結婚したくない女と結婚したい男
おかか
第1話
私は香坂美結、28歳、結婚はしなくてもいいと思っている、恋人もいない、
家族は北海道に移住していった両親と柴犬のリクとリオの二匹だ。
家は親から相続でもらった、戸建ての二階建て、3SLDKに住んでいる。
1階には水回り、両親が使っていた部屋と、リビングダイニング、
2階は2部屋とクローゼット代わりにしている納戸と、バルコニーがある。
しかも屋根付き、天気が悪いときはリクとリオをそこで遊ばせたりすることもある。女の一人暮らしはどうなのかと両親は言っていたが、在宅勤務の仕事と小説家だ。
駅近だし、ご近所さんも、皆顔見知りだから、心配しないでと言って送り出した。
両親はまだ若いが、北海道に住みたい願望があったらしく、最初は家を売るのかと思っていたが、向こうで家を安く買ったらしく、冬は雪かきが大変だが、それでも楽しいらしい。
私は遊びに行くならありだが、暮らすのは嫌だ。
今日は朝から天気が良く、散歩日和なので、リクとリオを散歩に連れていく。
散歩コースは決まっていて、散歩に行く合図がリードを持つことなので、持ったのを見た2匹は尻尾を振って大喜びだ、リクは活発的な男の子で、リオは大人しめの女の子だ。獣医の先生からどちらも健康ですとお墨付きもいただいている。
どちらもまだ2歳だし、ちゃんとしつけもしているので、とてもいい子たちだ。
美結「散歩に行くよ。」
と声をかけ、散歩に出かけ、帰ってきたら、おやつをあげて、お留守番を頼む。
車で買い物に出かけるためだ。執筆していたものは、昨日の締め切りで、とりあえずひと段落した。在宅勤務の仕事は、隙間時間でできるものしかやらないので、その時によって、量は変わるが、とくに急ぎでもないので、今日、明日はおやすみにしてもらった。
普段買い物は専らネットスーパーばかりだが、たまには買いに出ることもある。
近所のスーパーに着くと、まず、外にある、トイレットペーパーとティッシュをカートに乗せる、それから必要なものを買い、車にあるクーラーボックスに荷物を入れ終わったところで、近くに、おばあさんが倒れていた。声を掛けたら、返事があったので、どうしたのか聞いた。
おばあさん「い きが くすり、ばっ」
美結「おばあさん大丈夫ですか、薬、バックですね、あけますよ。」
車に積んだ荷物から、水を取り出し、119番しておばあさんに薬を飲ませた。
しばらくすると、救急車が来て、事情を説明、救急車に一緒に乗り、病院まで行き、待合室で待っていると、ご家族の方が来たのか、向こうのほうで、先生から説明を受けたみたいで、こちらに向かって歩いてきた。
近藤「香坂さんですか。近藤と申します。おばあさんの孫です。」
美結「はい、おばあさんの容体はどうですか。」
近藤「おばあさんなら、大丈夫、ここまで来てくれてありがとう。」
美結「いえ、おばあさんのお見舞いに来てもいいですか」
近藤「もちろんです。本当にありがとう。」
美結「では、私は帰ります。買い物の途中なので」
近藤「それはすみません。」
美結「食材はもともとクーラーボックスに入っているので大丈夫です。では失礼します。」
と病院を去った。
家に帰ってからも、おばあさんのことが気になったが、
明日、お見舞いに行こうと、それ以上考えずに過ごした。
今日は大変だったなと思いながら、リク、リオと戯れてから、眠りについた。
いつものように、リクたちを散歩に連れていき、花束を持ってお見舞いに向かった。
看護師さんによると、きのうの夕方、目を覚まされたそうで、本当はご家族だけ面会できるみたいだが、近藤さんが、話をしてくれていたみたいで、おばあさんと会うことができた。
ノックをして声をかけた。
美結「こんにちは、失礼します。」
おばあさん「どうぞ。」
美結「香坂美結と申します、お加減はどうですか。」
おばあさん「今は大丈夫、あなたが助けてくれたのよね。」
