ただいま

 モウレツ屋が去って行くとニャン吉は八大地獄図――風地獄編――を見ながら計画を立てた。


 ――翌朝。

『余命二十七日』

 ニャン吉はホムンクルス捕獲作戦のメンバーを再編した。


『第二次、ホムンクルス捕獲遠征』

 ニャン吉は骨男とタレと行くことに決めた。骨男はホムンクルス捕獲作戦のための発明品を携えている。


「骨男、その道具はなんだにゃん?」

「おう! こりゃあよ、ホムンクルスを探すためのレーダーなんでぇ」と言うと骨男は小型のゲーム機のような物をニャン吉に見せた。画面がついていて、スマホのような形をしている。

「こいつぁよう! 苦歩歩博士と共同開発したホムンクルスを探す装置『チラ見君』っていうんだぜ! こいつの画面を見てみろよ」


 骨男がチラ見君の電源を入れると……画面に『鬼だにゃん……あんた鬼だにゃん』と文字が表れた。文字が消えると、風地獄の地図と地図上に黄色い点が見えた。


「……にゃんで『鬼だにゃん』なんだにゃ」

「そんな事どうでも良いじゃねぇか。まずはこの地図を見てくれ、これがこの周辺の地図なんでぇ」

 タレは画面を覗き込むと「間違いないクエッ」と確認した。

「それから、この黄色い点を見てくれ。こいつがホムンクルスの現在の居場所を示す点なんでぇ」

「これは便利だにゃん!」


 ニャン吉が感心してチラ見君を見ていると、タレがニャン吉の頭にすり潰した唐辛子をふりかけようとした。ニャン吉はそれに気付きさっと避けた。


「ニャン吉を罠にかけようなんて甘いにゃん」

「クエッ、うまくいくと思ったのに」


 骨男は小さな虫籠のようなものを出してきてニャン吉達に見せる。

「そんでこいつがホムンクルス捕獲用の道具、『小さくなるッス』だ。こいつにホムンクルスを近付けるとホムンクルスは小さくなってここに吸い込まれるんでぇ」

「西遊記の金閣銀閣みたいだにゃん!」

「……ニャン公、これは盗作じゃあない。そういうのやめてくれ」


 ニャン吉達はタレの背に乗って大空へ飛翔した。


 ニャン吉達は前回近場を周っただけだったので、今回は遥か南にある山脈、南茶手なんちゃって山脈へ遠征することにした。


 ニャン吉と骨男はタレの背に乗って遥かな南の山脈へ……、骨男は途中牛乳パックを出してきた。

「おい! ニャン公! おめえも飲むか?」

「飲むにゃん」


 骨男はニャン吉に牛乳パックを渡し、自分はプロテインを牛乳で溶いてグイッと飲んだ。

「……骨男、牛乳は解るけど……プロテインは何のためだにゃ? やっぱり骨のためかにゃ?」

「おいおい! おいらは筋トレに凝っているって言っただろ。見てくれよ、この広背筋。中々のもんだろ?」

「骨ばかりで筋肉は全くついてないにゃん」

「おめえ、おいらをもやしっこみてぇに言うなよ!」

(そうじゃないにゃん。あんた筋肉自体がないにゃん)


 ニャン吉達が雑談をしていると、タレが減速し始めた……。

「クエッ! 着いたぞ! 南茶手なんちゃって山脈!」

 そこは、全く木の生えていない禿山だった。


 骨男はチラ見君でホムンクルスを探した。黄色い点の所へと、タレに行くように指示。途中イーコ・ブール達がいたので強引に連れて行く。


 黄色い点の所へ行くと、ある山の山頂で相撲をしている二体のホムンクルスを見付ける。その隣の山には、スケボーでズッコケて山の斜面を滑り落ちるホムンクルスもいた。


 タレは、セカンドペンギンズを相撲ホムンクルスの所へ放り投げ「足止めして来い」と命令した。


 タレはスケボーのホムンクルスをさっと捕獲して、骨男が小さくなるッスに閉じ込める。イーコ・ブールはリズミカル千鳥足でホムンクルスを足止めしようとして、ホムンクルスに爆笑された。ホムンクルスは「お前頭にネクタイ巻き忘れているぞ」とでイーコを指差し爆笑。その隙にタレが捕獲した。


 タレは嫌がるセカンドペンギンズを足で掴んで連れて行こうとしたが、気が変わって途中で放り投げた。


 ニャン吉は「すごいにゃん! その発明品」と骨男を褒め称える。

「でもよう、ホムンクルス以外には全くつかえねぇんだよこの機械は」とチラ見君と小さくなるッスを誇らしげにニャン吉に見せる。


 ――夕方、ニャン吉達はホムンクルスを六体捕獲した。骨男の発明がなければもっと遅くなっていただろう。

(発明の力はすごいにゃん)


「さて! そろそろ帰るかクエッ!」

「タレ、今日は一日ありがとにゃん! 疲れなかったかにゃ?」

「クエッ! 火喰鳥は普通、その時はさすがに少し疲れる。今日くらいなら何ともないクエッ!」

「にゃんと!」

「でもよ、ありがとよ! タレ」と骨男がお礼を述べる。


 火喰鳥広場へ戻ってきたニャン吉達。

 研究所へ入ると、苦歩歩が嬉しそうに出迎えた。苦歩歩によれば、武闘派のホムンクルスが二体「ただいま」と言って普通に帰ってきたらしいのだ。


 ニャン吉が武闘派ホムンクルスの前を通ると「お疲れさまです。番犬レース頑張ってください。応援しています」と声をかけてきた。ニャン吉はホムンクルスを引きつった笑いをしながら見た。


 ――ホムンクルス全捕獲数、非武闘派八体、武闘派二体、残り二十体。


 ――翌日。

『余命二十六日』

 ニャン吉はホムンクルス捕獲作戦のメンバーを再編した。


『第三次、ホムンクルス捕獲遠征』

 ニャン吉はレモンとタレで西の山脈、西低さいてい山脈へと遠征した。


 タレは途中で山田もっさんと真珠あああを見付けると足で鷲掴にして連れて行った。そして、例の如く放り投げた。タレはこの日、非武闘派の七体のホムンクルスを捕獲。


 研究所へ戻ると、またしても二体の武闘派ホムンクルスが「ただいま、いい汗かきました。博士、爽やかな風ですね」と爽やかに帰っていた。


 ――ホムンクルス全捕獲数、非武闘派十五体、武闘派四体、残り十一体。


 ――翌日。

『余命二十五日』

 ニャン吉はホムンクルス捕獲作戦のメンバーを再編した。


『第四次、ホムンクルス捕獲遠征』

 ニャン吉はクラブとレモンとタレで行くことにした。クラブは乾燥を克服したようである。


 北の山脈、北無異きたない山脈へ行こうと思ったら、タレが「東の方が近くて楽だ。北は地形が複雑で風も他所より強い、準備してから行く方がいいクエッ! 北の北無異山脈には私達の家もあるから拠点にすればいい」と言うので東の山脈、東変木とうへんぼく山脈へ行くことにした。


 例によってジワジワを道連れにしながら、非武闘派ホムンクルスを五体捕まえた。


 研究所へ戻ると、武闘派ホムンクルス達が帰還。血塗れの一体を他の二体が支えて帰ってきた。

の途中で谷に落ちて――」


 残りは武闘派三体。あと少しだ。


 ――ホムンクルス捕獲作戦を本格化させたニャン吉達。なのに武闘派はただいまと帰って来る。武闘派は七人も自分で帰ってきた。


『次回、「真夜中の静かな騒動」』

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