第10話 異世界ダンジョン-10

運がいいのか悪いのか、あっさりとボス部屋についてしまった。レベルこそ上がってはいるが、それでもステータス的にはまだオークジェネラルにすら勝っていない。その代わり、スキルは山ほどあるが、魔法はまだ実用的なレベルに達していないし、補正となりそうなスキルも微妙だ。まあ、ダメだったらボス部屋の扉をそっと閉めてレベル上げに戻ろう。

ボス部屋の豪華な扉を押すと、中央に巨大な物体が見えた。そして、その前には2体の鎧が見える。とりあえず、中に入る前に鑑定だ。


スケルトンナイト(物質):HP140、MP80、攻撃力70、防御力70、素早さ60、魔力0、装備:鋼の剣・攻撃力20、鋼の鎧・防御力20、鋼の盾・防御力20、スキル:剣術(4)、盾術(4)、魔法耐性(小)


全身を鎧で覆っていたため分かりにくかったが、スケルトンナイトらしい。装備でがちがちに防御を固めている上、ステータス的にも防御力が高い。かといって攻撃力が低い訳でもなく、スキルも剣術、盾術と揃っている上、魔法耐性も小ではあるがついている。まあ、もとの魔力が0だから魔法で攻めるしかないな。


チタンゴーレム(物質):HP500、MP100、攻撃力80、防御力100、素早さ50、魔力50、スキル:物理耐性(大)、防御力アップ(中)、格闘術(6)


ボスはここに来てスケルトン縛りではなく、ゴーレムだった。装備こそ無いが、HPがめっちゃ高い上に、防御力も高い。さらに言えばスキルで防御力が上がっているため物理攻撃で倒せるイメージが湧かない。そのくせ、魔力もそこそこ高い。どうするか、レベルを上げに戻るか? そう思っていたら、メィルに背中を押され、扉が閉じた。


「何してるの、お兄ちゃん。早く倒そうよ!」

「いや、見た感じとても今の俺じゃ勝てないような気がしてな。一旦戻ろう……?」


そう思って、扉を見たが、取っ手が無い。引かないとダメなタイプの扉なのに……ここに来て設定ミスか?! それともそう言うボス部屋なのか? どちらにしても逃げ道をふさがれた形だ。俺達が中に入ったので、スケルトンナイト、チタンゴーレム共に動き出した。


「やるだけやってやる!」


そう啖呵を切ってみたものの、まだ戦うイメージは湧いていない。しかし、考える時間もなくチタンゴーレムがおもむろに両手をグーにしてこちらに向ける。


「なんだ?」


その瞬間、チタンゴーレムの両手から衝撃波の様な物(波動拳的な)が飛んできた。


「あぶねぇ!」


横っ飛びで何とか回避したが、遠距離からも攻撃できるのかよ! ゴーレムの前にはがっちりとスケルトンナイトが盾を構えている。


「そっちがその気なら、俺だって固定砲台でやってやる! フォルム!」

「あーい!」


フォルムをMG……機関銃に変えると、土魔法を付与して撃ちまくる。しかし、スケルトンナイトの盾は思ったよりも固く、表面ではじかれていく。弾幕にひるむどころか、2体が縦一列に並んで突っ込んできた。1体は防御に徹し、もう一体は俺に近づくと剣を振り回してくる。


「ちっ、フォルム、剣だ!」

「はいな!」


スケルトンナイトの剣をフォルムで受け流す。すると、もう一体のスケルトンナイトも斬りかかってきた。その代わり、ゴーレムから攻撃してくる様子は無い。2体のスケルトンナイトを同時に相手するのは分が悪いため、距離を取ることにした。しかし、間髪入れずに接近される。素早さがスケルトンナイトの方が高いせいか! やっぱりレベル上げしておきたかったな。

今更言ってもどうしようもないので、気持ちを切り替える。接近されたのなら、それを利用するまでだ!


「でええい!」


俺は剣でスケルトンナイトを斬る振りをして、スケルトンナイトに盾でガードのモーションを取らせる。それを盾ごと持ち上げて、もう一体のスケルトンナイトに投げつけた。スケルトンナイトは重なって倒れた。


「土魔法! 落とし穴!」


俺は魔法で地面に落とし穴を作り、そこにスケルトンナイトを落とす。


「はーい、それじゃあ、鉄球をプレゼントしようか。」


フォルムを落とし穴の幅いっぱいの鉄球に変えると、落とす。フォルムの重さは見た目通りの鉄の重さだ。これだけで倒せるとは思っていないので、さらに追撃の魔法を撃ちこむ。まあ、ダメージがありそうな火魔法で蒸し焼きにするくらいだが。スケルトンナイトは呼吸自体はしていないだろうが、魔力は0なので効果てきめんに炭化して消滅した。フォルムは神装備なので壊れる事は無いし、火傷なんかも無い。


