第14話 矢
「そもそもこの町にわざわざこさせようとしたのが本当の狙いだとすれば、雨神の件も合点がいく。標的がすげ変わった今。本来の目的地には何があると思う?」
風晴は、トランクから大きい弓と矢を持ち出した。
弓を覆っているぐるぐる巻きの布をほどきながら推理を語った。
榊は、少し考えてからさあ?と欧米風のジェスチャー。
「ともかく、ヒロ君を頼むよ。余計な事しないように。」
「なんでわたっ、、」
「何かあったらこの弓を使いな。折ればいいだけだから。」
「風晴さん。。。。町が。。」
土砂崩れのような轟音がなった。どこかわからないが、付近のようだ。
「避難誘導もかねてだよ。思った以上の豪雨だ。川はすでに氾濫してるね。たしか近くに大き目のダムがあったよね。たぶんさすがに町民は避難してるさ。」
「風晴さん、お気をつけて。」
「あいよ。」
風晴は、弓道の美しいモーションで弓を引いた。
ここか?と目を細め弓を弾いた時には、風晴はぱっと姿を消していた。
雨は次第に強まり、気温もグンと下がった。
「うっわ、さっむ。」
ヒロトは未だ上裸だった。もので気を遣った榊は、車内から上着を取りに行った。
木製の小屋だが雨漏りはしていない。崖の上にあるこの小屋で風晴の帰りを待つ。
ある一軒家の玄関先に矢は刺さった。空間を切り裂くような音とともに風晴の姿が急に現れる。
「お、我ながらコントロールいいねえ。」
土砂ぶりだというのに風晴には雨は当たっていないのだ。玄関先の柵に肘をあて徐に携帯を取り出すとどこかへ電話をかけているようだ。
「風晴ですけど、、、うん、、、、見てるね。合ってるよ。、、、、うん。、、
、、、、それじゃあお願いしますね。」
その一軒家の玄関は空いている。薄暗い玄関の奥からは、あの日、ヒロトの家に出没した。呪いが多くいた。
外で話す風晴に気づいたのか、ぞろぞろと現れて風晴を狙った。
風晴は、スマホをポケットに入れると。指をパチン。と鳴らした。
一方、榊は、自分が来ていた上着の匂いを気にしながらヒロトのもとへ向かった。
榊は、一瞬戸惑ったが自分の上着をヒロトにかけた。そしてヒロトの口元についた葉っぱに気づき恐る恐る唇についたごみを掃う。
「どっひゃーーーーーーー。隙だらけ過ぎるううううう。え、え、でも風晴さんが戻ってくると面倒だしな。とりあえず写真だけ取っておこう!うん!それだけ!それだけだから!!」
パシャシャシャシャシャシャ!!
「ちょちょちょっと連写になってるじゃん!!おおおお落ち着け私!!」
「あ、、、、でもあと一枚だけ、、、」
榊はそっと、先ほどかけた上着をそっと外しカメラを構えた。
「あ、っち違う違う!動画じゃなくて~、、」
榊は、スマホの操作に夢中になっていた。画面越しに写るヒロトに気づかずに。。
暗い意識の底にいた。まるで落とし穴に落ちて上を見上げているような。
上を見上げるとそこは明るい水面を見ているようだ。
そこにいる自分は上がろうとはしなかった。大きなドラゴンのようなものがずっとこちらを見ていたから。見られていると全然動けなかった。ドラゴンは、暗い闇の中で、こちらをじっと見ている。上にある明かりで少しだけ照らされているがとてつもなく大きいということだけはわかる。
そこからは記憶はとびとびだ。
突然フラッシュのような稲光が不自然に連発した。思わずまぶしさに目を閉じると。
妙に肌寒い感覚を四肢の感覚をはっきりと感じた。
「え?」
急遽目覚めたヒロトに驚愕。そして次に言い訳を考えた。
寝ている上裸の男のシャツを奪いスマホ構え、ものすごい顔をしてシャッターを切っていたのだから。
「きゃーーーーーーーーーーーー!!!!」
女性のような悲鳴をヒロトは上げた。
「いやややややちょちょちょちょっとちょっとまってこれには訳が!!」
両手を振り回し、弁明をする榊。
「そんな趣味があっただなんてーーーーーーーーーーー!!!!」
「うああああーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
誤解を生み弁明が困難と悟った榊は叫び、両目を覆いながら、自暴自棄。
「なにやってんの?」
はっとなって二人は正気に戻る。
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