第4話 死
肉塊が散らばっていたのは仏間だった。今夜僕が泊まるための布団も敷いてあった。
吐いた。僕が見たのは祖母ではなくただの肉の塊。
玄関には、風晴さんがいた。
「うわああああああああああああああああああああああああああ。」
「何を泣いてるんだい。男だろう。」
「君にはもう少し早めに伝えておくべきだったね。すまない。」
風晴はうずくまったぼくの背中をさすった。
「死体を見るのは初めてかい?」
嗚咽交じりにむせび泣く。
「一体、ううっ、、誰が。」
風晴はぬっと立ち上がり死体のそばに駆け寄った。
「これの仕業かい?」
「これは僕が殺したんだよ。」
「・・・は?」
「じゃあ、僕は、外でたばこ吸ってるよ。落ち着いたら声をかけてくれ。」
理解が追い付かなかった。そこにある肉塊は風晴さんが、、、。
死体に目を落とす。ただ、毛と血肉がそこにあるだけ。
なんで。
急いで風晴を追いかけた。ふらふらとした足取りで玄関までたどり着いた。
玄関先で靴を履いていた風晴を蹴飛ばし、胸倉をつかんだ。でもなにも言葉が出てこない。
「なにか、勘違いをしているようだけど。君のおばあちゃんにそういわれたからやっているだけだよ。」
「せ、説明しろよ。」
まだ涙が止まらない。過呼吸でうまくしゃべれない。
玄関に置いてある護身用の木刀を握り、壁に押し付けた風晴をにらむ。
「なんだい?やろうってのかい?」
「うああああああああ!!!」
木刀をたたきつけるように振り下ろした。遭えなく木刀は宙を舞って後ろの壁に突き刺さった。風晴は、つかんでいたはずの胸倉をすでに外し、掌底で木刀の柄を押した。
手際のいい護身術に焦った僕は刹那、顔面の痛みとともに壁に衝突した。
「がっふ!」
「だからさ、何か勘違いしてないかい?」
「殺したのは、君にとっての敵だよ。」
衝撃で会話どころではなかった。体中の痛みが全身で危険信号を挙げているのがわかる。だが、同時にアドレナリンとでもいうのかこの興奮と戦闘意欲は。その時黒い影が頭をよぎった。ばあちゃんを殺したやつを生かしてはおけない。自爆覚悟でも風晴さんを、、!!
漫画の読みすぎかもしれないけど、こいつを使って戦おうと考えた。
心の中で黒い影を呼んだ。じわじわ。と音を立てて体からにじみ出た黒い影は僕の前方に現れた。
「へえーーー。そうかいそうかい。そうやって使うんだね。」
風晴は、2~3Mほど距離を取り様子をうかがおうとした。
その時にはすでに黒い影は、間合いを取った風晴に猛スピードで詰め寄り弾き飛ばした。
ニタついた風晴は両腕を組み攻撃を防ぐも、廊下の奥まで吹き飛ばされた。
長い廊下の奥は電気もついておらず暗く、姿は見えないがどうやら一発かませることができたらしい。
「はあっ。はあっ。はあ。」
自分でも驚いたが黒い影と初めて意思の疎通が図れた。
その時、
ガラガラガラガラ。
「なんしよっとか。」
祖母がシャンプーや石鹸、ごしごしタオルと書かれたお風呂セットを片手に首からタオルをさげ、現れた。
「ばあちゃん、、、、、、、、、?」
そして奥から、首筋を掻きながら風晴が現れた。
「ああ~。おばちゃん。風呂だったのかぁ。」
祖母は、玄関に腰掛け、お風呂セットに付着した水滴をトントンと落とした。
「風晴ちゃんかい。来とったとね」
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