第10話 戦闘

「それにしても、ヒロ君、君は罪な男だねえ。。女の子にあんなこと約束するなんて。」


「初耳ですよ!やめてください!!っていうか、あんたの弟子でしょ!あんな危険な人物をそばに置いておくなんて!」


「いいや彼女は、今は、ふつうの彼女じゃない。」


「え?」


「憑りつかれているんだよ。さっき祓ったはずの悪魔にね。」


「ああ!そういうことですね!?」


「お?案外飲み込み早いね?」


「学生時代のあいつをよく知ってるからですよ。」


風晴は視線を僕から穴の開いた壁のその向こうに視線を移した。


「ふふふ、どうやら訳ありのようだね。」


「い、いや!だからちがっ。。。」


バキバキバキッ。ガシャーン!!


彼女は、赤く炎のような揺らめいたものをまとっていた。


風晴は楽しそうに、歓喜の声を上げた!


「おお!あれは珍しいよ!ヒロ君!海外ものだ!」


「何の話してるんですか?!」


「日本の妖怪じゃないってことさ!道理でおかしいと思ったんだ。見たところ、火天?いいやアグニかイフリート、、」


「え?FIVER FANTASYですか??」


「うん、まあそんなところかな?」


風晴は頬を掻いて、困惑した表情だ。そして思いついたかのように手をポンと叩き


「そうだ!今日言ったよね?今後について話すって。」


「言いましたけど、、まさか。」


「あの程度じゃ君を殺すなんてできないはずさ」


「は、はい」


「じゃ!頑張ってね~」


「え!ちょっ!はあ!?」


言い終える前に、榊、基、アグニの強襲!


咄嗟に、黒い影を出した。

「受け止めろ!!」


両腕を、クロスさせ防御態勢をとる。が黒い影に突き飛ばされた。


「ええ!?あうあ!いってえ!」


突き飛ばされた先にあるタンスにぶち当たる。


パッと顔を上げると空に向かって榊は炎を纏ったパンチを繰り出した。


炎は、パンチの衝撃で火炎放射器のように放たれた。


「丸焦げになるところだった。。。」


「ほお~黒い影は優秀だね。」


「ちょっと風晴さん???感心してないで。。」


「ほら次来るよ?」


榊は、雄たけびをあげた。


「「アタレヨーーーーーー!!!!!」」


「当たるかバカ!!!」


次はこっちから仕掛ける!マッチョスタイルの黒い影は、それはもう強かった。

実際、炎から距離を取って戦うことができるし、黒い影には炎は効かない。


力でねじ伏せようと、ラッシュを止めない黒い影になすすべもなく、ガードしている榊はどんどんと地に足をつき、地面に伏せるがまだまだラッシュは止まらない!結局、地面に榊は埋まるまで殴り続けた。


プシューーーーー!と音を立て榊の沈火が完了したところで、黒い影はさらさらと消え始めた。


「ありがとう。」


とポンポンと叩き、こちらをみて去っていった。





 あれだけのラッシュを食らっておいて、そこまで外傷はないし榊自身も気絶しているだけのようだった。

どうやら、森田夫婦は、先日海外旅行に行きそこでなにかしたのであろう。アグニに憑りつかれ日本へ帰国。そこから不幸が続くようになり、この地に来たんだとか。

風晴は、てっきり日本の除霊方法を試したが、効果は少なく沈静化されただけだった。除霊の際、榊の様子がおかしいと思った風晴は、”焼き肉”を催し、誰に移ったのか確かめたかったとのこと。

その場にいた森田夫婦、僕は、大喜びで肉を食べた。案の定、森田夫婦は殺害され、僕はアグニの餌として使われた。


「君さ、なれるの早すぎじゃないかい?」

半笑いで風晴が背後から現れた。


「適応能力には自信がありまして、、」


「社会には溶け込めないのに?」


「うるさいですよ。」


そういって榊が埋まった穴を二人で見下ろした。


「あ~あ、こりゃまた派手に、」


「風晴さん。榊はどうなるんですか?」


「気になるかい?」


「はい。」


「無力化した呪いは、天に還さなきゃいけない。ただ、いくら自慢の弟子でも、アグニに道ずれにされるだろうね。」


「そう、、ですか。。」


「僕も悲しいさ。」


「僕は、あと片付けするから。とりあえず、彼女を引っ張り出してもらえるかい?」


「わかりました、、。」


榊に駆け寄り、黒い影に手伝ってもらいながら榊を引き上げた。服は炎で燃え尽きていた。僕は上着をかけ、そっと抱きかかえた。


すると榊の背後には、アグニの亡骸?残骸というのだろうか、まだ熱のこもった石炭のようなものがいくつもあった。


裸の彼女を抱きかかえていると、体が光を放ちアグニの残骸を取り込み始めた。

瞬間、彼女はとてつもない熱を持ち燃え上がり始めた。


「どゥわわわ!!!あっっっっっつ!!!」


めらめらと燃え広がり彼女の体を炎が包み込み、彼女は息を吹き返した。


「いやああああ!!!!なんで裸なの!!!!」


「榊さん!?生きてる??」


「おい!何見てんだこら!」


「あああ!ごめんごめん!大丈夫局部は炎で見えてないから!!」


彼女ははっとして上着を被った。


「何が何だか、僕にはよくわからないけど。生きててよかったよ。」

彼女に背を向けながら、そう伝えた。


「私としたとが、まんまとやられたね。除霊の途中から意識がとびとびだ。」


「あ!そうだ。僕のリュックの中に着替えあるから、使いなよ。」


「え、いいの!使う使う!!」


ペタペタと裸足で、杉の部屋に榊は足早に向かった。



「はあ。こういうこともあるんだね。それにしても黒い影、君強いね。なんで今まで黙ってたのさ。」


独り言のように黒い影につぶやいた。


(早く迎えに来て)


黒い影の声だ。いつもノイズのように聞き取りずらい声で意味深な言葉をつぶやいた。

「ほら、やっぱしゃべれるんじゃん。」



「いや”ーーーーーーーーーーー!」


榊の悲鳴が聞こえた。何が起きたんだろう。向かわなきゃ。



そこには、真っ赤に頬を腫らした。風晴が正座していた。

















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