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家の裏には新幹線の線路が通っている。
高架の上を走る新幹線は、長くこの街に暮らす住民にとっては単なる背景に過ぎないのだろう。
地元沖縄に新幹線は無いが、ゆいレールがある。
頭の上を走る列車という点では少しだけ似ていたし、それは俺にノスタルジーを与えるのに十分な理由だった。
「……止めてみるか。新幹線」
俺はふと思い立って、高架沿いの道路から跳び上がった。
アスファルトが砕け、身体が宙を舞う。
「うわあっ、地震や!」
「ちゃいおま、今のんは人の仕業でんがな! 人が跳ねよったんや!!」
「どえらいこっちゃでホンマ!?」
民衆の慌てる声が聞こえるが、既に俺は高架の上に立っている。
新幹線は、これは重畳、ちょうど来た。
プァァァァァァ
新幹線のクラクションが響く。常人ならば慌てて進路から逃げ出すことだろう。
俺は両手に唾を吐きかけ、よく揉み込んだ。
「よしっ! 来い!!!」
最高時速300kmだかの鉄の塊、その鼻先に、がしり、と俺は組み付いた。
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