第2話

それから、おばあさんが入院している病院に通っていたが(2週間ほど)、無事退院した連絡をもらい、今週の土曜日に私の家に遊びに来ることになった。おばあさんはアパレル業界では有名かつすごい人らしく、退院後は仕事はやめると、少し問題になったらしいが、まだ引退しないでくれと言われたらしく、しぶしぶ、復帰したみたい。


おばあさんが来る日の朝、いつものように、リクとリオを散歩に連れていき、帰ってくると、家の前に黒い車が止まっていた。

おばあさん「ごめんね、早く会いたくて来ちゃった。」

美結「佳代さん、おはようございます。お待たせしてすみません。どうぞ。」

運転手「どうぞ。」

ドアを開けて、佳代さんを下す。

佳代「戸張、家に帰っていいから、帰るとき電話するから。」

戸張「いえ、でも…」

美結「よかったら、コーヒー飲んでいきますか。」

戸張「いいんですか」

美結「構いません。犬がいますがそれでも良ければ。」

佳代「美結ちゃんいいのに、ほっといても。」

美結「まあまあ、とりあえず車はこちらに停めてください。」

戸張「はい。かしこまりました。」

佳代「この人、ずっと私の付き人やってるけど、面白い人なのよ。」

ホホホッと笑って家にやっと入った。

美結「車止めたら、勝手に上がってください。入ったら、左の部屋に来てくださいね。」

戸張「かしこまりました。」

美結「私にかしこまらなくていいです。」

戸張「いいえ、奥様を助けてくださった方ですから。」

美結「硬いのは嫌いなので、やめてください。」

戸張「しかし…。」

佳代「しつこい爺って思われるかもよ」

戸張「えっ、そんな」

美結「佳代さんが言ったことで、私は何も言ってません。」

戸張「…はい。」

美結「とりあえず、こちらで座ってくださいね。今、リクとリオを連れてきます。」

佳代「楽しみだわ。」

美結「リク~、リオ~おいで」

と両親が使っていた部屋から、出てきてリビングに連れてきた。

佳代「やっぱりかわいいわね。君がリク君かな。」

佳代さんが手を出すと、リクが佳代さんの匂いをクンクンと嗅いだ後ペロッと手をなめて、美結の所に来た。

美結「リク、お座り。」

佳代「ちゃんとしつけられてていい子たちね。」

そのあと、リオも同じようにしていたが、佳代さんに撫でてもらうのが気持ちよかったのか、佳代さんのそばにリオが座っていた。

美結「お客さんが来たときは、ソファにのでないようにしてるんです。」

戸張「失礼します。」

美結「どうぞ、ワンコいるときはお菓子は出せませんが、コーヒーでもよろしいですか。」

佳代「私もコーヒー頂いても」

戸張「はい。」

美結「少し待っててください。」

戸張「お手伝いしましょうか。」

美結「大丈夫です。いつも入れてるので。」

佳代「戸張、こちらに来て座ってなさい。」

戸張「はい。」

ふふふっと笑いをこぼした。

佳代「犬みたいよね。」

美結「一瞬、耳と尻尾が見えたような」

佳代「私も時々あるの。そういえば、今日はランチもいただいていいのかしら。」

美結「私が作ったものでよければ。」

佳代「楽しみね。」

美結「一応、母が作る料理がおいしくて、両親が結婚する前は、父の働く会社の食堂で働いていたみたいで、栄養士の資格も持っていたみたいで、私も母みたく料理上手になりたいと思い、一生懸命母が作ってる横で一緒に作ってたと思います。

ちなみに、私は栄養士と食生活アドバイザーとかほかにもいろいろとりました。」

佳代「すごいわね、ほかにどんな資格持っているの」

美結「PC関係は基本取ってます。あと秘書検定、医療事務、語学も少し、整理収納アドバイザーっていうのも取りました。カラーコーディネートとか、あの子たちが来る前は、時間があったので、意外と面白かったですけど、小説家で食えなくなったら、役に立つかと思いまして。」

佳代「あなた、すごいわね。」

美結「昔はアメリカに三年ほど住んでいたことがあって、父の仕事の関係で、今は北海道で農家やってます。」

佳代「護身術は何か。」

美結「小学生のころに空手、中学の頃は剣道、高校はバスケ部でした。その時書いた小説がデビュー作ですね。大学は1年ほど語学留学して、それから、栄養士と管理栄養士の資格を取りました。まあまさか、小説家で食べていける自信なかったですしね。」

