side:少年
アリスに手を引かれるままに村を出て、旅に出ている実感も無いままリリエレという村に着いた。此処は主に宿屋が多く、名産品というのも無かった気がする。あるとすれば……
「噂に聞く通り、女の子ばかりね。大きい事件が起こるまでは男子禁制だったっていうし……仕方ないのかも」
大きい事件、といえばアレだ。確か数年前に女装した男二人組がリリエレで暴れた影響で閉鎖的空間が壊れてしまったらしい とは聞いた気がする。全く迷惑な……と言いたいところだが、男だからと全てを避けて差別していたというこの村の風習はとっても良くないことだと思うので、どちらが悪いかと言われれば閉鎖的過ぎる村の方が悪いと思う。
「まあ、とにかくまずは宿を取りましょう! ん~、あそことか、手頃そうだし良いかもしれないわね」
アリスが選んだ宿は、リーズナブルながらもご飯が無料で付いてくる上に防犯設備も完備しているという、お得すぎて逆に怪しんでしまうレベルの宿だった。アリスが妙に手馴れているのも疑問に思ったが、俺は紳士なので、アリスの事は詮索しないでおく事にする。
「いらっしゃいませ~!! お泊りっすか? 食事っすか? それとも、戦闘ですか?」
「うーん、お泊りが良いわ。それにしても、店内の装飾とか色々凝ってるわね……結構、儲かってたり?」
「お! お姉さんお目が高ーい! そうなんです。最近、『青髪の貴公子』にうちの姉ちゃんが助けられてもうホの字、どうしても付いて行きたいって初めて駄々をこねましてね……っと、無駄話してる場合じゃねーわ! お部屋に案内しまぁーす!」
メルチェ、と名乗ったメイド服を元気に着こなす桃色髪を下で二つに結わい、赤く輝く瞳が印象的な少女は、元気よく二階の宿泊スペースに案内し、鍵を手渡すとそのまま降りて行ってしまった。アリスとは別室で、昼飯の時間までは自由行動という事になった。
……とりあえず、『勇者』の情報を調べよう。俺は勇者見習いなんかで終わる男じゃ、ない。
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