、オルケイディアは間違っていない。

ここ最近は全ての動きが読まれている。

ジニアとキキョウの今回の一件

マーベラスやルシファンブルク強襲

ポセドニア のダンジョン攻略、

数年前のスゴウ平野の戦いから全てだ。」



重々しい空気が流れ

皆、しばらく口を開かなかった。


ヨシムネ

「オルケイディア、誰がとまでは

分からぬのか?」


オルケイディア

「分かりません。

亜那魂蛇Iアナコンダワンには

あえて乗らず悶々雅・Aモモンガ・アー

乗ったとしても攻撃を受けました。

恐らく待ち伏せされていた。」


プラム

「でも、逆を言えば好機です。

悟られなければ泳がせられます。」


クリシャンテ

「では。偽情報を流し

炙り出せば良いのだな。」


ヴァンビ

「そう簡単に尻尾掴めるかよ。

ヨシタダじゃなくて

お前んとこの秘蔵っ子に任せたらどうだ?

全てを伝授したんだろ?ジジィ」


クリシャンテ

「あやつが生きていれば

とっくにそうしてる。」


プラム

「ジニアなら上手くやってくれそうですが。」


オルケイディア

「ぁあ。やってくれた。

だから恐らく待ち伏せされた。」



クリシャンテ

「やはり、、そうか。」


ヴァンビ

「やっぱり一筋縄ではいかんな、、」


プラム

「何か掴んでいたのですね。」


オルケイディア

「今回はしてやられた。

しかし、見つけ出せば分かる。

ジニアを早急に見つけ出さなければ」


プラム

「ヨシタダ様がいれば

何も心配はいりません。」


クリシャンテ

「とても優秀な鞘花ショウカへと

成長してくれた。」


ヴァンビ

「そうだな。

奴は情に流される事はない。」


ヨシムネ

「、、、そうか。」


オルケイディア

「墜落など物ともしない。

いらぬ世話だクリシャンテ」


プラム

「心配性は昔から直ってませんね。

ヨシタダ様の事となるといつもそうです。」


ヴァンビ

「作戦を練り直せねばならなくなった。」


プラム

「無駄ですよ。

一度、動けば止まらないのが千刃花センジンカです。

ね?オルケイディア様」


オルケイディア

「ぁあ。止まらんな。」


ヨシムネ

「分かっておる。

あやつらに全てを任せるとしよう。

もう下がれ。」


ヴァンビ

「ハッ」


クリシャンテ

「ハッ」


プラム

「ハッ」


オルケイディア

「ハッ」



ヨシムネがそう言うと

四人とも立ち上がり部屋から出て行った。

するとヨシムネは玉座へと再度腰をかけると

ヴォンッという音と共にヨシムネの姿が消えた。



ーー最上階 神のヤシローー



ヨシムネ

「仰っていた通りでした。

いかがなさいましょうか。」



ヨシムネはそこで何かにヒザマズいて

話していた。






ヨシムネ

「皇帝陛下」





千刃花センジンカ帝国特務戦闘部隊テイコクトクムセントウブタイ〜ー

煉獄レンゴク 冥府ゲヘナ大監獄プリズン

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There areゼイアー wheels ウィールズ within ウィズン wheelsウィールズ(完)





