第32話 天国に行ってしまった友人に
夢はもう飛んでしまった
静かな夜だけが残る
宝石の空を彩る
星がきらめいている
点滅している
誰かが泣いているのを知っている
もしかすると、いまはもう泣かないかもしれない
空に向かって伸びる彼の手
あの星を摑もうとする涙
彼は約束の場所に着くところだ
約束した景色を見に行く
やみ夜に彼は断腸の思いをした
涙は思い出のかけらを残す
あのかすかな夜風と彼女のふわふわした髪
悲しみの水も塩辛い
楽章が壊れたように
彼はばらばらになった音を無駄に拾った
世界の美しさが消えてしまったからです
こんな人が付き添っていても
それでも幸せになれない
雨上がりのひとときの夕日
また取り返しのつかない夜に飲み込まれた
世界は霧に包まれた
笑顔は溶けていく
笑顔は顔に刻まれている
しかし悲しみは心の中で海のように深い
あれは赤い滑走路か
あれは授業のチャイムか
あれは陽の射す緑の葉か
何だそれは
電灯はもう消えた
夜がすべてを飲み込んでいる
闇の中にマッチが一本
マッチに火を点けたいという願いさえ消えてしまったのです
ここが暗いからです
夜が明ければ治る
ので
あなたも柔らかな風に酔えますように
光明のために
太陽に溶けてしまいましょう
この世の露があなたを見送りますように
あなたの夢が静かで静かでありますように
夜の酒ができた
あのきらめく朝焼けだ
薔薇色か緋色か
金色の光を浴びて
夜明けの再生
今だよ
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