第6話 思わぬ出会い!

くそぅ!1日を無駄にしてしまった!

召喚獣マルスの名乗りがあんなに長いとはな。

なにが「国一つ滅ぼせます」だ。そんな力、500文字でダンジョンを攻略する事に関係ねえんだよ!!


…と脳内で愚痴っていたら、すっかり暗くなっていた。月の位置からすると多分22時くらいか。怒りに囚われ過ぎてたみたいだ。


ザッ…ザッ


何かの足音が聞こえる。俺は恐怖を感じた。

ここは町から歩いて1時間かかる山の中にある。それに、夜になると狼や熊が徘徊しているので、普通の人はここに来ないはずだ。


「誰だ!」

俺は腰に刺したナイフを構える。

『冒険の書』の力はダンジョン内でしか使えない。頼りになるのはこれだけた。


「あー、ちょっといい?」

ランプの光に浮かび上がったのは、ボサボサの長い髪が特徴的な女性だった。Tシャツとハーフパンツの上に黒いローブを羽織ったその出立いでたちは、不気味な雰囲気を醸し出していた。


「黒い『冒険の書』に心当たりなーい?」


「し、知らないけど」

俺は咄嗟に嘘をついてしまった。

真実を伝えた所で、何も変わらない。

これは俺の物になってしまったんだ。


「そうかー。それじゃ、またねー」

嘘を信じてしまったのか、女性は振り返った。


「うーん。これはまずい。私の首が飛ぶかも。急いで探さなきゃー」


俺は罪悪感に囚われた。このままじゃ、たった1つの嘘で人1人の首が飛ぶことになってしまう。俺は考えを改めた。


「すみません!あなたが探している物って、これですよね?」


俺は鞄から『冒険の書』を出した。


「あー、そうだけど何で君が?………そうか、そういうことだね。」

彼女は大体の事情を察したようだ。


「ちょっと。来てもらおうか。」


「すみません!すみません!」

俺は自分のした事を理解した。


〜今までやった事は立派な『窃盗』だったと。

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