word54 「もしも 宇宙戦争起こっていたら」③

 あの日もしも僕がいなかったり、黒いパソコンが存在しなければ、地球は滅んでいたはずなのだ。それって一体どんな風に……どのくらいの時間で……一瞬なのかじわじわなのか……。


 再生した人気映画のPVと、自分の頭の中の想像が重なる。実際の世界にもこんな風に巨大なUFOと大量の宇宙人が攻めてくる未来があったのだろうか。


 黒いパソコンなら映像化できるだろうか。もしできるとしたら、それはめちゃくちゃ気になる――。


 僕は今まで考えていた検索のイメージを全て捨て去って、新しく思いついた方へ乗り換えた。


 まずはさっさと昼飯を食べることにした。もし見れたとしても、その映像を見ながらだとたぶんご飯がまずくなるので、検索してみる前にカップ麺の中へお湯を注いだ。


 蓋の上で温めた液体スープを入れて食べ始める。そうしながら僕はこれから見るつもりの動画がどのくらいのグロさをしているか考えた。やっぱり人の臓器が飛び出したりする様子も見せられるのだろうか。


 他にも人が頭から食べられたり、宇宙人に人間の女性が××されるなんて胸糞悪い展開もあるかもしれない。


 僕は激しいグロが得意ではなかった。青年誌とかで必要のないグロ描写を見たりするとナンセンスだと思う。ああいうのが好きな人がいるというのも分かるけど、グロく衝撃的にすれば良いってものではないと思うのだ。見ると吐き気を催しそうで、すぐ本を閉じてしまう。


 気持ちは分かるのだ。僕も捕食動画とか見るし、今だって程良いグロは求めているし、でも激しいのだと嫌だな。


 カップ麺のスープまで飲み干すと、僕はさっそく検索に取り掛かった。


「もしも 宇宙戦争起こっていたら」


 忘れずに黒いマウスを右クリックしてから動画検索にして、Enterキーを押す。


 ゆっくりと視聴するためにベッドの中でイヤホンを付けていた。親が何か用事があって入ってくるのだけが怖いけど、黒いパソコンを露出させて視聴する。


 グルグルが表示され、消えて、どこかの都会にある1つのビルが大きく画面に表示された――。


 映画ではないので、荒波に打たれる岩の映像をバックに制作会社が映ることもなく、始まった――。


 続けて映像は街全体を映すカメラに切り替わる。それを見ただけではどこなのか分からない。雰囲気は日本のどこかっぽい、そこそこの発展度の街だ。


 さらに映像は、その街をいくつかの視点で捉えたものを見せる――。そしてまた、最初のビルの所へ戻ってきたときに視点切り替えが止まった――。


「2023/2/23 14:33 宇宙人襲来」


 そんなテロップも同時に表示された。風の音だけが聞こえていた昼下がり。そこへサイレンのような低い音と共に、謎の機械が落ちてきた。

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