美結「そうですか。」
おばあさん「ありがとう。」
美結「とにかく無事でよかったです。これよかったら」と花束を渡し
おばあさん「まあ素敵ね。」
美結「花瓶借りてきます。」
おばあさん「すまないね。」
美結「全然気にしないでください。」
おばあさん「本当にありがとう。」
美結「いえ。」
花瓶を借りて花を生けたのを持っておばあさんの病室に戻った。
おばあさん「美結ちゃん、どこか旅に行ったことある。」
美結「海外に、留学はしたことありますけど、それ以外ではないですね。今は犬も飼ってますし。」
おばあさん「そうなの、犬種は何。」
美結「柴犬です。二匹とも。」
おばあさん「柴犬いいわね。私はプードルがいるわ。」
美結「プードル、いいですね。」
おばあさん「退院したら、ワンちゃん連れて、遊びに来て頂戴。」
美結「いいんですか。」
おばあさん「ぜひ、美結ちゃんは結婚はされているの」
美結「いえ、結婚願望がないんです。今は仕事と、犬たちと幸せですから。」
おばあさん「そうね、お仕事は何をしているの」
美結「まだまだですけど、小説を書いています。」
おばあさん「そうなの」
美結「香坂みゆきって聞いたことありますか。」
おばあさん「香坂みゆき!?してるもなにも、ファンなの、とっても嬉しいわ」
美結「顔出ししていないので、秘密でお願いしますね。」
おばあさん「わかったわ、今度サインもらえたらうれしいのだけれど。」
美結「今度新作が出るので、それをお持ちします。」
おばあさん「ありがとう。もうびっくり、しかもこんなに美人な子なのに、なぜ顔出ししないの。」
美結「なにか、問題が起きたり、しない限りは、表に出るつもりはないんです。」
おばあさん「確かに、顔出ししなくても、問題ないけど、サイン会とかはする予定もないの」
美結「サイン会か、考えなくはないけど、ファンサービスはネットでコミュニケーションとったりはしているからそこまで必要性を考えていないの。売り上げは、半分は寄付するためでもあるから。」
おばあさん「それ本で読んだわ、留学する前にボランティアで貧しい子たちにって書いていたわね。」
美結「売れるまでは大変だったけど、売れるようになったら、親も安心してくれたからね。」
おばあさん「売れるようになったら忙しいんじゃないの。」
美結「締め切りは一昨日だったので、問題ないです。」
おばあさん「じゃあ新刊が楽しみね。」
美結「しかも、次のやつまで、ちょっといいのがあって、それも出そうかどうしようか考え中なんです。」
おばあさん「まあ、そういえば、10年ぐらいたつのでは」
美結「高校生の時に、たまたまネットに出したのが、出版社の人に見つけてもらえて、それからですね。本は昔から好きで、一部屋書庫になってます。」
おばあさん「今度、お邪魔しちゃ悪いかしら。」
美結「来ていただくのは構いませんが、相当なので、ビックリするかもしれません。」
おばあさん「尚更、見てみたいわ。」
美結「退院して、落ち着いてからにしてくださいね。」
おばあさん「約束よ。」
美結「これ、名刺です。出版社の人とかに渡す奴なんですけど、裏に個人の番号ありますから。
おばあさん「名刺は、今持ち合わせていないのだけれど、これが番号よ。」
美結「ありがとうございます。」
看護師さん「こんにちは、検温の時間です。」
美結「じゃあ、そろそろお暇します。早く元気になってください。また来ます。」
おばあさん「そう、退院したら、連絡入れるわ。」
美結「お大事にしてください。」
おばあさん「はい。今日は来てくれてありがとう。」
美結「いえ、気になさらず。」
手を振って病室を出た。
まっすぐ家に帰り、明日からの作り置きを用意して、今日のうちにできることをした。
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