おまけ





椿ツバキナーベルク 義統ヨシムネ

その正室である椿ツバキナーベルク 紗倉サクラには

長らく子がいなかった。

そして十余年ジュウヨネン

側室である文女アヤメとの間に

ようやく男の子を授かることができ

国を上げて誕生を祝った。



クリシャンテ

「皇帝。おめでとうございます。

皇子誕生を心より祝福申し上げます。」



怪訝ケゲンそうなサクラの顔色を伺いながら

クリシャンテはヨシムネに言った。



サクラ

ワタクシの前でよくもそんな事を」



ヨシムネ

「やめろサクラ。」


サクラ

「フン。所詮ショセンメカケの子」



サクラはそう吐き捨てると

部屋を出て行ってしまった。


ヨシムネ

「椿家もこれで安泰アンタイだ。

帝国民には長らく待たせてしまった。」


クリシャンテ

「念願の皇子誕生です。

今日は忘れられぬ日となりましょうぞ。」


ヨシムネ

「ぁあ。アヤメにもお礼を言わねばな。」


クリシャンテ

「国民も安堵アンドしたことでしょう。

それはそうと

ルシファンブルク家をはじめとする

六大貴族から更なる繁栄ハンエイと祝福を込めて

祝いの品が届いております。

そして、我ら華四百花カシヒャッケからも

送らせていただきました。」


ヨシムネ

「城に運ばせておいてくれ。」


クリシャンテ

「もう、その様に手筈テハズしております。

では皇帝閣下、時間でございます。」


ヨシムネ

「分かっておる。」



クリシャンテがそう言うと

大きな段幕ダンマクを降ろした。

その瞬間、ヨシムネの目の前には

ダリア城の広間に集まった国民達の姿が見えた。

そして盛大な拍手喝采で迎えられた。

ヨシムネはマイクを持ち国民の歓声に

手を上げて答えた。


ヨシムネ

「「ナーベルク帝国の者たちよ

今日は祝いの日だ。

皇子の誕生を心より嬉しく思う。

我が息子には

椿家のの字と

この国にチュウす心を持つよう

義忠ヨシタダと名付けた。

我等ナーベルク帝国は

この勢いに乗り

国土を拡大しつつ近隣諸国キンリンショコク

そして世界にナーベルク帝国有りと

共に知らしめようではないか!!」」



ヨシムネがそういうと

帝国民は更に更に歓声で応えた。

ーー5年後ーー

椿ツバキナーベルク 義忠ヨシタダ5歳

ヨシタダの母であり

ヨシムネの側室であるアヤメが

突然の病で逝去セイキョする。


少年ヨシタダ

「お母様、、」


サクラ

パシン手を叩く音!!

その名で私を呼ぶな!!汚らわしい!!!!」


少年ヨシタダ

「申し訳、、ありません、、サクラ様」


サクラ

「母が死んでも泣かぬのか?

気味の悪い子だよ。

二度とその名で呼ぶんじゃないよ!!」


少年ヨシタダ

「はい、、、」



しかしヨシタダは

毎晩、毎晩泣いていた。


少年ヨシタダ

「ウグッ、、お母様に、、

会いとうございます、、」


クリシャンテ

「ヨシタダ様、、

皇子たるもの人前で泣いてはなりませぬ。」


少年ヨシタダ

「分かって、、います、、

でも、、会いとうございます!!」


クリシャンテ

「会えませぬ。会えませぬが

このクリシャンテが

おそばに居ますゆえ安心して下さい。

ヨシタダ様」



アヤメが逝去セイキョした後も

ヨシムネはヨシタダを

たいそう可愛がっていた。

瓜二つの二人の顔は誰が見ても

ヨシムネの息子だということが

ハッキリ分かるほどよく似ており

自分に似ているヨシタダを

ヨシムネは溺愛していた。


少年ヨシタダ

「お父様!!

ヨシタダはこの国の皇帝となるのですか?」


ヨシムネ

「ぁあ。そうだ。

この国を導き、この国の顔となるのだ。」


少年ヨシタダ

「はい!!

お父様の様な偉大な皇帝になりたいです!!

どうすればなれるのですか?」


ヨシムネ

「そうか。そうか。良い子だ。

まず皇帝となるには

皆の見本とならなければならない。

規範キハン規律キリツを守り

誰よりも正しいことをするのだ。」


少年ヨシタダ

「少し、、難しいです、、」


ヨシムネ

「そうだな、、じゃあ、、

神様の話をしてあげよう。」


少年ヨシタダ

「神様ですか?神様とは誰ですか?

鞘花ショウカと呼ばれる人たちのことですか?」


ヨシムネ

鞘花ショウカを知っているのか

鞘花ショウカは神様ではない

神様の力を持つ強い人の事を言うのだ」


少年ヨシタダ

「神様の力を持つ強い人、、

カッコ良いです!!!

ヨシタダも鞘花ショウカになりとうございます!!

強くなってお父様のお近くでお父様を

守りとうございます!!」


ヨシムネ

「強くはなれる。

だがヨシタダは鞘花ショウカにはなれぬ。」


少年ヨシタダ

「何故ですか?」


ヨシムネ

「この国の鞘花ショウカ

私やヨシタダを守る役目があり

人にはそれぞれ役割りがある。

鞘花ショウカは人を守り

皇帝は国を導く。

ヨシタダは国を導かなければいけない。

だから鞘花ショウカにはなれぬ。」


少年ヨシタダ

「そうなのですね、、ではお父様

強い人と神様はどう違うのですか?」


ヨシムネ

「人は死んでしまうが

神様は姿形を変えて生き続ける。

死ぬことなど有りはせぬ。

そして何より神様は一番偉い。」


少年ヨシタダ

「一番偉いのは皇帝である

お父様ではないのですか?」



ヨシムネ

「少しだけ違っている。

さぁ。その話はまた今度にしよう

もう寝なさい。ヨシタダ。」


少年ヨシタダ

「はい!!わかりました!!

おやすみなさいお父様!!」


ヨシムネ

「ぁあ。おやすみ。」


ヨシタダはそう言ってお辞儀をすると

最後にヨシムネの顔を見て言った。


少年ヨシタダ

「ヨシタダは鞘花ショウカには

なれませぬが鞘花ショウカのように

強い人になりお父様の様な皇帝に

なりとうございます!!」


ヨシムネ

「頼もしい限りだ。

強くなれ。ヨシタダ」


少年ヨシタダ

「はい!!」



そしてヨシムネの部屋を後にした。

ーー3年後ーー

椿ツバキナーベルク 義忠ヨシタダ 8歳

帝国が沸き立つほどの大ニュースが舞い込む。


サクラ

「どうかしたのか?クリシャンテ」


クリシャンテ

「皇帝、、、本当ですか?」



ヨシムネ

「それが法というもの。

この先何があるか分からぬ

子同士に皇帝位を巡り

殺し合いをさせるわけには行かぬ。」



クリシャンテはしばらく間を開けると

ようやく口を開いた。


クリシャンテ

「おめでとう、、ございます。

サクラ様のご懐妊カイニン

心より祝福申し上げます。」


サクラ

「フフッフハッハッハッ

いらぬ!あの忌々イマイマしいガキなどいらぬ!」



正室であるサクラとの間に

男子が生まれると

側室の子であるヨシタダは皇帝を継ぐ事が

出来なくなってしまった。

優先されるのはあくまでも正室の子

ヨシタダは本家である椿家から

分家の鍔騎ツバキ家へ行くことになった。

大好きだった父と離れることとなり

もう椿を名乗れなくなってしまった。


少年ヨシタダ

「お父上!!お父上!!

