第2話 埋葬
「お帰り。」
祖母は、改めて僕に言った。
「さ、ごはんの用意をするからちゃちゃっと参ってきない。」
「うん、ありがとう。」
家の奥には八畳ほどの和室が二部屋あり、隔てた襖は常に開放している。いつも肌寒く感じるこの部屋は近寄りがたい印象を抱いていた。
ふと思い出す、この場所で親父に殴られた。制裁という名の暴力は小さかった僕に恐怖心を、確かに植え付けた。
今でも鳥肌が立つ、くっと握りこぶしを作り仏壇の前の鎮座した。静かな空間には、庭にある池の流水音。僕はそっとお線香を半分に折ると、マッチを慣れた手つきで火をともし、供え、手を合わせた。
「荷物はそれだけかい。」
祖母がスーパーで買った総菜をあっためて出してくれた。祖母は基本一人でこの家に住んでいる。叔母がたまに様子を見に来てくれているが、しっかりと掃除も行き届いていてなんだか安心した。
最近犬を保健所から引き取って飼い始めたらしい。家の裏庭に使い古された犬小屋にちょこんと座っていた。
「あれだったら散歩にでも行ってくるたい。」
「そうだね。わかった、行ってくるよ。」
柴犬の名前は「八兵衛(ハチベイ)」祖母は大の時代劇好きだが諸に影響を受けている。
「ほれ!”ハチ”! ほら!散歩に連れてっちもらい!」
「ばあちゃん、、、八兵衛よね?名前。」
「ちっと名前が長かろうが?」
「。。。」
やっぱり自然はいい!薄暗い空は朱色にかすんで明日の天気もわかりそうなくらいだ。ハチは以外と人見知りせずに、下を出して微笑んでいるかのようにも見えた。
足取りが軽いと感じたのは久しぶりだろう。まるでスキップを年甲斐もなくしてしまうような気分。純朴な風とさわやかに体を撫でた。
自宅の近くには小さいが温泉がある、地域の人は夜になるとここに疲れを癒しに来るのだ。学生時代、肌にニキビが出来づらかったのはこの温泉の恩恵だと思っている。
しばらく歩いた、小さいころ遊んでいた旅路をたどるように、ハチもそれにこたえるについてきた。まるで何かを探しているような、誘われているような。
どこまでもどこまでも歩けるような気がした。涙も出ていた、あの時好きだったBUMPOFCHICKENを聞きながら。そのうち僕は、よくわからなくなっていった。
ふと、気づけばあたりは暗く、とある神社にいた。夕焼けがよく見える石階段の一番上で、座り込んでいた。我に返るという言葉はこの時にふさわしい。
ハチもいない、リードだけを握ったままだったのだ。
不安になったりはしないこういうときに”あの黒い影”が来てくれるからだ。僕はそうやて安心していた。
お社の方を向いて黒い影がたたずんでいた黒い影はいつからそこにいたのかわからない。
「ここじゃない。」
黒い影がそういった。
風が頬をかすめた、Tシャツの中にしたから入ってくる風は僕から体温を借りていった。
「おーーーーい!!なんしよっとかーー!」
野太いおっさんの声にびっくりした。慌てて黒い影も仕舞う。
「おお?ヒロトくんかい?帰ってきてたんだね?にしてもこんなところで何してんの?」
彼は、風晴さん。近くのお寺に住んでる住職さんだ。
「ささ、帰るよ!君たち。おばあちゃんが心配してるよ。」
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