第7話 異世界ダンジョン-7

そんな下らない事を考えているうちにハイオークが再び斬りかかってくる。近距離過ぎて銃では分が悪い。


「フォルム、ショートソードだ!」

「はーい。」


フォルムの緊張感のない声と共に、再びメカメカしい剣になる。しかし、剣術のレベルはハイオークの方が上だし、素早さの上だ。俺は防戦一方になっており、どうにかして隙を作りたい。俺は空いている左手でアイテムボックスから低級MPポーションをとりだす。


「食らえ!」


俺は取り出したポーションを、思いっきりハイオークへ投げる。その予想外の使用方法に、一瞬硬直したハイオークは、ロングソードでポーションを受ける。そして、がら空きになった胴体に、何とかショートソードを刺した。しかし、鉄の鎧で身を包んでいるハイオークには、大したダメージには成っていないだろう。しかし、その稼いだ時間でフォルムを再び銃に変え、先に後ろに居る残りのオークとオークメイジを無属性で撃つ。ついでに、立て直そうとしているハイオークにも撃つが、やはり鉄の鎧には威力はいまいちだし、こいつは火耐性を持っているから火属性付与では効果が無いだろう。MPのある限り銃で撃ち、オークとオークメイジを倒すことに成功した。


経験値が溜まりました。レベルが9になりました。MPが5増えました。攻撃力が2増えました。素早さが2増えました。魔力が1増えました。土魔法がレベル2になりました。木魔法がレベル2になりました。風魔法がレベル2になりました。棍棒術がレベル7になりました。


「よし! パワーアップした属性付与でどうだ!」


風魔法を付与すると、さっきは少し押される程度の威力だったはずだが、今回は明確に強風でよろけるほどの威力になっていた。そして、次に土魔法を付与すると、さっきの小石が固い小石になったようで、ハイオークの鎧に当たっても砕けなかったが威力は大したことない。次に、木魔法を付与して撃つ。しかし、ハイオークもさっきの攻撃を見ていたからか、ロングソードで種を防いだ。さすがにロングソードに根を張る事もなく、ポトリと地面に落ちる。しかし、落ちた後の効果はさっきの比ではなく、一瞬でハイオークの周りが緑に包まれ、つたでハイオークの足をがんじがらめにする。


「ブモアッ!」


ハイオークはロングソードで足元のつたを切るが、つたが伸びる方が早い。俺はフォルムを棍棒にすると、動けないハイオークに振り下ろす。ハイオークの脳天に直撃した棍棒は、スキルレベルが上がったおかげか、衝撃波を発生しハイオークの頭蓋骨内部へダメージを伝えたようだ。目と耳と鼻から血を流し、倒れる。しばらくして消滅した。


経験値が溜まりました。レベルが10になりました。HPが20増えました。MPが5増えました。防御力が3増えました。スキル:火耐性(小)、ジャンプ力アップ(小)を獲得しました。剣術のレベルが2になりました。


「あーあ、服が破けてしまったな、代わりが無いのに。」


あいにく、まだ防具系統はドロップしていない。今回ドロップしたアイテムも、ポーションばかりで修復液も無い。さすがに服にHP回復ポーションをかけるだけ無駄だろうし。


「お兄ちゃん、それくらいなら私が直すよ!」


戦闘がおわったことを確認したメィルがこちらに来た。ついでに、フォルムも少女姿に成る。今思ったが、この形態は……鈍器扱いか? いや、考えないでおこう。それよりも今は服だ。


「へぇ、メィルが裁縫できるなんて初耳だな。上着を脱げばいいか?」

「そのままでいいよ! 時空魔法!」


ああ、そういう事か。俺の服は切られる前の状態に戻った。短時間であれば消費MPも少なく、一瞬で直るから縫うよりよっぽど効率的だろう。


「ご主人様、ドロップアイテムを集めてきました!」

「メィル、フォルム、ありがとう。」


メィルに対抗して、役に立ちたいオーラを出したフォルムがアイテムを集めてきた。低級HPポーションが3つと、……なんだこれ?


キノコ:トリュフ。豚の大好物。


豚肉:ロース部分の肉。


俺は食べなくても大丈夫だが、普通の人間が攻略しに来た時の為に食料も落ちるようになっているのか? 一応、笹の葉の様な物に包まれているから、土がついているという事は無いが、今は要らないからアイテムボックスの中へ突っ込んでおく。


2階層の洗礼をクリアし、ダンジョン探索を開始する。どうも、この階層はオークが主体の階層の様だ。さっきの団体は単に入口にオークが詰まってきただけで、連携を取って攻めてきた訳では無いらしい。その証拠に、オークは1~3匹で集まっており、そこにたまにオークメイジが混じるくらいで、ハイオークに至ってはほぼ1匹で居た。たまたま2グループくらい混じっただけだったようだな。


とりあえず、スキルレベルとレベルアップの為にこまめに倒しておくか。ついでに何かドロップでもしないかな。そう思っていたが、物欲センサーが働いているのかポーションか食料しか落ちない。豚肉の種類ばかりふえる……ヒレに、ハツに、レバーとか。しかし、レベルとスキルレベルは結構上がった。スキルの吸収をしている分はやはり別格のスキルアップだな。


源零(分裂体):HP120、MP85、攻撃力32、防御力25、素早さ28、魔力19、装備:神器フォルム・攻撃力30、ただの服・防御力0、ラックの腕輪(極小)、スキル:鑑定、空間魔法(5)、スキルの吸収、棍棒術(8)、剣術(4)、銃術(3)、指揮、集中力アップ(小)、反応速度アップ(小)、ジャンプ力アップ(中)、悪食、MP自動回復(大)、火魔法(3)、土魔法(4)、木魔法(4)、風魔法(4)、火耐性(中)、持ち物:低級MPポーション2個、低級HPポーション7個、トリュフ、豚肉(ロース、ヒレ、ハツ、レバー)


レベルは15になり、フォルムの攻撃力が結構上がってきた。また、銃術もレベル3になったおかげで連射できるようになったし。今後は見た目重視で拳銃タイプからライフルタイプにするかな?


そう思って、フォルムをM4に変え、オークメイジを撃ち抜いたとき、巻物が落ちた。とりあえず、鑑定だ。


スキルスクロール・ランダム:見たことがある魔法の中から一つ、ランダムに獲得する。


「ほぉ、見たことのある魔法と来たか。期間がいつからかは分からないが、どうせランダムなら使ってみるだけだな。」


俺はさっそく使用する。スキル:時空魔法を獲得しました。これ、服を直した時に見たやつじゃないか。とりあえず、何が出来るのか鑑定だ。


時空魔法:対象の時間を巻き戻す。巻き戻す時間によって使用MPが変動する。神以外が使用する場合、制限が付き、使用MPが増大する。


神以外が使用する場合はMP使用量が増えるのか……MPはオークメイジから得たMP自動回復があるからすぐ回復するし、試してみるか。俺はフォルムをナイフにすると、服の端を少し切る。


「時空魔法!」


えーっと、巻き戻らないんだけど? でも、MPはしっかり0になっている。


「お兄ちゃん、神じゃないと自分以外には使えないよ?」

「MP使用量が増えるのが制限なんじゃなくて、使用自体に制限が付くのかよ! すまんが、この服直してくれ……。」

「もぅ、使う前に私に確認すればよかったのに!」


メィルの言う通りなので、何の反論もできない。それにしても、自分に使えたところで使い道が思いつかないから死にスキルになるかもな。まあいいや、とりあえず探索を続けよう。


俺は新しい道を進む。すると、ゴブリンキングが居たのと同様に豪華な扉があった。


「ボス部屋か。まあ、この階層はオークしかいなかったからボスはオークか?」

「もしオークキングだったら、お兄ちゃん多分死ぬよ? だって、オークキングって私より強いから。まぁ、めったに会う事は無いけどね! オークの数が減りすぎた時、ごくまれに生まれるらしいから。」

「何それ……この階層でオークを狩りまくったらキングが産まれるとかか? 帰りたくなってきた。」

「もう遅いよ! この階層でオークを狩れば狩るほどキングの確率が上がるんじゃないの? 扉を開けてキングだったら、ダンジョン攻略失敗ということで私は転移で帰るね。」

「そんなこと言うなよ。それなら俺も連れて帰ってくれよ。」

「ボクはご主人様を守りますから! 盾にでもしてください!」

「……とりあえず、見てからだな。」


キングだったらすぐに扉を閉めよう。そう思って豪華な扉を開く。部屋の中央には、巨大な剣と大きな盾を構えたオークが見えた。さらに、その周りはハイオークとオークメイジが控えている。さて、こいつは一体何者なのか。

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