第4話 異世界ダンジョン-4
元の通路に戻り、奥に進む。途中でゴブリン、コボルトを倒し、修復液と今度は低級MPポーションを得た。MPポーションは薄い赤色だったHPポーションと違って、薄い青色の液体だ。
低級MPポーション・回復量(20):体に直接かけるか、飲むことによって効果が出る。ただし、中身を全て使用しないと効果が無い。
今のところ、MPの回復手段が時間経過しか無かったから、即座に回復できるポーションはありがたい。まあ、現在はMPを使う魔法は火魔法のみなうえ、しょぼい魔法だからMPもほとんど使わないのだが、今後はどうなるか分からないからな。
次にまたゴブリンと戦闘し、倒したのだが、何もドロップしなかった。まあ、必ず落とすとは限らず、今までが運よくドロップしていただけだろう。ドロップに運要素が絡むのであれば、何もドロップしないのとは逆にレアドロップというのもあるのかもしれない。入口に近いここで、そんないいものがドロップするとは思えないが。
「あっ、お兄ちゃん、豪華な扉が見えるよ!」
常に千里眼を使っている訳では無いだろうが、素の状態でもメィルの方が視力はいいのか、俺には薄暗くてよく見えなかったが、通路の奥に赤い扉の様な物が見えた。近づくにつれて詳細が分かる。
「これは、大きな扉だな。この奥に牛魔王とか住んでいたりしてな。」
「牛魔王が何かは知らないけど、そんな冗談を言ってたら本当になるよ!」
「はははっ、なるわけ無いだろ。そんなもん1階から出たら誰もクリアなんて出来ないからな。」
そう言って俺は大した心配をせずに扉を開ける。見た目の大きさとは違い、扉自体は軽く押すだけで開いた。中に入ると扉は自動的に閉まった。薄暗かった部屋が明るくなり、中央に3mくらいの大きなモンスターが鎮座しており、その周りにゴブリンが10体くらい居るのが見えた。こういう時は動き出す前に鑑定だな。
ゴブリンキング(亜人):HP100、MP50、攻撃力50、防御力30、素早さ40、魔力10、装備:金棒・攻撃力10、鉄の鎧・防御力10、スキル:棍棒術(5)、指揮、集中力アップ(小)、反応速度アップ(小)
俺はすぐに入ってきた扉を開き、外に出る。幸いにも、ボスを倒すまで出られないということは無かった様だ。これが戦闘前だったから可能だったのかどうかは分からないが、もう一度試す勇気はない。
「ふっざけんな! 無理ゲーだろ! 勇者はどうやってあいつを倒したんだよ!」
ステータスだけで見れば金棒に当たっただけで即死だろう。単純にゴブリンの10倍強い上、装備もいいし、スキルまで持ってやがった。現実には確定負けのイベントなんてやらかしても、普通に死ぬだけだ。都合よく助けが入るのなんて、本当に勇者くらいなものだろう。
「お兄ちゃん、今更だけど勇者はパーティーを組んでここに挑んでいると思うよ? 勇者ですらそれなのに、ソロ(一人)で挑むなんて無謀だよね!」
「……仲間募集の酒場でも探すか?」
「そんなもの無いよ! その辺の雑魚モンスターでも倒してレベル上げする?」
「時間があればそうしたいんだが、あいにくと時間もないんでな。そうだ、メィルは直接手を出す事は禁じられているんだよな?」
「たまたま、何かの拍子に攻撃になったとか、どうしても避けられなかったっていう不可抗力以外は、禁止ではないけど原則手を出さない事になっているよ? そもそも私がモンスターを倒すようじゃ試験にならないし。」
「つまり、メィルの方から攻撃しなければいいんだろ?」
「……? まあ、そうだけど。目をつぶってランダムに飛行して体当たりとかも、実質故意だからダメだよ?」
「いや、それは俺にも当たりそうだからやって欲しくないが。とりあえず、メィルは攻撃しなくていい。ただ……。」
俺はメィルに作戦の内容を伝える。メィルにしては珍しく、しばらく悩んだあとに答えを出した。
「しょうがないなぁ、お兄ちゃんは。今回だけだよ? 今後は私の事をあてにしちゃだめだからね!」
「ああ、分かっている。今回だけでいい、助かる。」
俺は別に呼吸も必要では無いが、気持ちを落ち着かせるために深呼吸すると、再びボス部屋の扉を開いた。ボス部屋は、挑戦者が居ない間は暗くなっているのか、再び明るくなった。ボスもまた中央に鎮座している。誰も来なかったらずっとこのままなのか?
