SIDE:????
小さい頃から、兄さんに憧れていた。カッコよくて、寡黙で、不器用だけど優しい僕の理想の兄さんだった。兄さんが僕を戦いから遠ざけようとして、『女の子らしさ』を強要されてきたのだって、兄さんが僕の事を大事に思っているからだって信じていたーー今思うと、信用していた僕が馬鹿だったんだけど。
ーーカッコ良かった兄さんを取り戻す為に、僕が理想の兄さんに成る事にした。
まず、兄さんは僕との約束を破って家を出て旅人になったので、僕も家を出て旅人として生きることにした。男らしくてカッコいい兄さんに近づく為に胸を潰して男として振る舞った。兄さん、兄さん、兄さん兄さん兄さん兄さんーーずっと、『理想の兄』として振る舞ってきたし、僕が理想に近付けばきっと兄さんだって僕のことを分かってくれる筈なんだ。
「この旅が終わったら、俺は死ぬ」
久しぶりに聞いた兄さんの声で、知らない言葉が聞こえる。死ぬ? 兄さんが?
「どういうこと?」
兄さんに会ったら、色々と言いたいことがいっぱいあった。強くなったと褒められて、兄さんの旅に今度こそ着いていくんだ。なんて事は全て幻想でしかなかった。兄さんが、死ぬ? 誰よりも強くてカッコいい兄さんが死ぬなんて、考えた事もなかった。
「ウワッ……ソワード?! ひっさしぶりじゃねーか! 元気だったか?」
「兄さん、どういう事?」
驚いた! とワザとらしくリアクションを取り、全てを有耶無耶にしようとする姿勢が気に食わなくて、肩に添えた手に力を込める。いっそこのまま肩を外せば吐いてくれるのか?
「……ねえ、遊ぶのは良いけど壊すのは辞めてくれないかしら。ソイツが私を運べないじゃない」
ツンツン、と軽く肘を突いてくる指に視線を向けると、とんでもない美少女が麗しい笑みを浮かべていた。その笑顔に見惚れる隙も無く、思っていたより周囲が騒がしい事に気が付いた。その中には戸惑った様子であわあわしているリルチェちゃんという可愛らしい少女と、同じく仲間である仮面の青年が様子を伺っている。
「……ごめん。騒がせちゃったね。僕、ホテル取ってるから、そっち行こうか」
「すまんが、俺とエネミーにも待たせてる奴がいるんでね。また今度な」
そのまま兄さんはなんでも無かったかのように手を振り、紫色の少女ーーエネミーちゃんの手を取って、去って行った。
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