心の魔との闘争、弱虫と未熟な果実
骨男は初心に戻る事で謙虚さを取り戻す。無限の向上心を再び。
――夜が来ていつもの様にキャンプファイヤーを始めたニャン吉達。夕食は超地獄アナコンダと煮っころがしを食べる。仲良くなるって素晴らしい。
武蔵は梅のおむすびが切れていて貧乏ゆすりが止まらない。そんな時、虫達が武蔵に相談をした。武蔵は我に返る。
「何だ、集太郎、ペラアホ」
「蝶々は思うんじゃ。蝶々もペラアホもこのままではニャ吉と一緒に戦えんと……」
「……正直言ってーよ、俺達みたーいな弱い虫がこれー以上戦力にならなーいと思ってよー」
虫達は自分の力の無さに自信をなくしていた。そして、自分達はこれから必要ないのではないかと悩んでいた。
(集太郎とペラアホに出た、よし)と武蔵は思い虫達の言葉に優しく頷いた。
「確かに、今は力が無いし、期待できんだろう。ならばそれで終わりか? 力が駄目でも技がある。千里眼とは別の力も会得すれば良い。その方法を教えてやる。そのためにはまず千里眼を極めろ」
「しょんなのがあるんか! 蝶々頑張る!」
「俺も希望が持てーて来たよー」
話しを聞いた鬼市が武蔵に大事な事を教える。
「武蔵さん、集太郎は陰陽師の力が僅かばかりあるらしい。ペラアホは透視とか超能力が使えると聞いている。もしかしたら、それが何かの役に立つかもしれない」
武蔵もニャン吉達もそれを聞いて驚く。
「お前達! 陰陽師と超能力者か! それなら話は早い! 面白い技を教えてやる! この武蔵に任せておけ」
虫達は歓喜の舞を踊りだした。
(こいつら踊るの好きだにゃん)
武蔵は新たなる指針を与える。集太郎に陰陽師の修行を、ペラアホに超能力の修行をつけた。それとは別に、二匹に共通の技である監視虫も教えた。
――翌朝、思い悩んでいたレモンが武蔵に相談してきた。
「何だレモン」
「……実は私は一世鬼なんデス。なので地獄を進めば進む程、体が思う様に動かなくなってきているのデス。やはり、地獄で体を慣らしてきた先祖がいない事がハンデとなっているのデショウ。このままではニャン吉様の役に立てないと思いマス。どうすればいいデショウ」
(レモンも来た)と武蔵は思う。
「レモン、ニャン吉は役に立とうが立つまいがそんな事は気にせん。それに、お前の薬は役に立つと聞いたぞ。あの骨男ですらお前には一目置いている。それに、鍛えればまだ強くなるとは思うがな」
「これから戦い抜けマスカ?」
「戦力としては……まあそこそこ行けるだろう。修行をすればいい」
「はい! 武蔵様、がんばりマス」
レモンは張り切って修行をし始めた。
「大丈夫、少なくともサポート役ならできるハズ。タレみたいな力が無くても、骨男みたいな文武の才能が無くても、自分にできる事は必ずアル」
レモンは試行錯誤をしている。
「……土竜の一生の様な技で相手を撹乱するベシ! 技巧派を目指すゾ!」
レモンが吹っ切れたのを見届けると武蔵はおむすびを食べようとした。その一つが大嫌いなシーチキンだったのを知ると武蔵は「むすび屋め!」と叫んだ。
――その頃ビッグ5の他の連中がどうしているのか覗いてみよう。最後はジワジワ。
ジワジワ・トル・ベントトーウは
「良いかジワジワ、心を落ち着ける事だ。さすれば道は見えてくる」
顎に蓄えた白い髭を風になびかせ、少し垂れ下がった目でジワジワを見ながら卜伝は指南する。
「でも師匠、お爺さんになっているから少し時間の感覚がおかしくなっているんじゃなーいの?」
卜伝はジワジワの頬を中指を立ててぶん殴った。
「――ジワジワよ、お前は焦り過ぎだ。心を落ち着けよ」
溶けこっこが「この爺さんいかれてるぜ」と小声で囁くと、溶けこっこに卜伝は肘鉄砲を食らわせた。溶けこっこは川に落ちた。
「ジワジワ、お前はここまでよく一匹でがんばってきた。鬼の仲間を作らずにな」
「……そこにいる燕はあたしの仲間何だけど」
卜伝の足元に一匹の燕がいる。
「……お前、名をなんという」
「自分の名前は、
卜伝は優しい笑みを浮かべると返背の背にツバをペッと吐きかけた。
(なんという爺なの。あたし、クソ師匠の弟子になったみたいね)
「……ジワジワ、返背よ。お前達若い者はすぐに腹を立てる。そして、何か思い通りにならない事があると暴力で解決しようとする。……それはとても良くない傾向だ。心を穏やかに保て阿呆鳥」
「……師匠、それは自分の事で――」
卜伝はジワジワの鼻の穴に木の根っこを突っ込んだ。のたうち回るジワジワ。
「短気なのは良くない。まして暴力に訴えるなど、言語道断だ!」と卜伝は言うと木刀を手に流れるような太刀さばきでジワジワ達を打ち据えた。
「はぁはぁはぁ、分かったか! 暴力はいかぁん! 分かったかこの青二才が!」
鳥達は地に落ちた。
――己の弱さを悟り、苦悩する集太郎、ペラアホと一世鬼である事に苦しむレモンを立ち上がらせた武蔵。
『次回「心の魔との闘争、悲劇の音楽家」』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます