お前は誰だ!

 クラブが失踪した後、ニャン吉達は山道を進んでいた。


「おい! 白猫! ちょ……」

「なんだにゃん……あれ? 鬼市はどこに行ったにゃん?」

 鬼市も行方不明になってしまった。


 タレは少し焦りを感じて「クエッ! 空からあいつらを探す。早く見付けないと」と言い残すとニャン吉が止める間もなく空へ飛んで行った。タレが飛び立つと不自然なまでに霧が出て来てタレを見失ってしまった。


「な……なんでだにゃん……」

「ニャン吉様! おそらく甲殻類も小鬼もバタバタ鳥も帰って決マセン!」

「何でだにゃ!」

「魔のしわざデス! この山は我々を分断して一人ずつ始末するつもりデショウ。バタバタ鳥ほどの鬼をいとも簡単に騙せる……この山は危険デス!」


 事の重大さに気付いたニャン吉は戦慄した。


「ニャン吉様は私の蔦に掴まってクダサイ。羽虫、ヤゴの大人、お前達も私の頭の上に乗レ」とレモンは言うとニャン吉、集太郎、ペラアホを蔦でしっかりと掴んだ。


 レモンは皆を連れて梁山泊を一度出ようと来た道を帰ろうとした。

(……おかしいデス。この道は来た時にはなかったはず……)とレモンが考えながら歩いていると細い一本道に迷い込んだ。


 細い道を進んでいると、頭上で大きな音がした。ニャン吉達は上を見る。なんと! 山が崩落しニャン吉達に瓦礫を降らせているではないか!

「ま……まずいにゃ――」

「ニャン吉様! あそこへ向かって走りマス!」


 レモンは必死になって出口を目指した……が間に合わない!

(もう……おそらくハ……)

「羽虫! ヤゴの大人! ニャン吉様に掴マレ!」

 虫達がニャン吉に捕まるとレモンはニャン吉を出口へ向かって投げた。ニャン吉と集太郎とペラアホは窮地を脱した。しかし、レモンは瓦礫の下敷きに……。


 生き埋めになったレモンを助けるべくニャン吉は土を掘り始めた。

「レモン! 今すぐ助けるにゃん!」

「ニャ吉! この岩の下じゃ!」

「ニャッキー! 俺も見ていーた。レモンはそーこ!」


 虫達の証言を頼りにニャン吉は猫叩きで土を吹き飛ばす。風地獄まで突破したニャン吉の猫叩きは威力申し分ない。すぐに瓦礫を全て取り払ったが……レモンはそこにはいなかった……。


「おかしいにゃ、降ってきた瓦礫は全て除けたのに……集太郎、ペラアホ、もう一度場所を……」

 虫達もいない。


「にゃ! 何が……」

 更に辺りが急に暗くなり、霧もかかってきた。

「……俺を孤立させて弱らせてから倒す気だろにゃ! そうはいかないにゃ! 仲間はこの俺が探し出してみせるにゃ!」というニャン吉の声は辺りに虚しく響いた……。


 ――研究所では、骨男が喋りまくっていた。

「おっと! 骨男君。お茶が冷めているよ。新しく作り直してこよう」

「おう! そいつぁいけねぇ。おいら一度喋り出すと止まらねえんでぇ」


 新しく注がれたお茶の湯呑を苦歩歩が机に置こうとした時、骨男が言った。

「――悪いけどよ、おいらお茶は嫌いなんだ。博士がそれを飲んでくれよ」

「え? 私がかい? 私はいいよ。先程飲んで――」

でもあんのかい?」

「それはどういう――」

「博士、鬼娘の白衣はどうしたんでぇ」

「あれは汚れて――」

「あんたの一押しなんだっけ」

「……」

「あんただったよな、でよくゴミ箱に投げ入れたなあ」

「……いつ気付いた」

「八大地獄図を取りに行ったのに何でなんもいわねぇのか、不自然じゃねぇか」


 苦歩歩の顔は怪しく歪んだ笑みを浮かべた。

「ふっふっふっ、なるほど。しかし、仲間を見捨てて戻るとは――」

「あいつらに渡した映る界は発信機でもあってよ。このおいらの分で場所はすぐに特定できるぜ」

「わっはっはっ! 愚か者め、梁山泊を甘く見おってからに」


 骨男が映る界を見る……しかし、画面にレモンの居場所が映らない。

「映ら……ねえだと……」

「あの山は魔の山、鬼がうっかり入ったら最後。残念だったな」


 骨男が睨みつける。

「おめえ何者でぇ、目的はなんでぇ!」

「今から死ぬ奴に教えても無駄だ!」


 骨男はそいつから勢いよく離れた。

「やれるもんならやってみやがれぇ!」

「さらば、馬の骨よ」


 偽苦歩歩は手に見えないエネルギーを集め始めた。

(……こいつぁ魔法だな。おいらが魔法が目に見えねえ事を知らねえと思ってるっぽいな)


 偽苦歩歩が骨男に向かって手を突き出したので、骨男は素早く避けて窓を破って外へ飛び出した。魔法が爆発を起こし研究所の壁に大穴が空く。


「ほう……魔法の事を知っているか」と偽苦歩歩がつぶやくと骨男を追って外へ出る。

「私からは逃げられんぞ! 馬の骨!」

 偽苦歩歩は骨男を追いかけ袋小路に追い詰めた。


「さて、吹き飛びたまえ馬の骨」

「今でぇ! やれ!歪んドール!」


 研究所の影から歪んドールが本物の苦歩歩と一緒に出てきた。歪んドールは凝縮砲、『猫叩きとアイビーム』の小瓶の蓋を開けて偽苦歩歩に撃った。

「き……貴様!」

 凝縮砲は火の玉の如く飛んで行き、偽苦歩歩に直撃。大きな光の柱が偽苦歩歩に炸裂した。


 偽苦歩歩は変身が解けて本当の姿を現した。その正体は魔人であった。


 ――梁山泊で全員バラバラになってしまったニャン吉達。遭難するニャン吉達はどうなる。研究所では骨男が偽苦歩歩を撃退するが……その目的は。


『次回「迫り来る死の影」』

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