ヨシタダはお父上と

離れとうないです!!!

このヨシタダが何かいたしましたか!?

お父上!!お父上!!」


サクラ

「黙れ!!皇帝に向かって

お父上とは何事じゃ!!!!

パシンッ手を叩く音



少年ヨシタダ

「グッ、、、」


クリシャンテ

皇后コウゴウ様!!!」


サクラ

「なんじゃ、、その生意気な目つきは!!」



ヨシタダはサクラを

キッと睨んでいた。


ヨシムネ

「やめろサクラ。まだ子供である。」


サクラ

「貴様の顔など見たくもないわ!!」



そう言うとサクラは

ヨシタダを突き飛ばし

部屋から出ていった。



ヨシムネ

「ヨシタダ。お前は今日から分家である

鍔騎ツバキ家の者となる。

後継は二人といらぬ。」


少年ヨシタダ

「そんな、、、」


クリシャンテ

「さぁ、参りましょうヨシタダ様」


少年ヨシタダ

「行きとう有りませぬ!!」


クリシャンテ

「本家の椿家、分家の鍔騎ツバキ

そしてルシファンブルク家は

このナーベルク帝国を作った一族でございます。

鍔騎ツバキは矛となり

ルシファンブルクは盾となる。

ヨシタダ様はきっと皇帝に似て

素晴らしい戦士となりましょうぞ。

さぁ、、鍔騎ツバキ家の者が待っています。」



そしてヨシムネはクルッと背を向けて

歩き出すとヨシタダは泣きながら叫んだ。


少年ヨシタダ

「お父上!!!!!!!!」



ヨシムネはその声に反応し一度足を止めた。

そして振り向きもせずヨシタダに向かって言った。



ヨシムネ

「強くなれ。義忠ヨシタダ



しかし、ヨシタダが鍔騎ツバキ家へ養子に

出されてから半年後

鍔騎ツバキ家の一族全員が暗殺されてしまった。

ヨシタダはいち早く

陰謀に気付いた家臣カシンの手により

ルシファンブルク家へカクマわれた為

命は助かった。


ーー3年後ーー

鍔騎ツバキナーベルク 義忠ヨシタダ 11歳

立派な鍔騎ツバキ家当主として

先を見据えていた。


青年ヨシタダ

「クリシャンテ。

鍔騎ツバキ家は惨殺ザンサツされ

屋敷も焼き払われ

一刃花隊イチジンカタイ隊長を除けば

残された者は避難した女、子供ばかり。

母は幼い頃に病死し

もはや顔すらも覚えておらぬ。

しかし、クリシャンテ

病ではなかった事だけは鮮明に覚えている。」


クリシャンテ

「ヨシタダ様、、

一体何を、、申すのですか?

どこでそんな事を、、、」


青年ヨシタダ

「お前だけが私をずっと支えてくれていた。」


クリシャンテ

「そんなことはございませぬ。

ジジ様やプラム様も

おそばにいてくれたでは有りませぬか」


青年ヨシタダ

「ぁあ。同い年だが

あの双子の事を弟や妹の様に思っている。

だが、私にとってお前は特別だクリシャンテ。

これからもよろしく頼みたい。

この先大きく時代が動くであろう。

有望で才能豊かな戦士が沢山出てくる。

その時、まだ未熟な私を支えてほしい。」


クリシャンテ

「もちろんです。ヨシタダ様。

そう言えば優秀な者が

すでに同世代で沢山いるそうですな。

バンジャマン家の次男様は

すでに刃術ジンジュツ

いくつか使えると聞いておりますし

マーティン家の長男様は

めっぽうケンカが強いとか

プラム様もジジ様も神童シンドウ

言われているほど卓越タクエツした頭脳と才能を

お持ちである。

ヨシタダ様の剣技も素晴らしいと

耳に聞いておりますぞ。」


青年ヨシタダ

「バンジャマンとマーティン、、、

二人とも話した事はないが

噂には聞いている。」


クリシャンテ

「才能豊かな世代でございます。

次代をニナうでしょうな。

頼もしい限りです。」


青年ヨシタダ

「そうだな。

しかし私はその中でも頂点を目指す。

そして、いつか鞘花ショウカとなり

この国の全てを正す。

そして、、」


クリシャンテ

「、、、どうかなさいましたか?」



すると、ヨシタダは深く沈んだ瞳で

クリシャンテをまっすぐ見て呟いた。






青年ヨシタダ

義統ヨシムネを殺す。」


(完)

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