第3話 成り上がりますわぁあ!!


 そんなこんなでタマラとしての生活が始まりました。


 どうやらここは農業と畜産を主産業とする開拓村だそうです。

 人口も100人いるかいないかという具合で、わたくしが少々おかしくなったという噂もあっという間に村中に広まりました。


 しかし村人の大半は「まあ、あの人の娘だし……」という反応で、特に扱いが変わるわけではありませんでしたの。

 お父様の人徳ですわね。


 おかげで別に何か不自由があるわけでもなく、むしろ色々と世話を焼いてくださり円滑な人間関係が築けています。

 赤子をのぞけば、子供はわたくしだけだったということもあったようでかなり可愛がってもらっています。


 むしろ前世での知識があるので、村でも重宝されるようになりました。


 というか四則演算ができる人が村長くらいという具合なので、さもありなんという感じですの。


 季節は秋口。どうやらここは北半球の中でもやや北側に位置するのか乾いた強い風と、曇り空が続いています。

 気候的にはオランダなどが近いでしょうか?


 そしてどうやらこの世界、文明レベルは低いようで、生活は昔ながらって感じですの。


朝日が昇らぬうちに畑の雑草抜きと家畜の世話。

昼は固いパンと一杯のヤギミルク。

日が沈むまで掃除洗濯家畜の世話。

夜は果物や根菜など少しばかりの塩漬け肉。


 要の農業は村人総出ですの。

 四輪作法が取り入れられているようで、広い農地を村人総出で手入れします。

収穫物やらそれによって得られる金銭などは村長が分配するという資本主義台頭一歩手前くらいのシステムですの。


 まあ、政界やビジネスにつかれた方々はこういった生活を求め隠居なさるといいますし、わたくしもここで慎ましい生活で穏やかに人生を……


「んがぁあああああ!! 我慢できるわけありませんわ!!」


 家畜の世話をしている最中、わたくしはついに限界を迎えました。


 わたくしは大富豪! 金持ち! 贅の極みを尽くすもの!!! 

 搾取はしてもされるのは大嫌いですわ!!!!!


「どうしたタマラ!?」


「なんでもありませんわ! 独り言ですの!!」


「そうか! 元気があっていいな!!」


 駆け付けた父が畑仕事に戻るのを見ながら、わたくしは決心いたしました。


「ひとまずの生存は確保したのですから、ここからは権力を掴みに行きますわ!! こんな生活、老後からで十分ですの!!」


 どれだけ低い文明でも必ず支配層がいて、贅沢というものは存在するはずですわ。


「富、名声、力、すべてを手に入れますわよ!!!」


 失ったものは取り戻せばいい。下がった地位は上げればいいのです。

 それこそが王者の務め、富んだものの宿命ですの!!

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