第3話 異世界ダンジョン-3
まだ入り口に近いからなのか、モンスターが全然居ないな。このダンジョンがどのくらいの広さなのかはまだ分からないが、あれから2体のゴブリンと、1体のコボルトにしか遭っていない。あと1体ほど何かと戦えばレベルが上がりそうなんだが。そう思っていたところで、新手のモンスターが見えた。ゴブリンよりも大きく、肌の色が緑では無くて茶色で、ゴブリンよりも大きな棍棒と、コボルトよりもいい皮の鎧を着ているようだ。よし、さっそく鑑定だ。
ホブゴブリン(亜人):HP30、MP20、攻撃力15、防御力10、素早さ10、魔7、装備:棍棒・攻撃力5、皮の鎧・防御力4、スキル:棍棒術(2)
俺より少しだけ弱い感じか? そう思って近づくと、ホブゴブリンの後ろから、さらに2匹のゴブリンが現れた。ただでさえステータスの差がそんなに無いのに、数でも不利になってしまった。
「メィル、一旦通路を戻るぞ。さっき見つけた少し狭い通路へ行く。」
「私は大丈夫だよ。天井付近まで飛べば攻撃なんて当たらないだろうし。あっ、スカートの中は覗いちゃだめだからね!」
「の、覗かないわ! 心配なら裾を押さえて後ろからついてこい!」
俺は少し狭い通路へ走り込む。ホブゴブリンも、ゴブリンも追ってくる。狭い通路と言っても、幅2メートルくらいはあるが、3匹同時に襲えるほどの広さは無い。ここなら、順番に相手をできるだろう。そう思っていたら、ホブゴブリンを踏み台にして、ゴブリンが飛び掛かってきた。
「なっ!」
俺はショートソードで棍棒を受けたが、ジャンプによる全体重をかけた一撃は、ステータス以上の威力があるようだ。押し負ける前に、ショートソードを傾けて棍棒を反らす。しかし、そこへホブゴブリンの棍棒が振り下ろされてきた。それをショートソードの腹で受けると、ミシリと嫌な音がした。
「がっ、ゴブリンの癖に連携しやがって!」
俺は目の前のゴブリンを蹴り飛ばし、距離を離す。もう一匹のゴブリンが見当たらないが、後ろに回り込んでいるという事は無いだろう。そう思ってると、案の定もう一匹のゴブリンもさっきと同様にホブゴブリンの背中を踏み台にして飛び込んでくる。
「同じ手を食らうかよ!」
今度は受けるなんてことをせずに、そのまま剣を突き出す。すると、勢いのままゴブリンの腹を剣が貫通したが、そこで剣が折れてしまった。
「やべぇ、武器が無くなった!」
ゴブリンの棍棒は手放したみたいだが、ホブゴブリンの足元に落ちている。取りに行ったら殴られるだけだろう。とりあえず、刃の折れてしまった剣を構える。さっきの攻撃が致命傷になっていたようで、腹を刺されたゴブリンは消滅した。
経験値が溜まりました。レベルが3になりました。MPが5増えました。攻撃力が2増えました。防御力が1増えました。素早さが1増えました。魔力が1増えました。空間魔法がレベル5になりました。
レベルアップの恩恵により、HPは全快したようだ。ゴブリンの消えた後には、折れた剣の刃の部分と、ドロップしたらしいポーションが落ちている。俺は少し離れ、空間魔法Lv5を鑑定してみると、自分の所有物だけみたいだが、一定の範囲にあるアイテムをアイテムボックスへ収納できるようになったようだ。ドロップ品も俺の所有物扱いの様で、さっそく折れた刃と、ポーションをアイテムボックスへ入れる。しかし、アイテムボックスのリストには、ポーションだと思っていた物は修復液と書いてあったので、取り出して鑑定してみる。
修復液 装備にかけると、修復可能なものは修理された状態になる。一定以上破損した物は治らない。
修復可能かどうかは分からないが、ダメもとでショートソードの折れた刃と柄を合わせ、そこに修復液をかける。綺麗に折れていたからか、きちんと刃がつながった様だ。見た目上は直っているが、以前より折れやすくなったとか、実は内部耐久度は1です、とか無ければいいが。
「これでやってみるか。」
さっそくゴブリンに斬りかかる。残念ながら、攻撃自体はゴブリンの持っていた棍棒で防がれてしまったが、ショートソード自体はきっちりとくっついており、表面上は再びヒビが入っていないことは確認できた。幸い、ホブゴブリンは足元のゴブリンが邪魔な様で、攻撃に参加できないでいる。やはり、ここで戦ったのは正解だったようだ。
