第53話 町中大乱闘その二・広場壊滅

 毒溜広場へ集まった鬼反らを、不意打ちするニャン吉たち。さあ、町中で大暴れが始まる。


 目にも留まらぬ速さで天馬が仕掛ける。方天画戟を出すと刃を鬼反の頭上へ振り下ろす。

「覚悟!」

「舐めるな!」

 方天画戟へ向かって魔法の卵を投げつける鬼反。卵は爆発し、方天画戟は消し炭になった。


 再び天馬は方天画戟を出すと鬼反を突いた。また同様に卵を投げつける消し炭になる。


 鬼反に加勢しようとモモが口に霧をためだした。

「させるかにゃ!」

 地面を這うように姿勢を低くして接近し、ニャン吉がモモの顎を蹴り上げて霧の万象を暴発させた。口や鼻から霧が立ち上る黒猫。

「ゴホッゴホッ! てめえ、前より強くなっているな」

「番犬に正式に就任したからにゃ」

 互いに番犬化する。白獅子と黒獅子が再び対峙する。


 策幽が三味線を弾こうとすると、骨男が万象で出した青龍偃月刀を振るう。

「おっと、赤兎馬の末裔。私に歯向かう気……うお!」

 背後からホットが策幽へ殴りかかる。

「赤兎馬の子孫! 敵に間を与え技を出させるな」

 舌打ちする策幽は反撃のチャンスを伺うが、連続攻撃で万象を封じられる。間断なく続く攻撃に万策尽きる策幽。


 そんな中、クラブとケロケロ外道の戦いは異様なものであった。

 クラブは本地になり、黒い高足ガニ化してハサミを幾度も突きつける。それを避けるケロケロ外道は、時々高くカエル飛びしてビルの側面に張り付いた。万象・べとつく爬虫類だ。

「毛ガニめ!」

「観念しなムピョコピョコ!」

 足をビルに突き立てて駆け上がりケロケロ外道を追いかける。その後方から、ビッグ4がサポートをする。


(さすがに連戦はきつい)

 そう判断した鬼反は、仲間に作戦変更を伝える。

「散れ! 散れ! 思い思いの場所へ散れ!」

 その声を聞くと、一斉に鬼反軍は町のあちこちに散って行った。


 その好機を見逃すニャン吉ではない。ホットとモモを追いかける。モモは囚人兵を破壊し爆破しながら匠に逃げる。時には壁に爪を立てビルの壁面を駆ける。もちろん、ニャン吉もそれを追う。遊園地の前まで来ると、柿砲台がモモと合流した。


 ニャン吉たちも、小次郎と合流し遊園地へと入っていく。


 モモと柿砲台を見失ったニャン吉たち。

「どうする?」とホットは尋ねる。

「頼みがあるにゃ」

 ニャン吉はホットと小次郎の耳元で作戦を伝えた。


 逃げ惑うモモと柿砲台は、コーヒーカップへ姿勢を低くして隠れた。一息ついたモモは顔を洗う。

「柿砲台、手ひどくやられたようだな」

「まいったでおじゃる。下水臭いでおじゃる」

 その時、場内放送が流れた。

『迷子の迷子の黒猫ちゃん、あなたの居場所はどこですか』

 その声はシロクマホットのものであった。身構えるモモと柿砲台。


『モモちゃーん、コーヒー作ってくれますか?』

「あのシロクマ野郎! バレてるぞ、逃げろ!」

「うおじゃ」

 再び遊園地を駆け回る。


 ホットの嫌がらせにも近い場内放送は続く。

『アイススケートは猫には難しいぞ!』

『ジェットコースターに乗るには背が足りにゃーい』

『ホットドッグを貪るキャット』

 次第にモモが苛立ち始めた。


「おい! 柿! 奴を始末しに行くぞ!」

「でも場所が――」

「簡単だ、そこの地図を見れば」

 モモは地図を確認しに行く。

『カモン! 猫黒!』

「今そちらに行ってやる」

 連戦の疲れもあり冷静さを欠いているモモ。放送室めがけ駆けていく。


「近道だ!」

「メリーゴーランドでおじゃ」

 メリーゴーランドを通り抜ければその先はもう放送室。ニヤリと笑い舌で口の周辺を洗う。


 メリーゴーランドの半ばまで来たとき、再び場内放送が流れた。

『ももも、モモがもももも』

「うるせえ!」

 白馬の乗り物の前を駆け抜けようとしたその時、突如白馬の影からニャン吉が飛び出してモモの横っ腹へ蹴りを入れる。


 モモはメリーゴーランドの外まで吹っ飛んで行き、お土産屋のぬいぐるみの中に陥没した。


「おじゃあ!」

 柿砲台もメリーゴーランドの屋根から飛び降りた小次郎に斬られ顔に大きな刀傷ができる。


 ぬいぐるみから出てきたモモ。その耳に猫耳のカチューシャがついていた。


「てめえら!」

「これがトロイの木馬ならぬの、地獄の木馬作戦だにゃ!」


 ――遊園地での戦いが始まった。ニャン吉の地獄の木馬作戦は見事にはまった。


『次回6月28日(水)正午「町中大乱闘その三・デパート大暴れ」更新』

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