飛行機は危険がいっぱい

 飛行機は我々の生活に無くてはならない手段の一つだ。

 特に合衆国は長距離の移動手段として航空機を使う事が多いが、航空機はその利用量に比べて事故・事件が起こる確率は非常に低い。航空機で死ぬ確率よりも、空港までの道のりで交通事故にあう確率の方が遥かに高いのだ。


 しかし、このアクション映画世界においては飛行機は恐ろしく危険な乗り物である、航空会社によっては事故が非常に起きやすいのだ。我々にとって便利な移動手段は、ここではあなたの命を脅かす存在となっている。


 もっともポピュラーな脅威はハイジャックだ。

 9.11以降、TSA(運輸保安庁)が発足し、全米の航空機はより強固な安全性を持つに至り、世界規模の安全対策が講じられたが、この世界においてはTSAは全く仕事をしていない。当たり前のようにテロリストや犯罪者が武器を持ち込み、容易くハイジャックをするだろう。そればかりか普通の旅客機に突撃銃や手りゅう弾で武装したテロリストのグループが容易く紛れる事もしょっちゅうある。現実にはスカイ・マーシャルと呼ばれる私服の警官が同乗しているが、この世界ではハイジャック犯を阻止できる事はごく稀である。


 しかし、こういった場合はほぼ確実にヒーローも機内に乗り込んでいる。その場合は、飛行機が墜落し乗客乗員全員死亡というケースは0に等しい。

 が、機内は確実に混乱になるだろう。運よく機体を掌握し安全を確保する頃には、確実に機体はダメージを負って無事な着陸は不可能になる。機体を損壊させるほどのハードランディングが確実に発生するため、常にあなたは恐ろしい思いをして座席で縮こまるしかない。


 特に一番恐ろしいのが「お客様の中にパイロットはいませんか」という、客室乗務員の悲壮な言葉を聞く瞬間だろう。近年のコックピットは装甲化されているのでテロリストが銃を乱射してもこじ開けるのは不可能だが、こういったケースではパイロットの死亡または人事不省になる確率はかなり高めである。もしあなたが飛行機の操縦免許を取っているなら、あなたがヒーローにならなければいけなくなるだろう。


 おまけに機内で銃撃戦が発生すると恐ろしい事態――機内の急減圧による吸出し事故も発生する。現実世界ではそういった事は起こらない(少なくとも減圧はするが、銃弾程度の穴では飛行機は落ちない)が、アクション映画世界では100%の確率で発生する。死亡確率が高いとすればこの瞬間だろう。巻き添えをくって空中に放り出されないためにも、座席に座ってシートベルトをきつく締める事。また、銃弾が命中した壁などには絶対に近寄らない事。大きな穴が開いて吸い出されるだろう。


 また、そもそも機内の銃撃戦で流れ弾にあたる事も防がなければならない。この場合は、通常の不時着手順における対ショックの姿勢が有効になるケースもある。被弾面積を可能な限り減らせば銃弾に当たる確率も減らせるだろう。往々にして機内では立っている人間が銃火に晒される事が多い。


 もし、ヒーローに協力を求められたら素直に従う事だ。もし機長や副操縦士とヒーローが言い争っていたら、ヒーローを支持しよう。機体の掌握が可能なのは確実にヒーローの方にある。


 さて、これで生存の可能性は高くなったが、とても恐ろしい思いをするのは確実だろう。少なくとも楽しい気分にはならない筈だ。

 飛行機は目的地に到着しないかもしれないし、あなたが機内に持ち込んだ手荷物が失われる事もありえるし、最悪の場合は死に至る事もある。もしかしたら二度と飛行機に乗れない程の精神的外傷を負う事もある。だが、もっとも安全なのは飛行機に乗らない事だろう。


 とは言え、飛行機に乗らない生活というのは難しいものがある。もしあなたが出張や旅行で絶対に乗らなければならなくなった場合、どうすれば災難に遭わずに済むのか?


 統計では小型の機体ほど安全という結果が出ている、一般的なエンジン4発の大型機(現在も運行しているのはボーイング737や、エアバスA380)、2発の中型旅客機は被害に遭いやすい一方で、国内の短距離路線便のような定員数の少ない小型旅客機を使う便は、テロリストの標的になりづらい傾向がある。特に、知り合いしか乗っていないビジネスジェット機か自家用機であれば信頼性はグッと増す。

 また、目的地が大都市では無く田舎や地方都市などの場合も、事件が起こる確率が低くなる。決まってパリやロンドンなどの国外都市や、ニューヨークやロサンゼルスなどの都会に向かう便ほど、この世界では深刻な大事件が発生するものだ。


 後はヒーローが乗り込んでいるかどうかの確認である。もし同じ便にそれらしい人物が乗り込んでいるのを確認して、もしキャンセルできるならその便をキャンセルした方がいいだろう。


 どのみち、発生しても墜落してヒーロー以外は全員死亡という事態は起こり辛いものである。結局のところ、乗ったら無事に降りる事を祈るしかないのだ。

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