テレビ記者の取材

ホムラ

テレビ記者の取材

「ふわあぁ…」

気持ちのいい朝。男は起きてすぐに朝食を作り始めた。やらなけならないことがあるからだ。取材という名の情報収集である。

目玉焼きを焼いている間、彼ははテレビをつけながら軽く掃除をする。

少しして、男は顔をしかめた。彼は忘れていたのだ。朝の6時半に、例のニュース番組がながれていることを。あのニュース番組は誇張ばかりして、嘘を平気で流す。A型潔癖の彼はそういうことがたまらなく嫌いだ。男はテレビを消し、代わりに音楽を流した。


掃除も終わり、男は朝食を食べながらスマホで調査対象を調べていた。彼が調べているのは正体不明の連続殺人鬼。犯人への手掛かりは一つ。後頭部を鈍器で殴打するという手口だけだった。各地で被害が出ているのにもかかわらず、未だに証拠が出ていないのである。犯人はよほど几帳面なのだろう。しかし、日本中が恐れる犯人の手掛かりを、ただ一人、彼は知っている。いまある手掛かりの把握は重要だ。それがキーになるかもしれない。彼はスーツやマイク、カメラなどを持って意気揚々と外に出た。


「今世間を騒がせている連続殺人鬼のことで、知っていることはありますか?」

男は犯行現場の近所を周ってはこの質問を繰り返した。

聞いて回った人全員が

「知らない」

と答えることに、男は次第に爽快感を覚えていた。


ーー※ーー

それから一週間後、連続殺人鬼が捕まった。犯人を一人で突き止めたテレビ記者には警察から賞状が渡された。今日は自分の大手柄が全国に放送される日だ。記者は、その時間を一人で待っていた。そろそろ流れるだろうか。彼はいつになくそわそわしていた。すると、ニュースキャスターがことばを紡ぎだした。

「えー、次のニュースです。昨日、世間を騒がせていた連続殺人鬼、『加藤達郎』が逮捕されました。彼はテレビ取材者を装って、自分の犯行に不備がなかったかどうかを調べており…」

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テレビ記者の取材 ホムラ @homuhomu2021

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