俺は横なぎにショートソードを振ると、ゴブリンは棍棒を盾にして防いだが、その威力までは殺せなかったようで転倒する。そこをきっちりと胸にショートソードを刺して止めを刺す。ゴブリンが消える前にホブゴブリンにも斬りかかる。防ぎにくいスネへの攻撃だ。ホブゴブリンは悪手であろう、足を上げて回避した。俺は勢いのままホブゴブリンの顔に向かって剣を突き出すと、それをのけぞるように回避しようとしたため、あっさりと後ろに転んだ。
そんな大きな隙を逃す訳も無く、俺は腹にショートソードを突き刺した。ホブゴブリンは体をねじって逃げようとしたため、傷口が広がる。見かけ通り、さすがにタフな様で血をこぼしながらも戦意は失っていないようだ。通路が狭く、避けられない事をいいことに、その巨体で体当たりをしてきた。俺はそれに合わせてショートソードを突き出したが、横っ腹をかすめただけで体当たりを受けてしまった。
「お兄ちゃん! 後ろ!」
地面に倒れたままメィルの声を受けて後ろを向くと、そこは崖の様になっていた。最初に来た時は狭い通路だから後で確認しよう、くらいに思っていたから奥までは見ていなかったのだ。俺はジリジリと距離を詰めるホブゴブリンに押されるように崖まで後退させられる。そして、ホブゴブリンが棍棒を高々と振り上げた。
「くらえ! 火魔法!」
俺は手をホブゴブリンの顔に向ける。ホブゴブリンは驚いて、空いていた左手で顔をかばうように隠した。そして、俺の手から1cmの火が出てすぐに消える。
「今だ!」
俺は顔を隠したせいで俺の事が見えていないホブゴブリンの足の間を通って後ろを取る。攻撃がこないと思って手をどかしたホブゴブリンは、目の前からいなくなった俺を探しているようだが、残念だったな! 俺はホブゴブリンの背中を刺すと、ホブゴブリンはそのまま前のめりになり、崖に落ちていった。
経験値が溜まりました。レベルが4になりました。HPが10増えました。MPが5増えました。攻撃力が1増えました。防御力が2増えました。素早さが1増えました。棍棒術がLv3になりました。火魔法がLv2になりました。
棍棒も持っていないのに棍棒術のレベルだけどんどん上がっていくな……。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ああ、レベルが上がったおかげでHPも回復した。残念ながら、ホブゴブリンのドロップアイテムは拾え無さそうだな。」
俺は崖下を覗くが、どれくらいの深さがあるのか分からない。ホブゴブリンが落ちた時も、地面にぶつかったような音はしなかったし。
「アイテムだけなら私が拾ってこようか? 千里眼で場所は分かるし、飛行で行けばすぐに取ってこれるよ!」
「いいのか? 取ってきてくれるなら助かるが、気を付けていけよ。」
「大丈夫だよ!」
メィルはそう言って崖の下へ向かった。俺はゴブリンのドロップ品である低級HPポーションをアイテムボックスへ入れる。すると、早々にメィルが戻ってきた。その手には、金属の様な物を持っている。
「お兄ちゃん、はいこれ。でも、ぶかぶかだよね?」
メィルが拾ってきたのは腕輪だった。首輪じゃないのか? と言うほどにはでかい。いや、本当に首輪だったりして……と言う暇があったら鑑定すればいいか。
ラックの腕輪 運が極小あがる。サイズは自動的に装備者に合わせてサイズ変更される。
「運が上がるらしいが、運なんて要素いままであったか?」
更に言うなら、極小という単位も初めてだ。微小で確か1%の補正だったはずだから、それよりも低いという事は確実だな。まあ、無いよりはマシだと思い、腕に通す。すると、説明通り俺の腕にぴったりになるようにサイズ調整された。
「私の知っているゲームとかなら、運はドロップ確率やクリティカル確率に関係してくるよ! 回避率があがったり、エンカウント率が下がったりとかもあるかな?」
「まあ、どうせ効果は極小だし、気にするような事でも無いだろうな。」
そういえば、この世界でもクリティカルはあるのか? まあ、そもそもダメージ表記が無くなった以上、確認のしようもないが。戦闘中に視界が埋まってしまう鑑定を使えるほど、慣れていないしな。
源零(分裂体):HP40、MP30、攻撃力16、防御力14、素早さ15、魔力12、装備:ショートソード・攻撃力4、ただの服・防御力0、ラックの腕輪(極小)、スキル:鑑定、空間魔法(5)、スキルの吸収、棍棒術(3)、剣術(1)、火魔法(2)、持ち物:低級HPポーション
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