第16話アフタヌーンティーをどうぞ

そしてクロード様のお邸に着くと、執事やメイド達は大歓迎してくれた。


老いた執事は、クロード様がご令嬢をお連れするなんて、と感銘を受けているように涙ぐんでいた。




「お嬢様、アフタヌーンティーを準備しています。さぁ、こちらにどうぞ」


「あの…」




ウェルカムムードの中、クロード様を見上げると、軽く頷いてくれた。




「早めに迎えに行ったから時間はあるんだ。軽くお茶をしようか」


「はい、では頂きますね」




邸には誰もいないと言っていたから、寂しい邸かと思ったが、使用人達の雰囲気は良かった。




お茶の好みを知らないからと色々な茶葉を用意しており、私が来ることに、主に執事の方だが、使用人達は一致団結して待っていたようだった。




「クロード様、歓迎して下さりありがとうございます」


「お茶は好きか?」


「はい、こんなに良くして下さりありがとうございます」




温かいお茶を飲むと、一息ついたようになり、来て良かったと思ってしまった。




「クロード様は騎士団にいますよね」


「そうだが」


「まだ何ヵ月も先ですが、騎士団の受付嬢の試験を受けようと思っているのです。今度騎士団のことを教えて下さい」


「…」




そう言うと、クロード様は考え込んでしまった。


おかしなことを言ったつもりはないが、と思ってしまう。




「…騎士団は男ばかりだ」


「はい、でも受付嬢は女ですよ。騎士様にも女性はいますし」


「だが、男が多いのだ」


「性別ではなくてですね…」


「男の受付もいるのだ…」


「いや、ですからね…」




騎士団が男性が多いのは知ってます!


しかも、無言で見つめないで欲しい。


私にも乙女心ぐらいありますよ。


その整った顔で見つめるのは、ちょっと反則ですよ。


思いの外照れるのですよ。




「…ラケル、騎士の中には受付嬢に声をかける者もいる。だから、受付嬢は止めた方がいいのではないか」


「では、出会いがあると?」




声をかけてきた騎士様が将来有望なら、おいしいのでは?


軽い騎士様はお断りですが。




「出会いはダメだ」


「彼女のフリをしている間は出会いはしませんよ」




また、クロード様は無言で見つめていた。


今度は眉間にシワが少し寄っている。


しかし、そろそろ支度に取りかからないといけない。




「…ラケル、婚約のことなんだが」


「はい、婚約破棄はちゃんとしてますよ。それよりクロード様、そろそろ支度に取りかからないと、遅くなりますよ」


「…そ、そうだな」




ガックシしたクロード様がよくわからない。


婚約破棄の話はしたはずなのに、今さら何を聞きたいのか。


…それとも、私が受付嬢になるのが、嫌なのか。


でも、それこそよくわからない。


もし、試験に合格して私が受付嬢になるとクロード様にとって何が悪いのか。


別に彼女のフリをしてました。なんて言いふらしたりしないのに。


クロード様に嫌われているとは思えないが…、後ろから視線を感じる。


まさか睨んでいるんじゃないでしょうね。




そして、クロード様の視線を後ろから感じながら、ドレスの準備してある部屋で支度を整えた。










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