42.ヒエラルキー

そんなわけで。


「ルシファーが管理担当になったから、この際、君たちには序列を決めてもらおうと思う」

「序列!?」


ざわり。七人……ではなく、すでにポジション確定のルシファーを除いた六人からどよめきが起こった。


「今はまだ並列に近い形でここで教育受けてもらってるけど、それぞれ行く先には必ずそれらは存在する。いわばシミュレーション的なものとして」

「ちょっと待って。ただでさえルシファーに管理されるようになったら厳しくなったのに、この上で序列とか」

「厳しいのかい?」


「オレなんてスケジュールチェックまでされる! 夜遊びできない!」

「じゃあ、マモンは向う三か月、門限を一時間繰り上げね」


自ら「夜遊びしている」ことを自白してしまったマモンに何事もなかったかのように処置を下しているアスタロト。えぇぇぇーー!と悲しみの声が聞こえる。


「大体、閣下に思いっきり喧嘩売ったやつがまとめて管理とか。おかしくない!?」

「じゃあ管理者になってみたい子は、ボクに喧嘩売ったらいいよ。結果によっては権限移行も考えなくもない」

「……!」


ブンブンブン! と無言で首を振る他の七罪たち。なんだかんだ言って、アスタロトに逆らえたのはルシファーだけだ。

逆を言うと、怖いもの知らずなのがルシファーだけだった、ともいえる。……微妙。


「フッ」


それを見て、ご満悦な「傲慢」ルシファー。ちょっと優越感に浸っているようだが忍の提案の肝はそこではない。確かに実力が高いのは認めるが、そこではない。

しかし、あれ以来、彼は逆に余裕を漂わせてきているように思う。


「しかし、序列と言っても……どうやって決めるんですか」

「それも君たちが考えて。死闘を繰り広げるも良し、話し合いで決めるもよし」

「……話し合いで決まると思えねー」

「いるよね、こいつ絶対、バカだろ。ってやつ。そいつが僕より上だったらやっぱりなんかおかしい」


全員集合がかかったので、全員いるわけだが相変わらず賑やかだ。方法も任せるのは、良いやり方だとは思うが何を協力していいのかわからないのが困る忍たち。

ちなみに最後の発言はレヴィアタンだが、明らかにその前に発言をしたマモンのことを言っている気配がする。


「そんなの話し合うまでもないじゃない」

「?」

「ぼくが世界で一番、でしょ?」


……。


そういう意味じゃないのでナルシストは放っておく。


「ぼくは一番下でいいよ」

「ベール!? どういうこと!?」

「めんどくさいから」


うん、さすが「怠惰」のベルフェゴールだ。互いに由来がありそうな暴食ベルゼブブも食えればいいとか訳の分からないことを言っている。


「どういう決め方だよ」

「ふつうは魔界だし、純粋に力と知力とかじゃないの?」

「! そうだ。それなら誰も文句言えない」

「えー めんどくさい」

「シノブの助言には賛成するが、前回のようなことがあっても困る」


前回=ルシファー大暴れ事件。片付けるのもすごく大変だったらしい。

さすがにその件になると黙している当の本人。

ルシファーを除いて、ということなのでサタンが代わりに仕切ってくれている。


「わかった。本気出すのも嫌だからそれをミニマムにした形のゲームで番付を決めればいいんだ」

「……」


秋葉から流れてくる、微妙な空気。たぶん「この悪魔たち、バカなの?」みたいな感じなのだろうが、秋葉自身はそんなストレートに悪い言葉をあまり使わないので、もう少し言葉にすると婉曲だろう。いずれ、馬鹿には違いない。


「アスタロトさん……」

「方法も好きに、と言ったのはボクだしボクは静観してる。もしも危ないことがあったら三人ともボクのところに避難しておいで」


アスタロトは、有事の際の保護者なのか、観察員なのか。どっちもであろう。


「うっし、遊びならオレは得意だからな。提案するぜ」


マモンが言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る