第18話 文化祭(4)
安藤は何かを説明するときだけ饒舌になる。
我々のクラスへと戻る道中、安藤に先ほどの私を解説された。
お化け屋敷を出た後、ドキドキするのは吊橋効果だと主張したかった私は、「吊橋効果」が出てこずに、そうこうしているうちに吊橋効果などなくても安藤にドキドキしていると主張してしまったのだ。
つまりドキドキが吊橋効果である主張していたのに、いつの間にかドキドキは吊橋効果ではないと主張していたのだ。
さらに一度ならずとも二度までも、安藤に告白してしまったことになる。
おのれ、安藤。
教室に戻ると、うさみんにからかわれた。
「稲葉さん、赤い糸で結ばれているね。」
すっかり忘れていた。安藤と赤い糸で結ばれたままだった。どうすればいい?
赤い糸を切るわけにはいかない。しかし繋がったままという訳にもいくまい。
「安藤、糸を回収する。私によこせ。」
「分かった。」
私の腕にはすでに糸がある程度巻き付いている。さらに巻いてすべての糸を腕に巻き付けた。家に帰ったら大切に保管せねば。
神代がいなくて幸いだった。からかう奴が多いと、たまったものではない。彼女と学校をめぐっているらしい。
そういえば、安藤は告白すると言っていた。私の事が好きという事でいいのだろうか?
今一つ態度からは推し量れない。告白するなら早くしてほしい。安藤が私を好きだと仮定して、お互いに好きだという事が分かっているこの状態は一体何なのだろう?
これが友達以上恋人未満という奴なのだろうか?
何にせよ早く告白してもらわないと私の精神がもたない。これ以上おかしな行動を取るわけにはいかない。
「安藤、告白するならできるだけ早くしてくれ、待っているこっちの身にもなってくれ。」
「分かった。」
からかわれるかと思ったが、うさみんは黙っていた。少し目が潤んでいる。うさみん、いい奴だな。あんドーナツのことは水に流してやろう。
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