10.ネビロス

「この城、広い割には連続してあの7人と会うとかどういうこと?」


ルシファーと離れると秋葉がもっともな事を言った。


「そうだね。私たちはともかくあの7人はもっと行動範囲が広くてもいいはずだもんね」


忍達はまだここへ来て昨日の今日なので、それほど足を伸ばせる場所はない。それ以前に、秋葉や司はそもそも探検するタイプではないので、自分からはそれほど遠くへは行ったりしないだろう。


「アスモにサタン、それからマモンとルシファーか」

「って言ってもあと半分はまだ話もしてなかったな」


一気に7人も紹介されてそのうちの半分話せば十分多いと感じる不思議。


「あとは暴食、怠惰、嫉妬の3人か」


司が少し面倒そうだというような表情で小さなため息をついた。

その2文字熟語で言われるとなんかすごい厄介な感じがするが、実際、厄介なんだろう。


「それぞれの特徴がよく出てることはわかったけど、なんかその暴食の人に食われないように気をつけてとか言ってなかったっけ」

「名前から察するに物理的に食われる」


そんなことを3人で話していると後ろから急に声をかけられた。


「お三方、そろそろ夕食の支度が整います。食堂の方へどうぞ」

「!」


振り返るとそこにいたのは骸骨だった。


「すみません。私、魔界に来て今一番怖いと思ってるんですけど」

「オレもだよ、どうしたらいいの。ていうか、誰」


忍と秋葉が思わずひそひそと話してしまう。


「顔色が悪いぞ、二人とも」


司は割と平気な顔をしている。口調から察するにきちんとしたこの城の人なのだろうけれど、はっきり言って悪魔というよりホラーに近い姿だ。怖い。


「すみません。……ひょっとしてネビロスさんですか?」


忍は珍しく顔を少し青ざめさせながらそう聞いた。


「おや、私のことをご存知で?」

「ご存知ではないのですが、アスタロトさんと一緒に人間界に来ていたという記述をどこかで」

「そうですね。では改めて初めまして。私は閣下の配下の悪魔を束ねますネビロスと申します。どうぞお見知りおきを」

そう言って貴族のような服装をした骸骨はふかぶかと腰を折った。


「さすがアスタロトさん直属だけあって動作がとても丁寧な感じがする」

「でも、会う度にオレびくってなりそう」


そんなことを言いながら、3人は先を行くネビロスに案内され食堂に向かう。

というか悪魔と言っても人型の姿を見慣れているから、逆にあそこまで極端なヒトを見るとびっくりする。ただでさえホラー系は実は苦手だ。夜中に暗闇で急に出くわしたら悲鳴を上げていいレベルだ。


それは女子だからではなく秋葉にしても同じことだと思う。

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