第4話:ビーチ天国 クウィーンズランド

11月3日 雨・晴れ 560km

→Mooball→Kingscliff→Tweedheads→Surfers→Brisbane→Noosaheads→Childers→Bunaberg(BP)

 ニューサウスウェールズ州最北のビーチリゾート地ツウィーズ・ヘッズを過ぎると、クウィーンズランド州に突入。ここまでくるとゴールドコーストはもう目と鼻の先だった。一日中走ってもオーストラリア全土地図でみたら、その移動距離はほんの小指の先ほどしかない。だがここまで北上してくると、さすがに日差しも肌に突き刺す感じがする。やっと旅を始めたころの緊張感も取れ、毎日の寝床を探す定住しない生活にもなじんできた。

 海岸線を走っていると、終わりが霞んで見えないほどの30キロにおよぶ黄金のロングビーチが見えてきた。はるか彼方にうっすらと高層マンション郡が立ち並ぶ姿があった。ゴールドコーストだ、直感でわかる。これと比べれば日本のビーチは幼稚園の砂場同然に映る。その市街地はサーファーズパラダイスと呼ばれ、今まで通ってきたリゾート地とはけた違いにバカンスの香りで満たされていた。その華やいだ開放的な雰囲気は、これぞ太陽が溢れる天国、心なしか日焼け止めの香りの混じった潮風が心地よい。早速、砂浜に降りてみてビックリ、なっ、なっ、なんと「トップレス・ホルスタイン」さんが悩殺ビームを俺に浴びせかけてくる。思わず、早くも宛てのない旅もここで終わらせようかなとマジ考えてしまった。ほんとに本気でこの地に沈没(居ついて)してしまおうかと心揺さぶるられるので、こりゃダメだと思い、さっさとサーファーズは空気を吸っただけで旅を先に進めることにした。

 すっかりビーチの美しさに魅了されてしまった俺は、少し内陸の州都ブリスベンに行ったものの、市の中心シティホールの時計台前で軽く休憩してすぐに、都会には用はないとばかりにそそくさと、マイ・ビーチを散策に向かうことにした。今夜はビーチで野宿だ決め込んで、これといった目的地もなかったので適当にというかでたらめにというかとにかくバイクを市街地から潮風の吹く方向に走らせた。最初に海に出たのが、これまた完全に常夏を思わせるカランドラ、そこから海岸沿いを北上してマローキドール・クーラム・ヌーサヘッドへと続く。途中で知ったのだが、このあたりを『サンシャイン・コースト』というらしい。粋な名前じゃないか。道中見かけたビーチの数は数え切れないほど。ほんとにマイプライベートビーチを探す感覚で、バイクで走っていてワクワクする。同じに海に面したビーチなのにどれも違った雰囲気を持っていて、『ビーチ』という名の軽快なテンポを持つ見ごたえタップリのドキュメンター映画を一本見た気にさせる。ああツーリングしているなあと感じたは、このサンシャインコーストがそれまでの旅の中で一番だった。海水浴の好きな俺は、とにもかくにも海に飛び込むところだが、泳ぐよりもバイクで走っている快楽にハマるなんて。ザックリと訪れた諸々のビーチの印象はと言えば、ゴールドコースは若者向き、そこから北上するほど派手さは消えて家族向きになっていく。俺的には、和やかな雰囲気の中に少し洒落っ気を感じるヌーサが一番だった。いくつかビーチで嬉しがって砂浜を素足で走り、転げまわったためか、その夜、へその穴まで砂まみれになっていた。

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