激突

 逃げ出したホムンクルスを捕獲する作戦を開始しようとしたニャン吉だったが、ニャン吉の前にろくろ首が立ち塞がり、宣戦布告をしてきた。


「お前は番犬候補だな? 俺はろくろ首、いざ勝負!」

「クエッ! 早くしろ! ニャン犬」

「ちょっと待つにゃん、勝負が……」

「いいから早くしろ! クエッ!」

 ろくろ首はタレに「どけ! でくの坊!」と舐めた口を利き足で横に退けようとした。


 タレはブチ切れた。

「図に乗るな! クエッ!」

 タレはろくろ首を蹴り上げた。ろくろ首は天高く舞い上がった、というか吹っ飛んだ。空から血塗れのろくろ首が落下して地面に激突するタイミングでタレはろくろ首を谷底めがけて蹴った。ろくろ首はボロ雑巾となって谷底へ。付き人の幽霊ごおすとフーラフラはろくろ首を追いかけ谷底へ。


「クエッ! 行くか!」

 ニャン吉はタレの恐ろしいまでの強さを目の当たりにした。

(乙姫より攻撃が速くて重くて鋭いにゃん。……機嫌を損ねなくて良かったにゃん)


「クエッ! お前達、背中に乗れ!」

 タレは自分の背にニャン吉達を乗せようとした。どうやら背に乗せて空を飛ぶつもりだ。


 その時、ドア弁慶が閻魔の告知を持ってニャン吉達の前に出てきた。

「あ、ちょっと告知こーくち、はい、あーりまーして」

「告知だにゃん。タレ、ちょっと待つにゃん」


 ニャン吉はタレを待たせてドア弁慶のところへ行った。

「閻魔からの告知だ。あ、受けとーれ」

 ニャン吉に閻魔の告知を手渡すとドア弁慶は消えた。

「さて、なんて書いてあるのかにゃ?」


『風地獄にいる番犬候補諸君、そこではチーム戦をやってもらう。今まで仲間にした鬼達もとして戦闘に加わって良しとするが三名までとする。助っ人は戦い担当の前衛、サポート担当の中衛、控えの後衛、この三つ。前衛は戦闘に参加する者、中衛は戦闘には参加しないがサポートをする者、後衛はなにかの時の控えだ』

「チーム戦だにゃん!」

 ニャン吉は皆に告知を見せた。


 骨男は「なるほど! そいつぁ面白え!」と手をたたく。

 レモンは「で、ニャン吉様、誰をメンバーにするのデスカ?」と言った。

「虫達は置いておいて、骨男、レモン、クラブでいくにゃん」


「クエッ! 早くしろ!」

 タレは待ちきれなくなってニャン吉を急かす。

「ちょっと待つにゃん、今からメンバーを……」

「もう行く!」

 タレは飛び立った。

(なんてせっかちな奴だにゃん)


「前衛は骨男、中衛はレモン、後衛はクラブ……、あれ?クラブはどこだにゃん?」

 クラブは研究所の玄関の前でじっとしている。

「すまない、相棒。どうやら風で乾燥して体調が悪くなったみたいだ。大丈夫、明日にはどうにかする……」

「にゃんと!」

 ニャン吉は取り敢えず前衛は骨男、中衛はレモン、後衛はクラブとしておいた。


 苦歩歩はニャン吉に「タレが一人で行ってしまったし、研究所に戻るといい」と勧めた。


 ニャン吉達は研究所に戻った。

 ニャン吉達が研究所でサーカスの真似事をしていると宇新聞の記者が取材に来た。

「ふん! 風とは鼻息!」と牛一は例えた。

「ニャン吉君、君のチームの名前はなんですか?」とハム男が質問する。

「チームの名前? 無いにゃん」

「できれば、チーム名があれば新聞に載せやすいのですが……」

 ニャン吉は考えた。しかし、思いつかない。


 突然、鬼市が口を開いた。

「邪王猫でいいんじゃないか?」

 ニャン吉は振り返り鬼市の顔を見るが悪意は無さそうだ。それどころか、皆納得している。ハム男も納得して宇新聞は帰って行った。


「……、皆本当にいいのかにゃ? チーム邪王猫になってしまったにゃん」

「蝶々はしょれでいい」

「俺もどっちでーもいーいよー」

「ニャン吉様に任せマス」

「面白えじゃねぇか! 邪王猫」

「ふっ、相棒。お前の渾名から取ったんだからそれでいい。相棒らしさが出ている」

(にゃんともいえにゃい)


 ――夕方、研究所の外で誰かの声がした。

「タレが帰ってきたかにゃん?」

 ニャン吉が窓から外を覗くと、見知らぬペンギンと貝がいた。

(ん? あいつら誰だにゃん?)

 ニャン吉が目を凝らしてそいつ等を見ると番犬候補の証の輪っかをつけているではないか。

(にゃ! もしかしてこいつ等ビッグ5の連中じゃにゃいのか!)


 ニャン吉の思った通り、ペンギンの方はイーコ・ブール、貝の方は真珠あああであった。二匹は、戦闘態勢に入っている。


 ペンギンのイーコは青い体毛に覆われて口紅を塗っている。目は青でくちばしと脚は黄色であった。

 助っ人にイソギンチャク、黒珊瑚、ロウソク男がいた。


 貝のあああは二枚貝で、貝殻は外側が紫、内側は虹色。本体は白くて丸くて顔がついていて、お前はヘノヘノモヘジかと言いたくなる素敵なお顔。

 助っ人には、一つ目出っ歯巨人、歩く桜の木、のっぺらぼうがいた。


 イーコは「おほほほ! 私に勝てるとお思いか? バカ貝さん」と挑発をする。

 あああは「……やるか」としか言わない。寡黙の癖に声はでかい……なんてもんじゃない、ミュージカルの舞台並みに声がでかい。


 それを研究所の窓から観察していたニャン吉は(これはチャンスだにゃん。漁夫の利を狙うにゃん。双方潰しあえにゃ)といかにも邪王猫な笑いを浮かべた。


 研究所では博士のお手伝いロボットが液体の溶ける君を運んでいる。ロボットはニャン吉の後ろを通ろうとした時、急に止まった。そして、「おっとっとぉ」と言った後、数秒して転けた。その拍子にニャン吉の尻尾に溶ける君がかかった。


 ニャン吉の尻尾から煙が立ち上る。

熱いにゃちー!」

 ニャン吉は窓を突き破り外へ飛び出した。蚤の如く背中を丸めて背中から飛び出した。ニャン吉はイーコ・ブールとあああの間へ背中からダイブした。


 イーコとあああが呆気に取られる中、ニャン吉は自分の尻尾を追いかける阿呆猫を演じた。


 勝手に動き出した歪んドールが「ロボットのやったことだ、悪気は無いぜ番犬気取りの白猫」と含み笑い。


 ニャン吉は嫌でも戦闘に参加しなければならなくなった。


「あなた……蛇王猫のニャン吉ね? あたしとやる気?」イーコは戦闘態勢に再び入る。

「……来い」あああも戦闘態勢に。

 ニャン吉は尻尾をフーフーしながら、「こうなったら、やけくそ、にゃんクソ! かかってこいにゃん!」と宣戦布告。

 骨男とレモンも出てきて、チーム戦になった。


 イーコは「あたし達、セカンドペンギンズに勝てるとでも? 行くわよイソ。サポートよろしくねゴサン」と宣戦布告を受ける。


 あああも「……大砲組。サイクロ・ブス子。桜盛。行くぞ」と寡黙に宣戦布告を受ける。


 ――チーム邪王猫はセカンドペンギンズ、大砲組と三つ巴の戦いに。ニャン吉、ホムンクルスとタレはどうするつもりだ?


『次回「三つ巴と正面衝突」』

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