第4話 知恵をつけますわよぉお!!
当面の目的は、一次産業からの脱却ですの。
わたくしには前世で培った知識があります。
この世界でもそれは一流のものであるはずです。
ですが、そもそもこの世界そのものを知らなければ使い用がありません。
環境や話し言葉はいまのところ前世と同じですけれど、正直かなり微妙なラインですし。
最低限知識だけでも、暦、国際情勢、言語、民族、宗教……etc
と、これだけ必要ですの。
なのでせっかく子供になったのですから学舎などがあればそこに入りわけですが、
「村長! わたくしもっと色んなことが知りたいですわ!! どこか学べるような場所はありせんこと!?」
「ないな」
「おファックですわ!!」
「君は本当に不思議な言葉を話すなぁ……」
困った口調ながらもゆったりとした笑顔を崩さないこの老人こそ我が辺境村の村長ですの。
朝の仕事を終え、木陰で休んでいたところに突撃してきたわたくしに、嫌な顔一つしない柔和さから村人から愛されているアイドル老人ですの。
「ではなにか、学べるような職とかありませんこと!?」
「なくはないだろうけど……そもそもタマラ、君は文字は読めるのかい?」
「読めませんわ!!」
「お金は?」
「見たことありませんわね!!」
「じゃあ無理だろう。大人しく畑耕さない?」
「お断りですの!!」
困ったねえと頭をかく村長。
その後ろで同じく休憩中の村人達が、
「村長、説得してもダメダメ。あのバーコフの娘なんだから」
「そうそう。諦めて何か紹介してやんな」
「まあ、そうだよなぁ……」
お父様、みんなからどういう評価を得てますの?
しかしチャンスですの。ここは押せば道は開けますわ。
「これでも作物を数えるのは村で一番早いですし、遠回しな嫌味の言い方もできますわ!」
「2個目はいらないけど、まあそうだなあ……頭がいいのはそうなんだろうねえ」
しばらく考え込むような素振りを見せた後、村長は何か閃いた様子でと口を開きました。
「そうだなぁ。じゃあ領主様のところの学舎に通わせて貰えないか頼んでみようか」
「え、学舎はないのでは?」
「平民が学べるところはないよ。でも君の父君は元貴族だし頼めばもしかしたら……」
と、そこまで言ったあと、村長はやっちゃったなぁという顔で露骨に視線を逸らしました。
わたくしが父が元貴族とか初耳なのですが。
「……いま、わたくしの父が元貴族と仰いました?」
「いやね、あの人、昔は爵位持ちの騎士様だったらしくてね……詳しいことは父親に聞いてみるといいよ」
学舎の件は明日一緒に頼みに行こうか。と一方的に話を切られてしまったわけですが……わたくしも元は貴族の端くれだったようです。
帰宅後、そのことを父に聞くと、
「いやー、国王様の娘と結婚させられそうになってな? けどリーシャ……つまりお前の母さんと結婚したいからって断ったら解雇された上に爵位剥奪されてな! 拾ってくれたここの領主に農民の位を賜ったわけだ!」
「まあ、素敵な話ですのね! クソくらえですわ!!」
「ははは、お前母さんに似てきたな!!」
絵物語で読む分にはロマンチックですが、わが身に降りかかるとなると話は別ですの。
しかし没落しても元貴族。学舎の件といい、なにかと使える身の上ではありそうです。
一応、心にとめておきますの。
あ、それと学舎の件は父からちゃんと許可を得ましたわ。
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