仲間を救え

 ニャン吉はフワフワンに殺される直前で武蔵に助けてもらった。


「武蔵、やっと会えたにゃん! ずっと探したにゃん。皆も……皆は! 皆はどこだにゃん!」

「待ってクダサイ、侍」

「蝶々はしょの早さ追いちゅけん」

「蜻蛉の眼鏡はいーろいーろー」

「クエッ! ニャン犬か!」

「レモン! 集太郎! ペラアホ! タレ! 皆無事だったのかにゃ!」


「俺が山に登る途中見付けて連れて来た。火喰鳥以外は全員、後一歩で死ぬ所だった」と武蔵は言う。

「武蔵、今山を登って来たって言ったにゃん?」

 武蔵は少し笑うと苦歩歩の紹介状を出した。


「俺が修業を終えて天国へ行こうとしていた時、歪んドールとかいう怪しい人形が来てな。最初は叩き斬ってやろうかと思うほど怪しい奴であったが、苦歩歩が危機に陥ったと聞いてな」

「歪んドール……骨男だにゃん!」

「その人形が『苦歩歩が牢獄に捕らえられているから助けてくれとか言っているぜ』と言うから助けに行った。そこで苦歩歩を助けたわけだ」

「え? でも研究所に博士は帰って来て――」

「それはおそらく偽者だ。歪んドールから事情を聞いた俺と苦歩歩はどうするか相談をした。苦歩歩は『研究所の偽物は私達で何とかする。だから、梁山泊へ登ったというニャン吉君達を助けてくれ』と俺に頼んで更に紹介状まで書いて俺に渡した。苦歩歩の頼みとあらば断るわけにもいくまい。さて」


 武蔵は目に意識を集中させた。

「うん、お前の仲間の可児鍋クラブと付き人の魔界鬼市を見付けた。急ぐぞ!」

 ニャン吉達は武蔵について行く。


 道中ニャン吉は武蔵に尋ねた。

「武蔵、さっきクラブと鬼市を見付けたって言っていたけど……どうやって見付けたにゃん? 匂いとかかにゃ?」

千里眼せんりがんだ。心の目を開けばお前達もできるようになる――と後少しでクラブの所へ着くぞ」


 崖の下にクラブがいた。クラブは大型のサソリと戦闘をしていた。クラブはサソリの尻尾攻撃を硬い殻で受け流す。


 武蔵は崖を飛び降りるとクラブの前に着地した。武蔵はサソリを木刀で吹っ飛ばした。

「余計な殺生は好かんのでな」

「あんたは誰だ」とクラブは戦闘態勢を崩さない。


 ニャン吉達も崖を飛び降りてクラブの元へ行った。

「クラブ! 大丈夫かにゃん!」

「あ……相棒! 俺はもうだめかと思ったぜ。千回くらいサソリの毒針で攻撃されたが……無傷でいられた」

「……けっこう余裕だにゃんね。それよりクラブ、こちらは御結武蔵だにゃん!」

 ニャン吉はクラブに事情を話した。


「あんたが武蔵か。俺達を助けてくれて礼を言う」

「ああ、さて次は魔界鬼市だ」


 再び武蔵を先頭に山道を駆ける。鬼市はある山の頂上で蜘蛛の巣に引っかかっていた。巣を武蔵が刀で断ち切り鬼市を救った。


「あ……ありがとう。あのままだと僕は蜘蛛に」

「礼には及ばん。それよりニャン吉、全員いるか?」

「いるにゃん! 武蔵、ありがとにゃん!」

「よし、梁山泊を出るぞ」


 武蔵を先頭にニャン吉達は梁山泊の外を目指す。


 梁山泊の外へ出たニャン吉達。外まで出た所で武蔵はレモンに映る界で苦歩歩に連絡を取るように指示した。そして、ニャン吉達は研究所へ戻りそこで待ち合わす事にした。


 ――研究所に着いたニャン吉達は骨男達と合流した。そこにはビッグ5の連中も勢揃い。


「ニャン吉君!」

「博士! 無事で良かったにゃん!」


「ニャン公! 間に合って良かった。あんたが武蔵さんかい。ニャン公達を助けてくれてありがとうございます」

 骨男は武蔵にお礼を述べた。


「歪んドール様もいるにゃーん」

「えっと……歪んドールもありがとにゃん」


 全員集合し、互いに何があったのか報告しあった。ニャン吉が驚いたのは、まだ半日しか時間がたっていない事だった。


 苦歩歩は閻魔からビッグ5の全員を保護するように命令をくだされていた。ビッグ5は裏口が不正を働く前に地獄をことごとく突破しているから白だとの事である。裏口が不正をした痕跡が毒地獄の門に残っていて、その時期ビッグ5は皆水地獄にいたらしい。そもそも、ビッグ5の実力なら裏口を使った方が地獄の突破は遅くなるとの事で。


「――それだけではなく、妄奸誌の連中が不正を働いたのはビッグ5で、その手引きをしたのが……隠しても仕方がない。鬼市君だといって聞かないのだ」

 鬼市は鼻で笑った。

「妄奸誌何てそんなものさ。煽るだけ煽って最後は法に触れたら簡単な謝罪をするだけ。どんな時も『当たるも八卦当たらぬも八卦』の言葉で逃げる。だから『八卦』とか言われて馬鹿にされているじゃないか」


 武蔵は妄奸誌を手に取るとゴミ箱に捨てた。そして、言う。

「妄奸誌なんぞイジメの教科書だ。これをみて煽り方を覚える奴もいるだろう。こんな低俗な物を読んでも無駄だ。塵も積もればゴミとなる、返って邪魔だ!」


 ニャン吉は我慢の限界が来た。そして妄奸誌を捨てたゴミ箱にションベンをした。

「な……」

「ごめんにゃさい、間に合わにゃくて……」

「妄奸誌はニャンションびしょびしょじゃの」と集太郎は締めた。


 ――仲間は全員無事であった。ニャン吉達だけではなく、ビッグ5全員を保護するようにと閻魔の告知があり、皆研究所に集まった。さて、これからどうなる。


『次回「猫と剣豪の師弟」』

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