しばらく待っていると、ボスが立ち上がった。それに伴って周りのゴブリンも動き出す。
「よく来たな勇者よ。ここを通すわけには行かぬ、我が金棒のサビとなれい!」
「いや、俺は勇者じゃ無いんだけど……。」
「さあ、手下どもよ、かかれ!」
俺のセリフを無視して、ゴブリンキングは手下のゴブリンに指示を出す。指揮のスキルがあるせいか、ここまで来るまでに戦ったゴブリンよりも動きや連携が良い気がする。左右に5匹ずつ別れると、同時に攻撃してきた。
「今更何匹来ようとも、ゴブリン程度じゃ相手にならないぞ。」
俺はやりやすい、利き腕側のゴブリンに向かう。剣術のレベルは1のままだが、ショートソードの扱いが大分慣れたから戦いやすくなっている。一匹を袈裟切りに切り裂き、走り抜ける。素早さは俺の方が数段勝っているので一匹ずつ相手にすれば余裕だ。
しかし、ゴブリンキングが言葉に出さずとも指示が出されているのか、俺を壁際に追い詰めるように連携してくる。1匹1匹は雑魚とはいえ、まだ9匹いるからな。今度は2匹同時に飛び掛かってきた。そして、棍棒を振り上げる。
「同程度の実力なら有効だったのだろうけど……よっと。」
俺は一匹を素早く手繰り寄せ、盾にする。ゴブリンの攻撃は、ゴブリンで防いだ。ゴブリン程度の攻撃では、ゴブリンですら1撃で死ぬことも無かったが、棍棒を食らったゴブリンはふらついている。そして、味方を攻撃してうろたえているゴブリンを斬り、ふらついているゴブリンにも止めを刺した。
「ええい、何をやっている! 仕方がない、我が直々に……あれ? ちょっと、え?」
ゴブリンキングの体が少し浮く。そして、慌てているゴブリンキングが指示を出さなくなったのか、目に見えてゴブリンたちの動きが悪くなったので、順番に切り裂いていく。
「何が起こっている!? おい、誰か背中に居るのか?」
ゴブリンキングは体のわりに手が短く、背中に手が届かない。足元に置いてあった金棒も拾えていない。全ての取り巻きゴブリンを排除した俺は、そのまま3mはありそうなゴブリンキングの首を狙って刺した。そこは鉄の鎧に守られておらず、隙だらけだったからだ。しかし、反応速度アップ(小)のおかげか、ゴブリンキングが首を少し動かしたせいで浅く切り裂く程度に終わった。
「ぐぞっ、誰だ、我を持ち上げているのは!」
HPが多く、防御力も高いゴブリンキングは、その程度の傷では致命傷になっていないようで、まだジタバタともがいている。俺はもう一度、今度は深く首を刺すと、ゴブリンキングの動きは弱くなり、動かなくなった。
「メィル、もういいぞ。助かった。」
「もう、このことは絶対に内緒だからね!」
ゴブリンキングを後ろから持ち上げていたメィルが手を離すと、ドサリとゴブリンキングは横たわり、消滅した。
経験値が溜まりました。レベルが5になりました。HPが10増えました。MPが5増えました。攻撃力が2増えました。素早さが1増えました。魔力が1増えました。
経験値が溜まりました。レベルが6になりました。HPが10増えました。MPが5増えました。防御力が2増えました。素早さが1増えました。魔力が1増えました。
さすがゴブリンキング。ゴブリン10体倒したのと合わせてレベルが一気に2もあがった。普通に戦うならレベル10は要りそうな相手だが、メィルに透明化してもらい、さらに後ろから持ち上げてもらったから簡単に倒せた。ゴブリン10体からは全くドロップ品が無かったが、ゴブリンキングが消滅した場所には宝箱が残されていた。
源零(分裂体):HP60、MP40、攻撃力18、防御力16、素早さ17、魔力14、装備:ショートソード・攻撃力4、ただの服・防御力0、ラックの腕輪(極小)、スキル:鑑定、空間魔法(5)、スキルの吸収、棍棒術(5)、剣術(1)、火魔法(2)、指揮、集中力アップ(小)、反応速度アップ(小)、持ち物:低級HPポーション、低級MPポーション
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