迫り来る死の影
研究所にいた偽苦歩歩を撃退した骨男。その正体は魔人であった。
骨男はレモン特製の自白剤をその魔人の口に流し込んだ。
「さあ! おめえの素性から目的まで洗いざらい話しやがれ!」
魔人は虚ろな目で話し始めた。
「我が名は魔性
苦歩歩は自白剤の効き目に目を見張った。
「すごい! レモン君の作った自白剤、魔人にまで効くとは!」
苦歩歩の驚きなど完全に無視して歪んドールは「こいつぁ面白い。個人情報も盗み放題だ」と喜ぶ喜ぶ。
魔人の
「今、生き残っている候補の内、不正をしている輩がいる。適応法を教えてもらい、鬼を従えずに裏口という方法で地獄の門を通って来ている」
「なっ! 裏口だって――」と骨男は反応する。
「そう、本来は正規の方法で試練を突破しなければならないのにだ! それを手引きした奴も捕まえる必要がある」
「その手引きした奴と番犬候補は誰なんでぇ」
「番犬候補は不明だ。だが、手引きした奴は判明している。史上最短で獄卒士二種の免許を取った超エリート鬼、今や一種の免許にも届きそうな……」
魔性
「おい! どうした! 続きを吐きやがれ!」
「自白剤はうまい! あっぱれじゃ!」と言うと痙攣は収まった。
当字は落ち着いた声でゆっくりと正確にその名を口にした。さっきの痙攣は一体……。
「
「裏口君! 裏口君だって! 彼が不正を働いたのか!」
予想外の言葉に苦歩歩は頭を掻き、取り乱す。
歪んドールは「やるぅ」とつぶやく。
「不正を取り締まるために伏魔殿は見えなくした。不正を働いた番犬候補が特定できない限りは……皆殺しだ!」
そこまで言うと当字は気を失った。
「博士! 裏口門之助ってのは誰なんでぇ」
「……裏口君は私の教え子だ。優秀な成績を残し将来を嘱望されておったよ」
「何でそんな野郎がこんなことすんだよ!」
「彼はもっと苦労をすべきだった。裕福な家に生まれて何不自由なく育ち、頭も良く才能にも恵まれておったがゆえに……心が弱い」
「おい! 骨公! 白衣のアホ! まだやるべきことがあるだろ?」
歪んドールは骨男と苦歩歩の会話に割って入る。歪んドールが何が言いたいのか分からない二人。
骨男がハッとして「博士! 御結武蔵とは連絡ついたのかよ!」と聞く。
「ああ、というか私は彼に助けてもらったのだ。地下牢に幽閉された私を歪んドール君が映る界を頼りに見付けてくれた時、武蔵の居場所を教えて連れて来てもらい、武蔵に牢を破ってもらったのだ」
「んで、それから?」
「彼は梁山泊へニャン吉君達を救出に行った。彼ならニャン吉君達を見付けてくれるはず。彼は天国地獄の戦士を鍛える冥界の師範だからね。間に合うと良いが……」
「……取り敢えず、良かったぜ」
骨男は一安心して地面にあぐらをかく。
「歪んドール君、これでいいね」
苦歩歩が言うと歪んドールは清々しい顔をして要求する。
「俺に感謝し、もてなしな!」
――ニャン吉は霧の中を一匹さまよい仲間を探していた。
「皆! どこだにゃん! いるなら返事しろにゃ!」
「ここだよ」
「皆いーるよー」
「助かりマシタ」
巨大な岩の裏側からその声が聞える。
「今行くにゃん!」
ニャン吉は声のする方へ駆けて行った。しかし、行けども行けども姿は見えない。その上淡い紫色の霧がかかり始めた。
「どこだにゃん!」
「ここだよ」
ニャン吉の後ろから声はした。振り返るとそこには全員そろっていた。
「やっと会えたにゃん。良かったにゃん。あれ、安心したら急に眠くなってきたにゃん」
「クエッ! ここに干し草を敷いた。ゆっくり休め」
ニャン吉は干し草の上で一眠りする事にした。
「気持ち良いにゃん……」
ニャン吉の心臓は穏やかになっていく……そう、どこまでも、止まるまで!
「最高に楽だにゃん……おやすみ……」
「目を覚ませ!」
ニャン吉はその声を聞くと目を僅かに開ける。そこには一人の和服姿の侍が立っていた。男は鋭い切れ長の目でニャン吉の後ろにいる者を視ると、刀を抜いてタレを切り飛ばした。
「何をするんだにゃ!」
ニャン吉は飛び起きた。
「馬鹿者! そいつらをよく見ろ!」
ニャン吉が周りを見ると……仲間だと思っていた奴等はガス状の魔物であった。
「にゃんだ! お前達は!」
「やっと正気に戻ったようだな。こいつはガス状の魔物、フワフワンだ。梁山泊に入った者に幻を見せて生命力を吸い取るのがこいつ等の常套手段だ。紫の霧が出てきたらこいつの幻の中に入った証拠だ」
「幻……じゃああのままだと俺はどうなっていたにゃん?」
「後数分で死ぬ。そして、魔物として生まれ変わりこの梁山泊をさまようところだった」
ニャン吉は戦慄した。
「何の準備もせずにこの山に入るとこんなものだ」
「あんたはもしかして――」
「俺は御結武蔵だ。探したぞニャン吉」
――骨男の機転で苦歩歩もニャン吉も死を免れた。そして、ニャン吉と御結武蔵は出会う。師弟の出会いがここにあった……。
『次回「仲間を救え」』
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