番外編 一万年前物語 エピローグ

 魔界鬼反の乱から数年が過ぎた。

 天馬と火技子の間に生まれた2人の子どもがいた。兄の名は俊介しゅんすけ。弟の名は公民こうみんと名付けられた。


 地獄も平穏の日々が続く。

 皆の悪ふざけから、骨しゃぶの番犬就任式を適当に延ばされ怒り心頭の骨しゃぶ。


 仮免番犬とあだ名され、酒飲んでベロベロスとか子どもに笑われる始末。


 だが、いつまでも先延ばしにするわけにもいかず、毒地獄で番犬就任式が行われることとなった。


 首に蝶ネクタイを着ける骨しゃぶ。それを見て「馬子にも衣装」と吹き出す天馬。


 番犬就任式が始まった。


 途中、何故か閻魔に呼び出された天馬。不審に思いつつも素直に従う。


 閻魔の間には昔の仲間が集められていた。


 天馬たちは、緋色の絨毯に畏まり閻魔の言葉を待った。閻魔はニコニコ笑って手を叩く。すると、武装した魔族や、掃除大臣などが一斉に現れた。

「何をするのですか!」

 天馬は後ろから掃除大臣・魔界暗闇クラウンに鈍器のような物で殴られた。


 朦朧とする意識の中、天馬は閻魔を咎める。

「骨しゃぶの晴れの日にこのような醜態」

「ははは、魔とは油断させて相手を狙う者よ。この数年、ずっとお前が警戒を解くのを待っておったぞ!」

 薄れゆく意識の中、天馬は鬼反のことを思い出す。

(鬼反、俺はお前のことを認めるわけではないが、確かに俺が甘かった。……ああ、友よ)


 それから、天馬は永久凍土へと連行された。そこには、シロクマのホットもぶち込まれた。


 それから閻魔の告知が宇新聞に乗った。

『赤兎馬天馬及びその仲間を反逆罪で逮捕する。魔界鬼反と通じ我らを欺いていたこの卑怯者をこれからは、馬賊ばぞくと呼ぶことにいたす。今後天馬と読んではならん』


 赤兎馬火技子と離岸流花山は鬼反や天馬の身内とあって、門番の館から追放された。


 毒地獄のスラム街へ流れ着いた火技子と花山。2人はそれぞれ子どもたちを引き連れスラムの各地を転々とした。どこへ行こうが後ろ指を指される。


 ある時、2人はケロケロカジノの跡地でバッタリ出会った。

「花山さん……」

「あんた……ウチの旦那がホンマご迷惑おかけして」

 2人は互いに肩を抱き泣いた。子どもたちが無邪気にケロケロ外道の銅像を蹴り飛ばして遊んでいる。


 それから、さらに歳月が流れた。火技子も花山も策幽やケロケロ外道の仇とみなされ毒地獄のギャングに殺害された。その子もスラムで荒れた生活をしていた。


 ある日、鬼反の息子の鬼伝きでんが天馬の息子の俊介、公民に会いに来た。

「どうした? 鬼伝」

 鬼伝はスラムの生活から抜け出すため、カマカマファームへオカマの修行に行く決意を述べた。


「ああ、立派なオカマになれよ」

 俊介と鬼伝はグータッチをした。


「俊介、公民、お前たちに大事な話がある」

 俊介と公民は顔を見合わせた。


「俺の魔法でお前たちの姿を変えてやろうとおもったのだ」

 俊介と公民は驚き鬼伝の方を見守る。


「どちらかは、骨の姿となって身をやつし、どちらかはハムスターの姿となって宇新聞の創立者の子孫である天下言論王家に養子に入るという話だ」


 俊介と公民の顔はパッと明るくなった。

 そして、兄の俊介は骨の姿に変えてもらい、名を馬野小骨こぼねと改めた。

 弟の公民はハムスターの姿に変わり、名をハム助と改めた。


 そして、3人は旅立った。


 馬野小骨の子孫に骨男がいる。

 天下言論王ハム助の子孫にハム男がいる。

 魔界鬼伝の子孫にカマカマファームの魔界家がある。


 そんな、一万年前の話である。


「――とまあ、骨男から聞いた話も少し混ぜているわけだが、こんなところだ獅子王」

 現代の閻魔の間で天馬によって語られた昔話。それを聞くと、皆時に笑い、時に怒り、時に涙する。


 ニャン吉はその話を聞いている時、たまに邪王猫な笑いが浮かんだ。何も言わず、ただ、眉間に影を作り、細く目を吊り上げ上三白眼の目となり、口からは牙を出し、大口開けて口角を極限まで上げて声無く笑う。


 度々出るその顔が視界に入ると、天馬も驚き言葉に詰まった。正直、鬼反たちよりこの猫の方が悪いのではと思う。


 敵の万象や八咫烏をも殺す殺烏丸こがらすまるなど、相手の情報が出ると邪王猫になった。


「これで、奴らを倒す青写真が浮かんだにゃ」

 ニャン吉は邪王猫な笑いを浮かべ、悪魔のようなその面を天馬に向けた。


『一万年前物語完結。次回より、鳥獣戯画大戦へ入ります。3月29日正午更新予定』

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