自称女神
広間に入って来た俺を見て自称女神は悪態をついている。まあ、自分が楽しむための物を壊されてきたのだから、当たり前の反応ではあるがな。
「お前がここに来たがっていた理由を私は知らない。だが、私の楽しみを邪魔するゴミは排除せねばならん」
自称女神は荘厳な玉座に座りながら俺を睨んでくる。常人なら立っていられない程の圧を身に受けるが、この程度なら気にするほどではないな。やはり自称女神でしかないのか。
「だから何だ?」
「私自らお前を滅ぼしてやるんだ。光栄に思いなさい」
自称女神はそう言って何もない空間から長杖を取り出し、俺の方へ先端を向けて来た。それに合わせて俺も腰に据えていた剣を抜く。
「ふん! そんな変哲もない剣で何が出来るというのだ!」
自称女神から光の球体が放たれる。
素早い攻撃ではあるが見切れない程ではないな。
「見える所だけ、側しか見ようとしないお前にはわからないだろう」
眼前に迫って来ていた光の球体を俺は剣を振るうことで2つに分断して回避する。あっさり切れた所からしても、こいつの強さはそこまでではないだろう。まあ、強くないからと言って容易に倒せるとは限らないのだがな。
「どういうことだ? 何故そのような剣で私の魔法を斬ることが出来る? いや、偶然だろう」
そう言って自称女神の周囲から10程の光の球体が出現し、俺に向かって放たれた。しかし、その光の球体は殆ど同じタイミングで着弾するように放たれていたため、先ほどよりも少し力を入れて剣を振るうことでそれらは2つに分裂し、俺の横を通り過ぎて行った。
「何……だと? 何故そのような事が出来る? どうしてそのような剣で私の魔法が斬れるのだ!?」
「お前が弱いからだろう?」
「そんな訳はない! 私はこの世界の女神だ! 弱いなどあり得ぬ!」
自分が放った魔法が何の変哲もない剣で斬られていることが理解できない、という様子で自称女神は声を荒げている。
「そろそろこちら攻撃しても良いよな?」
「い……や、は。何故私を攻撃しようとしているのだ?!」
いや、先に攻撃してきたのはお前だろう。まあ、俺は最初からこいつを殺すためにここに来たのだがな。
「元よりそのつもりで来た。それにお前が先に攻撃してきたのだから、攻撃されてもおかしくは無いだろう?」
「私は女神だぞ?! それに私を害するとどうなるかわかっているのか!?」
自称女神が攻撃されないように喋っているが聞く必要はない。どのような事情があろうが、こいつを排除しなければならないのだから、こいつの言葉を聞いたところで無駄なだけだ。
「待て! 私がこの世界に転移者や転生者を呼んでいる存在だとわかっているのか!? 私が居なくなったらこの世界がどうなるか、その者たちが居なくなればこの世界は立ち行かなくなるぞ!?」
「お前が転移者を呼んでいるのは知っている。そもそもそれがあるから俺がここに来たのだからな」
俺の言葉を聞いて自称女神は驚き理解できないといった表情をした。
おそらく、俺の事は神を害して名声を上げようとしているただの冒険者だと思っていたのだろう。さすがに、この程度の自称神であっても、そんな個人的な理由で神殺しをしようだなんて馬鹿なことは考えないし、実行することもない。
「それに転生者などはちゃんとした神が選別してこの世界に呼んでいる。今お前が居なくなったところで何の問題もない」
「は?」
俺の言ったことが理解できないのか、自称女神は口を半開きにした状態で固まっている。まさかこいつは自分しか人の転移を行えないとでも思っていたのか? 他に神が居るこの世界で、そんなことある訳ないだろうに。
まあ、こいつの反応はどうでもいいか。さっさと消滅させて別の任務へ移行しよう。そう判断して俺は自称女神へ近付いて行く。
「止めろ、来るな! 来るな!!」
俺が近付いて行くと自称女神が騒ぎ出したが、脚を止めるつもりはない。徐々に迫っていく俺に向かって自称女神がいくつも光の球体を放ってくるが、それは全て斬り裂いていく。
「そもそも! たかが冒険者だろうお前に、神である私を殺せるわけがないだろう!?」
「やってみなければわからないだろう?」
確かに俺は、何処にでもいる冒険者だが、だからと言って神を殺せないと断言できる訳でもない。やってみなければわからないだろう。いや、既に結果は分かっているのだったな。
「来るな! くそっ! 何で私がこんな目に遭わなければならない? こうなったら誰でもいい! 今ここに呼べる者を……」
自称女神はそう言って手元を操作する。その間も攻撃は止まっていない。
「居たぁ!! 来なさい! 召喚!」
自称女神がそう叫ぶと、自称女神の側に光が集まり徐々に人の姿を形取っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます