第13話 雨だれ穿つ
榊、風晴は登ってきた倍のスピードで山を下りた。風晴の腕に抱えられたヒロトは以前気を失っている。
車の後部座席に寝かせ、風晴はどこかへ車をひた走らせる。
「さすがの神性だね。姿はあれから追えないよ。」
煙草を咥えながら、車の運転席から上空を眺めニヤついている。
「どこかの川か湖の主でしょうね。さすがの私でもあれはまずいって感じます。」
後部座席のヒロトの顔色を見つめる榊は、シートベルトのかけ忘れに気づき急いで占める。
「いいや、そんなもんじゃない。あれは、相当だ。古い神だね。こりゃ土砂降るぞ~。」
「!?、そもそもどうやって呼んだんですか??」
「俺だよ。」
「はにゃ?」
「まんまと騙されたさ。結界を開いてあげるにはあいつらじゃ力が足りなかったようだね。水たまりの下には結界の気配なんてしなかったのに。」
「相当な切れ者ですね。」
「材料を揃えてあげればいいだけの話さ。あとは俺らが結界を破れば、その場で召喚。おそらくヒロ君は、その材料の一部にされたかもねってこと。」
「え!?彼死んでるんですか!?!?で、でも息がまだ、、」
「そ、不思議なことにね。あの雨神は、何を依り代にしたんだか。」
曇天が空を覆い大粒の雨が垂れる。遠雷を聞きつけた鳥たちは悲鳴を上げ、安息地へと飛び立つ。
「ひとまず、雨神の場所を突き止める。高台に車を止めようか。」
ボンネットを叩く雨が次第に大きくなっていく。県道は波打つように水たまりを作り気圧ねじれ始めた。
「ここだね。ひとまず雨を避けよう。」
着いたのは、町を一望できる高い場所にある観光地だ。
観光地といっても、木製のベンチで屋根付きの休憩スペースだ。車をべたつけすると榊はトランクを開け、風晴はヒロトを抱えると、ベンチの上にそっと寝かした。
「こりゃあひどい雨だね。」
腰に手をあて、町の様子を眺める。
バタン!
トランクを勢いよく閉め、榊は、旅行バックをかかえてドスンと置いた。
「ううう、榊さん、ほんとになんでこんなに重いんですか。。。。」
「こらこら大事なものに腰掛けな~い。ほら、どけどけ巨尻。」
「うっわ!!!サイテーこの人。」
洋風にデザインされたカバンは、皮で作られていてとても高級なものだと感じる。その上長年使われていたようにところどころシミや黒ずみがる趣のある鞄だ。
パチン、パチンと鞄の鍵を外しガパッと久しぶりに箱を開けたような音がした。
「ちょっとこれ使って、雨神の位置調べてくれるかい?」
「あ、はーい。ってかまたこれっすか?目が疲れるんですよ?これ。。」
「つべこべ言うんじゃありません。ほら、準備して。」
風晴は榊に、液体の入った瓶と紙製の札を渡した。
そのままヒロトに駆け寄り、色々取り出した道具をつかってヒロトの様子をうかがった。
鞄の中身は、四次元ポケットのように鞄に入る許容量を超えていた。何かの目玉や札、あとはカピカピになった腕や、呪いの道具一式が所狭しと詰められていた。
風晴は、ヒロトのシャツを開け胸部に魔法陣のような紋章を書き込む。
「はーい榊、こっち見てないではやくやれ~。」
鼻の下を伸ばしながら、手が止まっている榊の姿を見ることなく風晴は注意した。
「や!やってますよ!」
榊は濃ゆい緑色をした絵具のような液体を瞼に塗り、目を閉じた。紙札は、榊が念を込めると宙に浮き、燃えるように消えた。
「榊、知ってると思うけど。六眼開眼後は無茶しちゃだめだよ。君は適性があるから、視力を失わずに済んでるだけだからね。」
「わかってます。よ!」
榊は大きく目を開くと、瞳は深緑色に輝き魔法陣のようなものが眼前に現れた。
「いました。ちょうど真上ですね。え、なにこれ。そんな。なんで?」
「はいちょっと待った。うかつに神の心境まで覗くんじゃないよ。」
「すみません。。。でも位置はばっちり把握しました。」
「うん。君まで動けなくなると困るからね。」
注意がてら、風晴はヒロの顔を神妙に見つめた。
「ヒロ君は、まだ生きてる。でも少し気になることがあるね。」
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