第3話 過去

出勤初日はカードの紛失後、部署のスタッフへ自己紹介をして、仕事を終えた。


自宅に帰り1DKの窓際に置いてある黄色いソファに深く腰掛け、スマホを手に取った。


ミナ「もしもーし、ユリ〜きいてよぉ」

学生時代からの友人ユリが相手だ。


ミナ「はぁ出勤初日からカードなくしちゃうし、部長には独り言聞かれて意地悪言われちゃうし、散々だったよ〜」


そういうと、ユリが電話越しに可愛らしい声で笑った。おっとりとして気品あふれる姿が目に浮かぶ。


ユリ「ふふ、ミナは学生の時からおてんば娘だったもんね〜。ドアも蹴飛ばしちゃうほどっ」


ミナ「あー!ユリも意地悪言うのー?ひどーい!」


今日起こった話をひと通り話し終えると、ユリが気まずそうに話を切り出した。


ユリ「あのね、ミナ。もう大丈夫?その…ケイゴのこと」


ミナは喉の奥がキュッと締まる感覚をおぼえたが、すぐさま笑顔をつくり


ミナ「なぁにゆってんの!大丈夫に決まってるでしょ!へーきへーき!一言だけ残して消えるやつなんかこっちから願い下げよっ」


ユリ「そう?それならいいんだけど、無理だけはしないでね。つらくなったり話を聞いて欲しかったら、いつでも連絡してね」


ミナ「うん。ありがとう。ユリだいすきっ」


そう言ってユリとの電話を切った。


ミナ「はぁ。ケイゴのばか…」



いつか結婚しようね

そう約束した仲だったが、ケイゴは卒業を機にアメリカへ留学。

「終わりにしよう」その一言を残し音信不通となった。


ミナ「はぁやだやだ。シャワー浴びて寝よっと」


1つに束ねたロングヘアをほどき、髪から微かに香るシャンプーの匂いとともにシャワーへと向かった。

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