第12話 悪臭
風晴曰く、不自然な事象には何等かの代償が支払われる。榊のパイロキネシスもその代償を払っているに違いない。と風晴はにらんでいるが、榊自身全く心当たりがないという。
体外からそういった力を吸収し代償を賄える術者は、もうこの世には五人といないだろうとのことだ。
例えば、火を起こすには薪がいるし火種がいる。パイロキネシスやそういった現象のすべては決まった状況、条件下でのみ発生し術者の命令によってその現象に至る。
何かしら理に合ってないと、そもそもそういった現象は起こらないのだ。
榊のパイロキネシスは、以前の悪魔によって、火の元素、神格たる部分に触れたからだと風晴は言う。
コトリバコも同様。子の命によって代償は支払われ延延と対象を呪う現象だという。
「榊、依頼者の自宅に行く前にここに寄ってくれ。」
と言って、携帯を僕によこした。速度メーターあたりに携帯を置いてやり、目的地へ向かった。
行き道とは言え、山間部。何もないところにピンが立っているだけの場所へ車を走らせた。
道は凹凸。獣道ともいえる山道の中腹に車を止め、ここからは徒歩だという。
そこには、真っ赤な鳥居がありいくつもアーチ状につながっている。ひと気は無く、うっそうとした森には、お供え物と野生のシカがいた。
「ヒロ、みて!」
「ん?」
「鹿!!」
「でっけえな」
風晴はもくもくと参道を昇り続けた。僕はといえば、息を切らし二人についていくのに必死だった。
息苦しいものあるけど、なんだか体が重い。こんなことでへこたれてちゃあ、榊に笑われる。目がかすんできた。気のせいじゃない。
心臓部分が妙に違和感を感じる。足が上がらない。地面に吸い寄せられるような感覚だ。これはただの体調不良ではない。
何かが。。。。。
ドサッ。
「ヒロ?」
「まずいね。」
風晴は瞬間移動のようにヒロに駆け寄った。
遅れて榊も駆け寄り、ヒロの状態を探った。シャツをズボンから出し、脈を図る。
ヒロの脈、心拍は止まっていた。
「風晴さん。」
「うん、近くにいるだろう。あの一家を呪った犯人が。急ごう。」
風晴は、ヒロを背負い階段を跳ねるように登った。
しばらく、登ると湖ほどまではいかないが、大きな水たまりがあった。
その水たまりは深く、透き通っているからこそその深さに不気味さを覚える。
その中に、大きな、それはもう巨大な鳥居がある。その鳥居は不自然なことに横に倒れていて鳥居の中は、透き通った水とは違い。暗く薄紫がかっていた。
「前来たときは、ここにはこんな湖はなかったはずです。」
榊は、切羽詰まっていった。
「ヒロ君をみてて。」
冷静に答える風晴。ヒロを下ろし、切り株にもたれかかるようにそっと下ろした。
コキッコキッ
と首の骨を鳴らし、湖に対して構えると手を合わせ、指先は湖に向けた。
「割(かつ)!」
地響きとともに湖の波紋が大きくなり始めた。
風晴が手のひらを外に向ける動作と同じように、なんと水面が割れ始めた。
轟音とともに湖が割れ、滝のようになった。
ついに鳥居が水面から顔を出した。
心配そうに風晴を見つめる榊。
「風晴さん、その入り口には触れちゃ、、」
「うん。これは本当にまずいね。」
風晴の額から汗が流れた途端、かっと目を開き、両腕をすぐさま閉じようとした。
その時、鳥居からとてつもない冷気があふれ出し、なにか巨大な生物の鼻はが出てきたと認識したが、それは勢いよく飛び出しあたりの木々や水をなぎ倒しながら、水煙を纏った龍が飛び出た。
「雨神か!!」
風晴は、片腕をあげ天空に舞い上がる龍へと向けた。
「風晴さん!!」
榊はその腕をつかみ、強引に下ろした。
「雨神を刺激しない方がいいです。」
「まあね。だけどそれはもう手遅れみたいだよ。」
飽きられともとれる笑みをこぼした風晴は、榊の手を振りほどき焦るように煙草を咥えた。
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