ようこそ、勇敢なるAI諸君 - 2

 まぁ多勢に無勢だ。

 雨垂れ石を穿つって言うし。


 人間が想像できることは、人間なら必ず実現できる。

 そして、人間が実現できることは、AIもそのうち実現できる。


 総当りブルートフォース式で学習に学習を重ねたAIプレイヤーは、全速力で正解ルートを突っ走り、最短距離で(といってもセーフゾーンでの中断を含めて数日かかるんだけど)、我がダンジョンの最奥、マスタールーム手前のボス部屋へと到達したのであった。


「モグモグヮーオ!!」


 今の僕はダンジョン最奥の邪悪にして強大なる魔物、モグドラゴンだ。


『こいつがこのダンジョンのボスかっ!』

『フッ、間抜けなツラをしてやがる。こんな雑魚、俺様の愛刀の錆にしてやるぜ』

『見た目に騙されないで! 仮にもダンジョンマスター、何を仕掛けてくるかわからないわよ!』


 台詞がロールプレイ寄りなのでちょっと違和感あるけど、動きや表情は随分リアルになってる気がする。

 最近は『Anagogic Ideal』以外のゲームはあんまりやってないけど、他所のAIも進化してるのかな。


「モグヮーモグヮー!!」


 と鳴きながら、僕はキャラ付けに失敗したことに気付いた。

 鳴き声だけなら、NPCの中の人をわざわざ人間がやる意味がないような……いや、ダンジョンマスターの仕事はダンジョンを作ることがメインのはず。

 つまり、僕はダンジョンマスターNPCとして間違ったことはしていない、はずだ。たぶん。


「モーグモグ、モグヮーオ!!」

『いくぜっ、速攻だ!』

『待って! 何箇所か、他と色が違う床がある! 〈躓きやすいでっぱり〉が仕掛けてある可能性があるわ!』

『チッ、危ないところだったぜ。姑息な奴め』


 AIプレイヤー達が格安トラップの警戒を始める。

 ちなみに、ダンジョン内に仕掛けた〈躓きやすいでっぱり〉の周囲はわざと色を変えたりしていたけれど(テストプレイ時に自分が踏まないように)、この部屋は罠の位置とは無関係に床の色を変えてある。

 過学習ってまだAIに効くんだなぁ。まぁ人間にも効くもんな。


「モッグモグモー! モッグモグヮー!!」


 まぁ、AIプレイヤーも普通に生き返るからね。

 一度正解ルート見つけられちゃったから、生き残れたら、また改装しなきゃなぁ。

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