三つ巴と正面衝突

 邪王猫ニャン吉、セカンドペンギンイーコ、だまし討ち貝あああは三者睨み合ったまま動かない。


 まず動いたのはニャン吉だった。ニャン吉はイーコに猫叩きを使った。

「おっとっと、これはこれは、当たると危ないですね」

 イーコは余裕を持って避けたように見せかけたが間一髪であった。冷や汗をかくイーコ。


 イーコは地面を蹴り上げた土をニャン吉に飛ばした。土は勢いよく集まり凝縮され数発の弾丸となりニャン吉を襲う。ニャン吉はバク転しながら避けた。

(これがイーコの大地の馴染み技だにゃんね)


 ニャン吉とイーコが体勢を崩すと間髪入れずにあああが貝殻の中から何かを撃ってきた。イーコは口から水を吐いてそれを止めた。ニャン吉は猫歩きで地面に前足を固定してバク転を止めることでそれを避けた。


(何だにゃ? 真珠かにゃ?)

 それは、あああの即席真珠砲であった。さらにあああは地面に潜った。

(にゃ! これはあああの大地の馴染み技かにゃ!)

 ニャン吉があああに気を取られた隙にイーコが紫色の毒の足でニャン吉に回し蹴りを入れようとした――がニャン吉が毒の爪で防いだ。


 ニャン吉の左前足とイーコの右足が離れた瞬間、あああが二匹の間の地面から飛び出して即席真珠砲を二匹に乱射した。


 ニャン吉は側転で、イーコはリズミカル千鳥足で全てをかわす。ニャン吉は側転中に猫叩きを使ってあああを攻撃するも、直撃寸前で口から水を噴射し反動で避けられた。あああの避けた先にイーコが土を蹴り上げて弾丸を撃つが……貝殻を閉じてガード。


「……流石はビッグ5」

「そうね、やるじゃないニャン吉、あああ」

「あんたら強過ぎるにゃん」

 ニャン吉達の攻防は続く。


 その間、助っ人達も死闘を繰り広げていた。骨男とイソギンチャクのイソと一つ目出っ歯巨人のサイクロ・ブス子が戦っていた。


 セカンドペンギンズのイソは青いイソギンチャクであり、相手に絡みついて毒攻撃をしようとしている。


 大砲組のサイクロ・ブス子は出っ歯でギョロ目の上鼻が高い。筋肉質な女巨人で力はとてつもなく強い。


 骨男はヌンチャクで応戦する。


 三者互角であった。


 付き人同士も集まって会話をしている。

 セカンドペンギンのイーコ・ブール担当の五代ごだい友薄ともうすと、真珠あああ担当の亀山かめやま亀太かめたが鬼市と眼の前の戦いを観ている。


「ミーの担当のイーコ・ブールどうよ。あれで全力じゃあないでごわすよ」

 五代家は代々地獄の株式会社、『人で無しカンパニー』の社長を務めていて友薄は次期後継者である。見た目は人間形の鬼で、父親は『友情なんてクソくらえ、自分さえ儲かればそれでいい』という願いを込めて友薄という名前にしたそうだ。歪んだ一族である。


「オラの真珠あああもすごいべ。今回みてぇに正々堂々じゃなかったら負げ知らずだ」

 亀山亀太は有名な変わり者で、亀形の鬼であり長首亀だ。長い首を伸ばし顔をぬっと寄せてくる。顔の前まで亀太は顔を寄せたら大抵、十秒間無言で無表情を貫く。そして、計ったように十秒たつと微笑む。亀山家は皆そんな奴等だ。


 友薄は「ミーの所のイーコは自分のために犠牲になる者がいると強くなーるでごわっす。我が『人で無しカンパニー』も周りの人を利用しまくってここまで大きくなったでごわっす。利己主義は正義でごわっすっす!」と豪語した直後の事。ドア弁慶が突然現れ『人で無しカンパニー』が倒産したことを伝えた。


 友薄は「そんなバナナ」と落胆の色を浮かべる。すると亀太が「残念だっだな。の会社がしたべや」と奇妙な励ましをした。もちろん亀太は顔を友薄の顔に十センチの距離まで近付けた。鬼市は笑いを堪える。悪名高き『人で無しカンパニー』……物語に絡む前に消え去る。


 ニャン吉達、番犬候補の戦いは激しさを増していた。三匹は大地の馴染み技を主力として使っている。


 ――ニャン吉達の戦いが勃発した研究所のある山の隣の山では、山田もっさんと鳶のジワジワ・トル・ベントトーウが死闘を繰り広げていた。


「お前が悪道徳のジワジワ・トル・ベントトーウか。いざ勝負! 行くぞキッツーネ!」と言うともっさんはジワジワに飛びかかった。ジワジワは羽をたたみ紙一重でもっさんを避けた。


「おやおや薄ら笑いの山田もっさん、私とやるつもり? さて、今日の私は、男? 女? オカマ? 溶けこっこ、どれが良い?」

 溶けこっこはジワジワの付き人で、ゾンビオウムである。

「男!」と溶けこっこが言うとジワジワは舌打ちした。


「今日は気分じゃないわ、溶けこっこ。何がいい?」

「女!」

 もっさんのじゃれつ犬が地面を伝ってジワジワを追うが、ジワジワは空へ飛んで避けた。


「いーい? 溶けこっこ。私は何?」

「鳥!」

「以外では!」

「わっはっはっ、オカマだろ! 溶けーこっこー!」

 ジワジワは気合を入れた。ジワジワは、オカマモードの時が一番楽しいのだ。


 ジワジワは空から大地めがけて、くちばしから突撃した。ジワジワが大地に衝突すると、その周囲の地面が盛り上がり土の人形となった。ジワジワの周りに五体の分身が出てきた。ジワジワはそれを掴むともっさん相手に投げつけた。


「へっ! こんなもん」ともっさんはジワジワの分身をはたき落とそうとしたらキッツーネが「避けろっコンコン!」と警告した。だが、その時すでにもっさんはジワジワの分身をはたき落としていた。


 ジワジワの分身は壊れたと同時にもっさんにくっついて離れなくなった。

「おうっほっほっー、あたしの『土団子』いかがかしら? 『鳶が鷹を押し付ける』っていうのよう!」

 もっさんは砕けた土団子を払おうとするがまとわりついて離れない。


 ジワジワはさらに土団子を投げてくる。土団子がついて重くなったもっさんは辛うじて飛ばされてくる土団子を避けた。もっさんは反撃に転じようとするが、ジワジワに空中に回避された……鳥は空を飛べるのが強みだ。

(流石は番犬候補最強と言われるだけのことがある。こいつはヤバイな)ともっさんは思う。


 もっさんは逃走を図る。それを追いかけるジワジワ。もっさんはある山の頂上まで犬の散歩で行くと後ろを振り返り、追いかけてきたジワジワめがけて飛びかかる。不意をうたれたジワジワはもっさんと一緒に山を落ちて行く。


 もっさんとジワジワが落下した先は……。

「にゃあ! お前は、もっさん!」

「何ですか! あなた達は!」

「……うわ……」

 もっさんとジワジワは研究所の前に落下した。そして、今度は五匹が入り乱れて戦うことに……。


 ――研究所の前は大乱闘。最強の番犬候補五匹がボロボロで集まり波乱の予感……。


『次回「報酬」』

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