違法奴隷・後 奴隷ハーレム転生者
町を出てしばらく馬車を走らせていると、先に馬車が一台止まっており、道を塞いでいた。
「何かあったのでしょうか?」
「……確認してきます。周囲の警戒は怠らないでください」
「なるほど。了解しました」
なにか、いやな予感がする。どう見ても前の馬車から人の気配がない。もしかしたら既に盗賊か何かに襲撃された後かもしれない。もしくは、後続を足止めするために止めてあるのかもしれないが。
止まっていた馬車を確認しようと近づいた瞬間に俺目掛けて弓矢が飛んできた。警戒していたから難なく躱すことは出来たが、これは護衛に慣れていない冒険者だと躱すのは難しいだろう。
俺は直ぐに弓矢が飛んできた方を確認した。するとそこにはどこかで見たことがあるような少女が道の脇にある茂みの中で弓を構えて立っているのが確認できた。
「はっはー。俺から奴隷を横取りした奴らはここで俺が皆殺しにしてやるぜー!」
それと同時に昨日、会場に居た冒険者のような男が表れた。ああ、今俺に弓矢を射った少女はあの時の奴隷だな。見たことはあるけど思い出せないくらいの印象も一致している。
まあ、この男の言葉からして昨日奴隷が買えなかったことへの当てつけか。馬車の中に誰も居ないようだし、ここで待ち伏せをしてまで俺たち、と言うか商人を殺したかったようだ。
「お前らを殺せば昨日の奴隷も俺の物になる! うひょー、完璧な作戦じゃん! 俺って天才!」
失敗した時のことを考えていない段階で、天才ではなくただの馬鹿だ。しかも結果的にそうなっているだけで、別にこの状況をあいつが作り出したわけではないだろう。少なくとも昨日商人が奴隷を買ったのはお前の差し金ではないからな。
「これで奴隷ハーレムがさらに完璧になる! 転生したからにはハーレム作らねぇとな! いやぁ、奴隷が居る世界に転生できたのは僥倖だったな」
また転生者か。何か最近出て来る転生者は問題があるやつばかりだな。昔の文献では魔王を倒したり、厄災を鎮めたとかいろいろこの世界のためになるようなことをしているのだが、たまたま俺が会う転生者がこんな奴らばかりってだけなのか?
「おら! お前ら弓で牽制しろ! 俺は先に護衛を倒す!」
うーむ。奴隷たちに関しては無理やらされている感じだな。おそらく契約魔術の影響だろう。しかし、戦いに駆り出すのであればもう少し真面な服を与えてやればいいのに。殆ど下着じゃないか、これ? 下手に攻撃したら怪我じゃすまないのだが、まさかそれが目的か?
「俺はつえぇぞ? この辺じゃ負けなしだからな! 逃げるなら今の内にしておけよ? その方が俺の手間も減るしなぁ?」
「護衛依頼中だからな、それは無い」
「そうかよ!」
そう言うと同時に男が俺目掛けて大剣を振り下ろしてくる。確かにこの男が言うように弱くはない。少なくともここ最近あった転生者の中では一番強いだろう。
もしかしなら、あの会場内で騒いでいるにも拘らず、誰も止めに入らなかったのはこれが理由か? 少なくともそこらへんに居る冒険者ではかなわないくらいではあるからな。
「おらおら! 避けてんじゃねぇよ!」
「態と当たりに行く馬鹿は居ないだろう?」
「はっ! さっさと当たれや!」
さて、今いる国はまだ奴隷を合法で扱える治安の悪い国だ。そしてその国での犯罪者の扱いは他の国と違ってかなりいい加減だ。
何時も活動している国ではいくら犯罪を重ねてもその場で殺すことは出来ない。しかし、この国の場合は、犯罪者であればその場で殺しても死体をギルドなり何なりに届ければ問題はない。要はこの場でこいつを切り殺しても問題ないと言うことだ。
このやり口からして初犯ではないだろうし、確実に別の罪も重ねているだろう。
「おら、来ねぇのかよ?」
「はぁ、お前はこの国で犯罪者がどんなふうに扱われているかを知っているか?」
俺を挑発しながら男は大剣を振って来るが、それを俺は長剣で受け流しながら問いかける。
「知るかよ!」
「この国での犯罪者の命は軽い。それもこの場で俺がお前を殺しても罪にならない程度にはな」
「はぁ? だから何だよ。俺はつえぇ! てめぇ何かに負けるわけねぇだろうが!」
俺の言葉を挑発と受け取ったのか男はより力ずよく大剣を振り下ろした。それは当たれば確かに必殺の攻撃だろう。しかし、隙が大きすぎる。俺はその隙を見定め、男に向かって剣を突き出した。
「えべっぶぉ!?」
突き出された剣は男の喉を貫き、男を死に追いやった。
そうして、男は始末したが、こいつに従っていた奴隷たちはどうするか。おそらく男が死んだことで奴隷契約は切れているだろうが、奴隷から解放されたわけではない。
商人と話し合った結果、この奴隷たちも昨日買った奴隷と同じように商人が連れて行くことになった。
男の亡骸は、進路上にある一番近くの町にあるギルドに持ち込んだ。
そこで調べてもらったところ、かなりの数の罪が浮かび上がり、懸賞金も付いていたことで、俺はその懸賞金を得ることになった。
しかし、得たところで正直使い道もないため、男に従っていた奴隷たちへ均等になるように渡した。残念ながらそれだけでは奴隷から解放されるほどではなかったが、凄く感謝された。
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