佳代「あなた、うちの子にならない」

美結「どういうことですか。」

戸張「開いた口が塞がりません。」

佳代「この子もったいないよ。」

美結「そんなこと、資格取るのが趣味だったようなものだし。」

佳代「小説家やりながらとか無理よね。」

美結「何がですか。」

佳代「秘書よ。」

美結「無理ですよ。」

佳代「そうよね。」

美結「お昼の支度しますね。」

美結が台所に向かった後、佳代は戸張となにかを話し込んでいた。

佳代「お昼、もう一人分お願いしてもいいかしら。」

美結「構いませんが、誰かいらっしゃるんですか。」

佳代「それは秘密。」

美結「その人、アレルギーとかありますか。」

佳代「大丈夫、みんな持ってないわ。」

美結「わかりました。頑張って作ります。」

佳代「よろしくね。」

それから、今日は和食を中心に、ぶり大根、ホウレン草とツナのサラダときんぴらごぼう、だし巻き卵、茄子と胡瓜の糠漬けとなめこと豆腐の味噌汁を作り、あともう少しで完成の所で、チャイムが鳴った。

佳代「私が出るわ。」

美結「すみません。ありがとうございます。」

佳代「早く上がって。」

謙介「なんだ、急にここに来いって、お邪魔します。」

美結「どうぞ。」

謙介「君は確か。」

佳代「そういえば、紹介してなかったわね。うちの孫の謙介、美結ちゃんよろしくね。」

美結「…。こちらこそよろしくです。」

謙介「どういうことだよ。」

佳代「これから、美結ちゃん手作り料理よ。」

戸張「美結さん、これ持っていきますね。」

美結「ありがとうございます。」

戸張「いえ、私の分まで用意してくださりありがとうございます。」

美結「別に気にしないでください。」

佳代「美結ちゃん、すごいわね、こんなにたくさん。」

美結「ぶり大根は、昨日の夜に仕込みましたから。味が染みてるはずです。」

佳代「そうなの、悪いわね。」

美結「ご飯とお味噌汁、お箸はそこにあるの使ってください。」

佳代「早く食べましょう。いただきます。」

戸張「頂きます。」

謙介「頂きます。」

美結「頂きます。」

佳代が味噌汁を少し飲んで、ぶり大根に箸を伸ばす。

佳代「この大根味が染みてて本当においしいわ。」

戸張「ぶりも生臭さがなくて、柔らかいし美味しいです。」

美結「そんなに喜んでもらえてうれしいです。」

謙介「本当だ、魚臭くない、美味しい。」

美結「魚の臭みを消すときはショウガと先に湯通しするんです、それでもだめなら、わたしは少しニンニクを入れます。」

佳代「ホウレン草とこれはツナ。」

美結「ホウレン草とツナは意外と相性がいいんです。」

戸張「美結さん、ぜひ謙介坊ちゃまと結婚してください。」

美結「ぶほっ、ごほっ」

佳代「もうそんなストレートに」

謙介さんを見ると、もくもくと食べていた。」

佳代「駄目よ、謙介にはもったいないわ。」

謙介「どういう意味だよ。」

(この間会った時とはだいぶ印象が違うな…)

なんて考えていると

佳代「そうじゃない、外ずらばかりよくても、モテないわよ。」

謙介「はいはい。」

佳代「あの子、美結ちゃんが帰るときに挨拶したって言ってたけど」

美結「しましたよ。」

佳代「私がいた病室に来たら、顔を真っ赤にして、ドアの前でうずくまってたのよ。」

美結「なぜ。」

佳代「それは、本人に聞いたほうがいいわ。答えるかどうかわからないけれど。」

美結「謙介さんなんでですか」

謙介「なんでもないよ。」

美結「まあいいです。リク、リオ、ご飯だよ。」

ワン

勢いよく食べ始めた、二匹をよそに、みゆは可愛いなぁと思い、またご飯を食べ始めるのであった。

それから謙介はご飯を食べた後、仕事があるからと帰っていき、二人は夕方までいることになった。


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