第14話 異世界ダンジョン-14

5階層は、やけに広い空間だった。例えるならば、コロシアムの様な円形状の空間だ。天井はそんなに高くないから、圧迫感を覚えるが、ビルなんかの天井よりは高い。それでも、5mあるかないかくらいだ。メィルが飛ぶには問題ないが、飛行タイプのモンスターなんかが居たら飛べないだろうなって感じだ。大きさにもよるけど。


「敵はいないようですね。」

「え? じゃあ、ここで決着つけちゃう?」

「つけるな!」


何かあると喧嘩するトランとフォルムに気を付けつつ、辺りを見回すが、何もない。じゃあ、次の階への階段があるのかと言えば、それも無い。どうしろと言うのだろうか。


「ねぇ、お兄ちゃん。天井に何かボタンみたいなのがあるんだけど、押していい?」

「ボタン?」


メィルが指さす方を見ると、確かに天井に何か突起物がある。これ、メィルみたいに飛べないやつは、どうやって押すんだ? まあ、何か魔法でも使えばいいだけか。それすら使えないやつは? 気にしたところで仕方が無いので、メィルに許可を出す。


「押していいぞ。今のところ、それ以外に何の変哲もない空間だし。」

「やったー! ぽちっとね。」


メィルは楽しそうにボタンを押した。すると、入り口から一番遠い場所に魔法陣が生成された。その数、ざっとみて百くらいか? 一体何が起きるんだ?


「主様、下がってください。嫌な予感がします。」

「ボクは何が来ても平気だよ。そこの攻撃手段のない奴と違って。」

「は? 攻撃するしか能がない奴が何をおっしゃいます。」

「だから、ボクはパリィで弾けるんだって。あ、ごめんごめん、記憶力低いんだっけ?」

「キーッ!」

「無駄に喧嘩すんな! それよりも、敵だぞ!」


トランとフォルムが喧嘩している間に、魔法陣から敵が現れる時間が過ぎたようで、次々と実体化していく。実体化したモンスターは、ボロフードを被った奴らで、手には杖を持っている。これは、どう見ても魔術師ってやつだな。


百体ほどの実体化した魔術師。そいつらは、俺が何かをする前に、俺に向けて杖を向けた。そして、杖の先から様々な種類の魔法が飛んでくる。水、火、木、石、後はよくわからんが、とにかくたくさんだ。


「これは、避けきれない!」


どれほどの威力があるのかは分からないが、どう考えても前の階に居るようなモンスターより弱いはずがない。つまり、これだけの攻撃を受けたら――死……。


「主様、お任せください。」


トランが俺の前に出ると、ラージシールドと呼べるような形態になる。しかし、いくら防御力が高いとはいえ、これだけの魔法の直撃を受けたら、いくらトランであっても壊れるんじゃ……。そして、すぐに全魔法がトランに着弾した。爆発が続き、トランの姿が煙に包まれて見えなくなる。


「トラン! 大丈夫か!」

「あれ? 壊れちゃったの? 壊れちゃった?」


フォルムが、不穏な事を言うが、その結果はすぐにわかった。煙が晴れた先には、無傷のトランが人型に戻って立っていたのだ。


「わたくしに、魔法は効きませんわ。」

「そ、そうか、魔法を吸収するんだったか……って、魔法使いに対して無敵だな!?」


実際に無敵なようで、再び杖を構えた魔術師達の魔法を、人型のまま吸収していく。煙が出たのは、魔法同士がぶつかったせいであっただけで、トランが触れた魔法は、そのままシュンと消えていくようだ。


「よし、この隙に攻撃するぞ、フォルム!」

「ボクに任せてよ! あんな奴ら、簡単に倒してみせるよ!」


トランに触発されたのか、妙にやる気を出したフォルムだった。トランだけでは、魔法は効かないが攻撃できないので、決着が着かないだろう。魔法に対して、遠距離で応戦するために、フォルムをスナイパーライフルに変化させた。


「よし、これならトランの横から攻撃できるぞ。」


俺はスコープを覗き……。


「って、この距離じゃ倍率が高すぎて逆に見づらいわ!」


遠距離と言っても、狭いダンジョンの中だ。相手まで数百メートルとかあるならまだしも、数十メートルでは逆に使い勝手が悪かった。だが、せっかくなので使ってみることにする。スコープを使わずに、スナイパーライフルを構え、撃つ。


反動は拳銃なんかの比では無く、威力は高い。だが、反動で照準がずれるために連射が効かず、弾の制限は無いにしても、そんなに強くは無いように感じた。


それでも、一発一発をきちんと狙って撃つと、命中率は良かった。そして、威力が高いので魔法使いを1発で倒すことが出来る様だ。


魔法使いたちは、魔法を使うくせに知能が低いのか、魔法が効かないトランに対してまだ魔法を使ってくる。まあ、目標が俺だから、トランを狙っているわけでは無いのかもしれないが。


魔法使いを倒すたびに、新しい魔法を覚えたり、魔法のレベルが上がったりしたが、今は銃ばかりなのであまり使う事は無いだろう。


「いや、これならどうだろうか? フォルム、属性を持った弾に変えられるか?」


「うーん、あ、出来るみたい。試しに撃ってみて!」


俺は、火魔法を込めた銃弾を撃つ。その弾は外れてしまったが、着弾した場所が燃え上がった。これが命中していたなら、攻撃力がさらに上がる事だろう。ただ、今は普通の弾でも一撃だから、サブマシンガンとかで使ってみることにするか。

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