「ひどいです、ご主人様! ボクごと焼くなんて!」

「……すまん。」


文句を言われた。今度からは事前に作戦を伝えておこう。まあ、そんな暇があればの話だが。そして、チタンゴーレムが再び攻撃を仕掛けてきた。今まで何をしていたのかと思っていたが、いつの間にか腕が6本に成ってやがる! それぞれの拳から衝撃波が飛んでくる。それを反応速度アップや地面操作で作った土の盾で防ぐ。しかし、土の盾はあっさりと壊れて盾に成らない。反応速度があっても、地面にぶつかった衝撃波が飛ばす小石までは避ける事はできず、少しずつ傷が増えた。もう駄目だと思った時、急に衝撃波が止んだ。


「しめたっ、MP切れだ!」


チタンゴーレムはMP自動回復を持っていないので、しばらくは衝撃波を撃ってこないだろう。さすがに無抵抗という事は無く、衝撃波以外の攻撃は行ってくる。6本腕のパンチはさすがにキツイ。だが、俺も遠距離から魔法を撃っているだけでは勝てないので、ここは近接攻撃で決めるしかない。


「フォルム、棍棒だ!」

「はーい。」


俺はチタンゴーレムが地面をパンチで叩きつけるのと同時にジャンプでゴーレムを飛び越える。そして、背後から棍棒で叩く。見た目的には全く意味が無いように見えるが、棍棒術のレベル8スキルは防御力無視の内部破壊だ。これによってゴーレムの内部の何かが壊れたのか、とたんに動きが悪くなった。まるで油の切れたロボットだ。

そうなってしまえば脅威ではなく、部分的に棍棒で叩いて壊して行く。腕の付け根を叩き、腕の数を減らす、足首を叩き、バランスを取れなくする。そして、下がった頭を叩き、人間では無いがチタンゴーレムも頭で情報を処理していたらしく、衝撃でぐらぐらと左右に揺れ、倒れた。あとは、タコ殴りだ!


経験値が溜まりました。レベルが40になりました。HPが90増えました。MPが75増えました。攻撃力が18増えました。防御力が8増えました。素早さが19増えました。魔力が21増えました。スキル:盾術(2)、魔法耐性(小)、物理耐性(小)、防御力アップ(小)、格闘術(3)を獲得しました。


「ふぅ、何とかなったな。まさかボス部屋から出られなくなるとは。」

「あ、お兄ちゃん! 宝箱だよ!」


メィルがさっそく宝箱を見つけた。まあ、今までの流れならほぼ確実にあると思っていたが。そして、宝箱の色は金色だった。そして、中には巻物が入っていた。


スキルスクロール・千里眼:距離を超え、見たい場所を見られるようになる。1回の使用MPは10。持続時間は30秒。


……これを取得したことは黙っておこう。これを持っているだけで覗き魔扱いされる事が確定しそうだからな。しかし、俺は取得する! なぜなら、これがあれば遠くの戦況を確認することも、敵が隠れていそうな場所を確認する事も可能だからだ! そう、戦いには必須のスキルなのだよ!


「お兄ちゃん……。」

「な、なんだその顔は。」


メィルは眉毛を下げ、残念そうな顔をしている。俺が考えていることがバレたのか!?


「嫌な予感がするの。とてつもない悪が、世界を覆う様な……。急いで、お兄ちゃん。」

「……分かった。」


俺には心当たりがあった。しかし、ラヴィ様やはじまる様が対処しているはずなのだが……。どこかでやはり未来が変わってしまっているのだろうか? こうしている暇は無いな、次の階へ急ごう。しかし、俺の前にフォルムが立ちはだかった。


「ご主人様、ボク頑張った?」

「ああ、助かったよ。フォルムが居なかったら勝てなかっただろうな。」

「そう! それなら、ボクを撫でてよ!」


武器が甘える……こんなことってあるのだろうか? いや、実際にあるから撫でてやるしか無いか。


「えへへ。」


撫でてやると、フォルムは嬉しそうに笑う。その笑顔に癒されながらも、焦燥感は募る。順調なハズ……そう思いながら扉をくぐった。


源零(分裂体):HP270、MP210、攻撃力60、防御力45、素早さ60、魔力49、装備:神器フォルム・攻撃力80、ただの服・防御力0、ラックの腕輪(極小)、髑髏の指輪、スキル:千里眼、超越者、鑑定、空間魔法(5)、スキルの吸収、棍棒術(8)、剣術(5)、銃術(3)、槍術(2)、指揮、集中力アップ(中)、反応速度アップ(中)、ジャンプ力アップ(中)、悪食、HP自動回復(小)、MP自動回復(大)、火魔法(4)、土魔法(4)、木魔法(4)、風魔法(4)、水魔法(2)、闇魔法(2)、火耐性(中)、時空魔法、怪力、土耐性(小)、スタミナアップ(中)、盾術(2)、魔法耐性(小)、物理耐性(小)、防御力アップ(小)、格闘術(3)、持ち物:低級MPポーション2個、低級HPポーション5個、道着、豚肉(ロース、ヒレ、ハツ、レバー)

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