棺桶を守るだけの簡単なお仕事

夕日ゆうや

棺桶の中身はなんだろうな!?

 俺こと、寺卓じたく軽肥印けいびいんは、ニートを脱却し本日付で職場である洋館の一室に通された。

「キミに管理して欲しいのはこの棺桶じゃ」

 ひつじこと、セバスチャンはそう言い、部屋の中央に鎮座する棺桶を案内する。

 ちなみに〝管理職〟と聞いていたのだが、管理違いだとはこの時気がついた。

「管理する上で、注意事項とかありますか?」

 俺は慎重にセバスチャンに尋ねる。

「あるぞ。中身を絶対に見ないことじゃ」

「中身を?」

「そうじゃ。ここにはとあるが眠っている。お主にも見せられぬ」

ですか。丁重に扱われているのですね」

 そうか。これには貴重品が入っているのだ。

 月給50万となっていたが、ようやく理解した。

 俺のようなニートにも一攫千金のチャンスが待っているのだ。

 ここでミスをするような男じゃない。

「それじゃあ、あとは任せるよ」

 そう言ってセバスチャンは去っていく。

 俺はじーっと棺桶を見つめる。

 もしかして、数億円ほどの価値があるのかもしれない。

 ごくりと生唾を飲み下す。

 ちょっとだけ、開けようかな?

 確認するだけ。いいよね?

 そっと棺桶のそばによる。

 と、

「あー。寝たわ」

 棺桶が、内部から開かれていく。

 慌てて向こうに顔を向ける。

 俺はまだ棺桶を覗いていないぞ。

「ほう、お主が新しい管理人か。我と仲良くしておくれ」

「は、はい!」

 清涼な声と、芯の通った言葉使い。

「なぜ、背を向けておるのじゃ?」

「いえ。中身は見るな! と言われたので!」

「ククク。お主はなかなかの真面目さんなのじゃな。こっちを見ろ。我が許可する」

「月給50万もらえますか!?」

「月給? ああ。そんなもの、いくらでもくれてやるわ」

 その言葉を聞いて安心した俺は棺桶の真ん中に立つ少女に向き直る。


 全裸だった。


 これから、俺と彼女とのラブコメが始まるのだった。

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